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日本の伝統文化と植物科学を結ぶ「紫」の糸 ― 絶滅危惧植物ムラサキをめぐる昔と今 ―

2023年5月18日更新

染料植物であり薬用でもあるムラサキは、飛鳥時代より冠位十二階の最上位の色として、高僧の法衣など高貴な人のみが着用を許された紫色を得る植物で、国宝の「国分寺経」の紫紙金字の染色にも使われた特別な天然色素原料です。この時代、納税のため「調」としてムラサキを栽培させ朝廷に納めたことも、大宰府から出土した木簡などの資料から分かっています。
しかし、現在ムラサキは絶滅危惧植物で、外来種のセイヨウムラサキとの交雑も危惧され、人気の裏で実際に交雑を疑われる苗も販売されています。
これは日本純系のムラサキを保証する基準が我が国にないことが原因です。
お茶の水大学理系女性育成啓発研究所伊藤瑛海特任助教、京都大学生存圏研究所棟方涼介助教、矢崎一史同教授のグループは、ムラサキの最先端研究を通じ、日本の歴史文化にとって重要な本植物の純系を保護し、生きた文化として後代に持続させる重要性を述べています。全国各地で「ムラサキ復活プロジェクト」が行われていますが、本論文ではそれらのコミュニティに、種子の出自を含めて日本のムラサキに対する意識を高めてもらうことを促すと同時に、伝統文化と植物科学を結ぶ「紫」の糸について解説したユニークな文理融合の記事です。
本成果は、2023年5月18日に、国際植物の日に合わせ、我が国を代表する国際学術誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載されます。

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プレスリリース資料はこちら(PDF形式1,126キロバイト)

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