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令和5年度学部入学式 学長告辞

2023年4月4日更新

入学式

新入生の皆さん、ご入学まことにおめでとうございます。お茶の水女子大学教職員を代表し、心からお祝いを申し上げます。これまで皆さんを支えてこられたご家族、ご関係の皆様にも謹んでお慶びを申し上げます。

今年度は、これまで皆さんの学びや生活を励まし、支えて下さったご家族にも、この徽音堂にいらしていただき、入学式を挙行する運びとなりました。またご来賓として中野和子監事、高崎みどり桜蔭会会長にもご列席いただいております。新型コロナウイルス感染症は完全に終息したとは言えずまだまだ注意することが必要ですが、このような形での入学式が挙行できましたことは、アフターコロナ時代の一歩ととらえることができるのではないかと思っています。加えて、会場にいらっしゃれなかったご関係の方のために後ほど式典の様子を限定配信する予定です。

3年以上にわたる新型コロナウイルス感染症の流行は、皆さんの暮らしや学校生活、部活動、受験勉強などに、さぞ大きな影響を与えたことと思います。試練を乗り越え、晴れて本学への入学を果たされた皆さんに心より敬意と祝意を表したいと思います。入学後も皆さんお一人おひとりが、感染予防に心を配り、健康で充実した学生生活を送ってくださるよう願っています。

お茶の水女子大学は、未だ女性の社会進出が困難であった時代、明治8年、1875年に女性のための日本初の高等教育機関「東京女子師範学校」として設立されました。その後、教育制度の変遷にともなって、女子高等師範学校、東京女子高等師範学校などとして、日本の女子教育を先導してきました。第二次世界大戦後の昭和24年、1949年には、新制大学「お茶の水女子大学」となり、今から2年後の2025年には創立150周年を迎えます。その歴史をとおして多くの卒業生が女性の自立と社会的活躍を先導してきました。そのような伝統と歴史を背景に、お茶の水女子大学は国立の女子大学として、リーダーシップを発揮できる女性、グローバルに活躍できる女性リーダーの育成を使命としています。

世界は今、気候変動とそれに伴う大規模災害、人口・食糧問題、感染症との闘い、さらには格差の拡大と貧困などのグローバルな課題に直面しています。皆さんには大学での学びをとおして、そのような正解のない課題について自分なりに考え、答えを導き出す力を身につけてほしいと思っています。

大学は、皆さんがその力を培うための場と手段を提供します。たとえば、理工系分野における女性の活躍が求められる社会的要請に応えて、数理的推論やデータ分析力が身につくようにAI・データサイエンス教育に力を入れています。しかし、それだけでなく社会が求める持続可能で平和な世界の創造には、自然科学のみならず、人文・社会科学も含めた「総合知」の重要性が指摘されています。お茶の水女子大学は、伝統に裏づけられた少人数・文理融合リベラルアーツ教育、基礎研究に軸足を置いた質の高い教育・研究、高度な専門性・国際性、これらを基盤とした確かな教育を実践しています。お茶の水女子大学の文理融合リベラルアーツ教育では 人文科学、社会科学、自然科学 という異なる領域を横断した学びによって、知の基盤固めと幅広い教養を身につけることができます。さらにはリーダーシップ教育、少人数教育、PBL型の授業、短期・長期の海外留学を中心とする国際交流体験などを通して、これからの日本、あるいは世界で求められる能力の育成に努めています。本学での学びをとおして、ご自身の専門分野だけでなく広い視野に立ち、持続可能で「一人ひとりが多様な幸せ(well-beingウェル ビーイング)を実現できる社会」の構築に貢献してくださることを願っています。

お茶の水女子大学は少人数制で先生方や職員の皆さんとの距離が近い大学です。分からないことや心配なことがあったら遠慮なく相談をしてください。また教室や研究室だけでなく、「スチューデントコモンズ」や「音羽館」といった学生のための施設を大いに活用し、キャンパスの様々な場所での交流をとおして、大学時代に豊かな人間関係を築いてくださるよう願っています。

そして、本学の同窓会組織である『桜蔭会』も皆さんの心強い応援団です。『桜蔭会』は大学に隣接する国際交流留学生プラザ内にあり、奨学金やコロナ禍での修学支援金など 様々な形で皆さんの在学中の学びを支え応援してくださっています。皆さんにもぜひ桜蔭会員としてお茶の水女子大学の歴史をつなぐ一人となり、大学とともに歩んでいただきたいと思います。

お茶の水女子大学は世界の人々と連携し、文化の多様性を理解し、違いを認め合い、互いを尊重し、協働して平和な世界を作り上げていくことを目指しています。「学ぶ意欲のあるすべての女性の真摯な夢の実現の場として存在する」というミッションを掲げ、国籍や年齢を問わず、世界中の女性たちの成長や資質能力の開発を支援する活動を続けています。皆さんは、「新しい大学生活」という期待を胸に今、ここに仲間と集えた幸せとともに、一方で、未だ自由に学ぶことさえできない女性たちがいること、さらには戦火にさらされている弱い立場の人たちがいるという現実にも思いをいたし、私たちが世界平和のために何ができるのかを、ともに考えていっていただきたいと思います。

お茶の水女子大学は、国内外で活躍する多くの優れた女性人材を輩出してきた伝統を誇りとしていますが、成功体験に甘んじることなく、時代と社会のニーズに合わせて変革を推進し続けていきたいと思っています。

お茶の水女子大学の校歌では

みがかずば たまもかがみもなにかせん
学びの道もかくこそありけれ

と歌われています。

この歌は、女子教育の振興や数々の社会事業に取り組まれ、多大な功績を残されたことで知られている明治天皇の皇后、昭憲皇太后によって東京女子師範学校創立に際してご下賜され、今もお茶の水女子大学の校歌として受け継がれています。

磨く事をしなければ、玉といい鏡といっても一体何になるでしょう、磨かれて初めて、美しく光り輝く価値ある宝石となるのであってそれは学問の道も同じである。と学ぶことの大切さを説くとても素敵な校歌です。

この校歌にもあるように、これから始まる学生生活では、失敗を恐れず、勇気をもって歩み、自分自身を磨いていただきたいと思います。大学は、全力をあげて、皆さんの努力を後押しすることを約束します。そして新しくお迎えした、皆さんとともに、お茶の水女子大学もまた、SDGsを志向し「誰一人取り残さず、一人ひとりの多様な幸せ(well-being ウェル ビーイング)を実現できる社会」の構築に資するよう貢献してまいりたいと決意を新たにしています。

皆さんのこれからの実り多い大学生活を心からお祈りしています。
本日はご入学まことにおめでとうございます。

令和5年4月4日
お茶の水女子大学長
佐々木 泰子

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