
2011年3月11日の東日本大震災によって私たちは様々な問題意識を喚起させられています。自然の脅威、科学技術の進歩の意味、そして、人間の生と日常性を改めて問い直すことが求められていますが、まず、何よりも被災地の復興を願い、復興のために力を尽くしたいと考えています。
お茶の水女子大学は、1875年(明治8年)に創設された東京女子師範学校を前身としています。その後、東京師範学校女子部、高等師範学校女子部、女子高等師範学校、東京女子高等師範学校と変遷し、1949年(昭和24年)に新制の大学「お茶の水女子大学」となり、2004年(平成16年)には国立大学の法人化に伴って、「国立大学法人お茶の水女子大学」となりました。この歴史を通して、本学はこれまでに教育・研究分野をはじめ、多様な分野で活躍する多くの女性リーダーを育成し輩出してきました。
1875年の創設以来、本学の教育は一貫して、高度な専門的知識を修得し、社会に参画し、先駆的な役割を果たしうる優れた女性リーダーを育成することを志向してきました。そして、法人化の際には本学の使命を次のように掲げました。
お茶の水女子大学は、学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する。
お茶の水女子大学の教育は、「知識」「見識」「寛容」を理念としています。それは、堅固で高度な専門的知識を修得し、それに基づいて適切に判断し、同時に他者を尊重することのできる能力が重要であると考えるからです。
そしてこの理念を実現するために、2008年度から教育改革に着手してきました。2008年に21世紀型文理融合リベラルアーツ教育を、2011年には複数プログラム選択履修制度を開始し、学士課程での教育プログラムの改革を実現させています。これは、広い視点から問題意識をもって、課題を多角的かつ専門的に探究し解決する力を練磨することを意図した教育プログラムです。プログラムを履修する過程で、学生一人ひとりが主体性を発揮し、新たに問題に取り組み、解決の方法を見出す能力を身につけるように配慮してあります。そしてそのことが、卒業後さまざまな課題に対処する力となり、社会的活動の原動力となることを期待しています。
また、本学の高度な教育は教員の優れた研究に裏付けられています。
お茶の水女子大学では、21世紀COEやグローバルCOEによって国際研究拠点を形成し、大学院改革プログラム、大学教育の国際化加速プログラム、実証的社会科学研究推進事業などの研究事業を実施してきました。
研究におけるお茶の水女子大学の特色は、基礎研究と生活の視点をもった応用研究にあります。学問の発展には基礎研究が不可欠であり、また、学問は生活者の視点によって社会性を付加します。生活者の視点の基盤をなす「生きること」や「人間性」は、学問にとって重要な要素であり、とくに自然と人間との関係や科学の進歩と技術開発が問われている現在、この観点は重要だと考えています。
近代以降、科学は人々の生活に多くの恩恵をもたらしたことは紛れもない事実ですが、同時にそれによって失われたものも多くあったことに私たちは気付かされています。そして今、大学という高等教育研究機関の課題は、科学を進歩させつつ、同時に技術を開発し適切に使用し豊かな世界を創る方策を探ることであり、それを担う優れた次世代を育成することにあります。
「技術は単に手段であって、それ自体善でも悪でもない。重大なのは、人間が技術から何を作り出すのか、何の目的で人間は技術を用いるのか、人間が技術をいかなる制約下に置くのか、である。技術に支配されるのでなく、技術を支配する人間とはどのような人間か、が問題なのである」(カール・ヤスパース『歴史の根源と目標』)-この言葉の意味が、今こそ問い直されるべきでしょう。
人間性を重視し、高度な研究を基盤とした教育を通して、真に豊かな社会の実現に貢献したいと考えています。
そしてとくに国立の女子大学として、お茶の水女子大学は女性リーダーの育成に力を入れています。「リーダー」は単に組織のトップに位置することを意味するだけではなく、その在り方は多様です。それぞれの能力を主体的に発揮して周囲を変化させ発展させる資質を「リーダーシップ」と言ってよいかもしれません。本学は創設以来130余年に亘って多様な分野を担うリーダーを育成してきました。
現在では、カリキュラムとして「キャリアデザインプログラム」や「リーダーシップ養成プログラム」を実施して、実践的なリーダー教育を強化しています。
また、リーダーシップを発揮する際には、他者と「共にある」ことも重要です。そこで、「共にある」ことを理念とした空間を新たに造りました。その一つが2007年に設置した大学附属図書館の「ラーニング・コモンズ(Learning Commons)」です。ここは、学生、教職員が様々な仕方で空間と時間を共有し、「共に学び、共に成長する」共通の場です。また2011年には、学生寮「お茶大SCC(Students Community Commons)」を新設しました。ここでは「共に住まい、共に学び、共に成長する」ことを理念としています。学生が、空間を共有しながら互いに切磋琢磨し、コミュニケーション能力を高め、リーダーとしての能力を向上させることを期待しています。
お茶の水女子大学はこうした独自の取り組みを含めて、教育、研究、社会貢献、国際貢献、そして業務運営において国立大学の中でも特に高い評価をいただいていますが、今後もさらに本学の特色を強化し、女性の真摯な夢の実現の場でありつつ、真に豊かな社会の実現に向けて努力してまいります。
優れた才能と限りない可能性をもつ学生が、本学で学び、持てる能力を存分に発揮し、日本のみならず国際的に社会をリードすることによって、確かな未来を創造することを心から期待し、学生と共に努力してまいりたいと思います。
お茶の水女子大学長 羽入 佐和子
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