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学長メッセージ

2023年4月1日更新

学長 佐々木泰子

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症となり、コロナ・パンデミックも終わりが近づいてきたように思われます。本学では新型コロナ感染症拡大前に戻るのではなく、ポスト・コロナの時代にふさわしい新たな教育に取り組んでまいりたいと思っています。

 世界は今、気候変動とそれに伴う大規模災害、資源枯渇、人口動態の激変、さらにはウクライナにおける戦禍など、私たちが地球規模で連帯して解決に取り組んでいかなければならない様々な喫緊の課題に直面しています。

 そのような時代にあって、お茶の水女子大学では、世界の人々と連携し、文化の多様性を理解し、違いを認め合い、互いを尊重し、協働して平和な世界を作り上げていくことのできるグローバル女性リーダーの育成を使命としています。そのために学生の海外留学、留学生の受け入れ、研究者交流など海外との交流に積極的に取り組んでいます。また、日々の授業で先端的な知識を得るとともに、学生自身が課題を見つけ、対話を通して課題を解決する方法を探ることを大切にしています。

 パンデミックによって、私たちはITなどデジタル技術の重要性を再認識させられました。リアルな世界が制限される中、バーチャルな世界を支えるITによって、日常のコミュニケーションだけでなく、大学も教育の機能を維持することができました。しかし、日本は世界的に見るとデジタル化の遅れという課題への対応が急務であり、今後一層のITやAI技術の開発、活用を通して、日本のみならず世界の様々な課題を解決することが求められています。それは国連の掲げる「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)の達成や、デジタル時代の男女平等にはデジタル教育が欠かせないとした、今年の世界女性デーのテーマである「DigitALL: Innovation and technology for gender equality」につながるものでもあります。本学でもすべての学生がITの知識を身に着け、その応用が可能になるような教育を行い、Society5.0の実現に不可欠な数理・データサイエンス、AIの素養を持つ人材の育成に努めてまいります。

 またこれらの現代的課題の解決には、科学技術のみでなく哲学、歴史など人文社会学を含む総合知が求められていると考えます。そのような総合知こそが、小規模ながらも総合大学である本学の強みであり、これまで堅実に積み重ねてきた、教育・研究の成果を国の内外に向けて積極的に発信し、知識・経験を広く社会と共有するとともに、今後も先端的・創造的研究に果敢に挑戦し、成果を発信・共有し続けることこそが私たちの重要な責務であると考えます。

 本学は1875年(明治8年)に日本初の官立女子機関「東京女子師範学校」として設立され、その後150年近くに及ぶ歴史を刻んでまいりました。学問を志す女性たちが全国から集い、女性が高等教育を受け、社会で活躍することが困難であった時代から、女子教育のフロントランナーとして道を切り拓き、性別、年齢、人種、国籍、文化、宗教など異なる背景を持つ多様な人々と互いの違いを認め合い尊重しながら、より良き社会の実現に寄与することを、本学の果たすべき役割として取り組んできました。師範学校という名が示すように教員養成機関として設立されましたが、卒業生は教育者としてだけでなく優れた研究者として、また経済や産業、報道など様々な分野のリーダーとして活躍しています。

 昨今、日本では様々な取り組みによって確かに女性の社会進出が進んできていますが、世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数2022で、146か国中116位と、G7の中で最下位という結果でした。中でも政治と経済の分野での女性の進出の遅れが際立っています。研究者、特に理工系分野の女性研究者比率も諸外国に比して低いままです。このように、日本では、人口の二分の一を占め、優れた資質・能力を持つ女性人材が文化的あるいは制度的背景によって社会で活躍できない状況が続いています。そのような中にあって、女子大学が優秀な女性を育てる社会的意義は大きいと考えます。

 2004年の国立大学の法人化に際して、「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、 真摯な夢の実現の場として存在する」という本学独自のミッションを掲げました。これは、本学が長年取り組んできた開発途上国をも含めた世界の女子教育支援も含め、世界中の全ての女性たちの夢の実現を支援することを企図するものであり、今世界が目指している「地球上の誰一人取り残さない」というSDGsの理念にも通じるものです。本学が、全ての⼈が⼿を携えて幸せに暮らせる社会を実現するための担い手であることを世界に⽰し、また世界レベルの教育・研究とESGを顧慮した先進的な⼤学マネジメントによって社会的な課題に向き合い、全地球的な問題解決に寄与する⼤学となることを目指してまいります。

2023年4月1日
学長 佐々木泰子

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