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村田容常教授が令和元年度日本食品科学工学会「学会賞」を受賞

2019年9月4日更新

2019年8月29日に藤女子大学(札幌市)で開催された第66回日本食品科学工学会大会において、本学基幹研究院自然科学系の村田容常教授が学会賞を授与されました。受賞題目は、「酵素的褐変ならびにメイラード反応に関する食品化学的研究」で、30年余りにわたり本学キャンパスで本学学生とともに行われた研究成果によるものです。

日本食品科学工学会は、我が国における食品産業の科学と技術を担っている国内最大の学会で、産学官合わせて約3,000人の会員を擁しています。本学関係者では2014年に久保田紀久枝東京農業大学教授(本学名誉教授)が、2016年に熊谷日登美日本大学教授(本学家政学部食物学科卒業生)が同賞を受賞しています。

生鮮食品も加工食品もしばしば変色、着色します。例えばリンゴを切ると茶色くなりますし、のどを潤すビールは着色料を添加していないのに琥珀色を呈しています。これらの変色、着色は化学反応もしくは生化学反応によるもので、古くから研究の対象になっていました。しかし、これらの現象は均一ではない複雑な化学反応であるためその解析や制御は困難でした。村田教授のグループは、この現象を30年にわたり解析し、多くの新たな知見や制御法を提案してきました。例えば、リンゴを切ると茶色くなるのは酵素作用によるものですが、その鍵となる酵素を世界で初めて単一のタンパク質として取り出すことに成功しています。カットレタスや緑豆もやしも貯蔵中に茶色く変色します。これらの現象も同様の酵素が働きますが、リンゴの場合とは異なり、基質であるポリフェノールが貯蔵中に形成される過程が重要でした。その過程を止めれば変色が遅れることを実証しました。また、醤油やビールの色が形成される化学反応はその発見者の名前を冠してメイラード反応と呼ばれます。この反応中に不均一で複雑な高分子色素化合物が形成され食品は茶色を呈します。しかし一般的に不均一で複雑な高分子化合物は化学的には解析できないと考えれるためその研究は停滞していました。村田教授のグループは、この状況を打破するために積極的に低分子色素化合物を探索し、多数の新たな化合物を発見しそれらの化学構造を明らかにしました(下図)。これらの一連の研究は食品科学的に基礎的知見を与えるものであるとともに、食品産業的には着色・変色に対する新たな制御法を提供するものであり、高い評価につながりました。

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図 村田研究室で見い出されたメイラード色素やその関連化合物

受賞題目

「酵素的褐変ならびにメイラード反応に関する食品化学的研究」

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