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2013年7月13日更新
猛暑の中、オープンキャンパスにお出でいただきまして有難うございます。
どうぞ体調にお気をつけいただきますようお願いいたします。
この講堂がある大学本館は、1932年、今から約80年前に建設されたものです。本学の前身である東京女子師範学校は138年前の1875年に、御茶ノ水駅に近い湯島で開学しましたが、1923年の関東大震災で、校舎が焼失し、その後この大塚の地に移転いたしました。そして、新制大学として大学の名称を付けるに当たって、創設時に「お茶の水の学校」と呼ばれ親しまれていたことから、「お茶の水女子大学」という名前にしたという記録があります。
この建物は、こうした経緯から耐震性に優れ、また不燃性を考慮した鉄筋コンクリート造りになっています。また、外壁には当時流行りのタイルが使われ、入り口には、国会議事堂の入口の床と同じデザインで、質の良い国産の大理石が敷かれていますが、このことは本学に対する当時の社会的期待を象徴しているともいえます。そして確かに、日本で初めて国によって設置された女性の高等教育機関として、創設以来今日に至るまでその期待に応え続けてきました。
遡れば、この大学は日本で最初の女性理学博士や農学博士、日本で初めて女性医師となった人々が学んだ場でもあります。また、大学や教育機関の創設に力を発揮した人々も多く、東京女子大学の創設に力を尽くし後に学長になった安井てつ先生や、現在の共立女子大学の創設に携わった方、あるいは日本女子体育大学の前身を創設した方などがいます。さらに、本学の同窓会である桜蔭会は、関東大震災の翌年1924年(大正13年)に、桜蔭学園を設立させました。
そして今、国の審議会や学会でも活躍している卒業生に多く出会います。また、企業の方々と話していると「わが社にもお茶大の卒業生がいます。とても活躍しています。」「とっても頼りになります。」などと言っていただけることが多く、卒業生が高く評価されていることを実感し、そして誇りに思います。
このように、本学は、様々な分野で先駆けとなり、社会を支え、時代を創る女性たちを輩出する教育機関として社会的使命を果たしてきました。
お茶の水女子大学では、教育の理念を、知識と見識と寛容としています。つまり、確かな専門的知識を修得し、広い視野をもって適切に判断する力を錬磨し、さらに、多様な文化や多様な在り方を理解できる寛容さが重要であると考えています。
それを教育システムとして具体化したものが本学独自の学士課程プログラムである「21世紀型文理融合リベラルアーツ教育(新しいウインドウが開きます)」と「複数プログラム選択履修制度(新しいウインドウが開きます)」です。
その概要については、後ほど説明がありますが、このどちらも本学だからこそ成り立ちうるシステムだと私は考えています。
その理由は、二つあります。
一つは、大学の規模が小さいことです。
それが何を意味するかといいますと、学生数が少なく、ほとんどの授業は少人数クラスです。すると当然、学生同士の距離が近いだけでなく、学生と教員の距離も近く、しかもこれは、学部や学科、コースを超えた近さです。そして、教員同士も日常的なコミュニケーションが可能です。
つまり、分野を超えて交流できる環境が、他大学とは異なるリベラルアーツ教育(21世紀型文理融合リベラルアーツ教育)や複数プログラム選択履修制度という新たな専門教育のシステムを可能にしています。
また、クラス単位も少人数ですので、一人一人の存在感は大きく、発言の機会も多く、4年間のうちには、主体性や自立性が次第に培われます。
もう一つの理由は、優れた研究者である教員が教育に当たっていることです。
教育と研究を区別する考え方もありますが、質の高い豊かな教育は優れた研究があってこそ可能です。優れた研究には常に新たな課題に挑戦する姿勢が必須ですが、それは、広い問題意識と深い専門性を前提にしています。本学は、教員のそのような研究態度が学部の教育に反映されている大学です。
そして、教育と研究が一体化した雰囲気は学生の学部生と大学院生の構成にも現れています。
本学の学生数は約3000人ですが、そのうち1000人が大学院生です。学生の3人に1人が大学院生というキャンパスは珍しく、このキャンパスは高度な専門性を学ぶ風土があります。
こうした教育体制を基盤に、現在本学が最も力を入れているのは、グローバルな視点をもってリーダーシップを発揮する女性の育成です。
これは、文部科学省の事業、「グローバル人材育成推進事業」が採択されたこともあり、今とくに力を入れている取り組みです。全学的にこの事業を行っている大学は、国立大学ではお茶大を含めて4大学だけで、「女性の力を、もっと世界に。」と願って、語学力の強化や海外派遣の拡大に力を入れています。
そしてこの取り組みは、本学固有の学部教育の基盤があることによって、他の大学にはなしえないグローバル教育を実現しているといえます。
学生には、このようなアカデミックな環境の中で真摯に学び、知識を修得し、その知を力として、人間性を高めてほしいと願っています。
最後に、本学の学生の雰囲気を少しご紹介します。
私は、一年に一度だけ主に一年生に向けて、「お茶の水女子大学論」という授業を行っています。この授業では大学の教育研究の特色や大学の新しい取り組みなどを紹介し、大学で学ぶことの特徴などを話しますが、その時に学生がこの大学についての感想や決意を次のように書いてくれました。
学生の感想からは、どれも学ぶ意欲が強く感じられ、そして学生の態度が真摯であることを私は誇りに思います。そして、学生とともにこの大学をさらに成長させたいと思い、また、学生たちには、知識と見識と寛容さを身につけて、自らが属する場を担うことのできるリーダーとなって豊かな未来を創ってほしいと切に願っています。そして、皆様もそこに加わっていただけると嬉しいです。
短時間ではありますが、体調に注意しながらお茶の水女子大学の教育の雰囲気を味わっていただけましたら幸いです。
本日は誠にありがとうございました。
平成25年7月
お茶の水女子大学長
羽入 佐和子