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令和3年度大学院入学式 学長告辞

2021年4月4日更新

大学院入学式

新入生の皆さん、そしてご両親をはじめとするご関係の皆様、ご入学本当におめでとうございます。教職員一同、在学生一同、そして修了生の誰もが、皆さんの大学院へのご入学を心から祝福し、私たちの仲間になられたことを歓迎いたします。

このような慶事は、本来ならば互いに肩を抱き合って喜びを共にする出来事なのでしょうけれど、昨今のパンデミックの下では、それはとても叶わず、本日の入学式は新入生のみの出席とさせていただいています。

これから、皆さんは、学術研究の最高レベルである大学院において、研究のプロフェッショナルであることを自覚して一人ひとりの「旅」に出ることになります。指導を受ける先生方との間に制度上の区別はあっても、基本的には立場を同じくする研究仲間となります。皆さんには、皆さん自身の学問の在り方を極めていただきたいと願っています。

世界は今、気候変動、資源枯渇、人口動態の激変など、地球規模で連帯して解決に取り組まなければならない様々な喫緊の課題に直面しています。それらの課題の解決のためには、女性の知性、想像力、未来へのグローバルな視点からのビジョンが必要とされています。加えて、Society5.0 時代を迎えるにあたって、大学院レベルの教育が求められることが指摘されています。しかし、日本の大学院進学率は低く、修士課程の人数はアメリカ・ドイツ・フランス・イギリス・韓国と比べて三分の一程度となっています。また理系では、博士後期課程の進学率が低迷しており、イノベーションの中核となるべき人材の不足が言われています。

本日、無事本学に入学の時を迎えられた皆さんには、傍観者ではなく、当事者として、世界の人々と連携し、文化の多様性を理解し、違いを認め合い、互いを尊重し、協働して平和な世界を創り上げていっていただきたいと思っています。

現在は、変異株の急速な蔓延が危惧され、規模においては昨年を上回ることが予測されるコロナ禍の最中、皆さんが克服しなければならない困難な状況は続きますが、既に積み重ねた経験を基に、一層厳しさを増す困難にも、受け身でではなく、むしろ積極的な姿勢でチャレンジしていただきたいと思います。

そして、そんな今だからこそ、是非とも皆さんの心に刻んでおいていただきたいことがあります。既によくご存じの方もいらっしゃると思いますが、この機会に思い起こしていただいて、志を新たにしてくださることを期待します。それは、皆さんの母校であるお茶の水女子大学の歴史、すなわち先人たちの歩んできた足跡です。

お茶の水女子大学は、1875年(明治8年)、日本の近代化という国家目的に資することを使命として創設されました。本学は、その使命を帯びて、諸外国の優れた女子教育を手本に、世界と肩を並べることができるような実績を築き上げてきたことを誇りとし、2025年には、実に創立150周年を迎えます。

2004年、国立大学の法人化に際して、お茶の水女子大学は、「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、 真摯な夢の実現の場として存在する」という独自のミッションを掲げました。これは、本学が長年取り組んできた開発途上国をも含めた世界の女子教育支援を包摂し、世界中の全ての女性たちの夢の実現を支援することを企図するものであり、今世界が志向している「地球上の誰一人取り残さない」というSDGsの理念にも通じるものです。安井てつさん、黒田チカさん、湯浅年子さん等々をはじめとする先人たちは、STEM分野においても、ジェンダーの壁を超えて活躍する道を拓いてくださいました。そのようなミッションのもと、お茶の水女子大学は全ての⼈が⼿を携えて幸せに暮らせる社会を実現するための担い手であることを世界に⽰し、また世界レベルの教育・研究によって社会的な課題に向き合い、それらの課題解決に尽力する⼤学となることを目指したいと思っています。

お茶の水女子大学は、一貫して、学生がその能力を培うための場と手段を提供していきます。たとえば、理工系分野においても女性の更なる活躍が求められる社会的要請に応え、数理的推論やデータ分析力が身につくように、早くからAI・データサイエンス教育に力を入れています。また、専門分野が文系・理系であることを問わず求められる論理的思考力、課題発見・解決力、判断力、未来社会の構想力などの修得を目的とした文理融合リベラルアーツ教育も、本学の教育の特色の一つとなっています。さらにはリーダーシップ教育、少人数教育、PBL型の授業、短期・長期の海外留学を中心とする国際交流体験などを通して、特に大学院で研鑽を積まれる皆さんには、研究者のコミュニティーの一員として、その実践を担い、これからの日本、あるいは世界で求められる能力の育成に参画していただきたいと願っています。

これから始まる研究生活は、皆さん自身の舞台であり、他の誰のものでもありません。高村光太郎の有名な詩文に謳われているように、道は皆さんが歩んだ跡につくられていきます。今必要なのは、思い思いの希望を持って歩き始めることなのです。

話しを結ぶにあたって、最後にもう一言だけ申し添えたいと思います。大学は、全力をあげて、皆さんの努力を後押しすることをお約束します。そして、皆さんは、このお茶の水女子大学という共同体の仲間として、どうか自らと真摯に向き合っていってください。皆さんの頭上には、どこまでも続く青々とした空が、時間をも超えて広がっています。皆さんの希望を遮るものなどありません。ただ勇気を持って、思いきって挑戦してみてください。そうして、女性が社会に進出することさえ困難であった創立当初から、日本国内のみならず海外で活躍をした卒業生たちに続いていく、さらにはそのような先輩たちを超えていく力を身に着けてくださることを願って、私の告辞といたします。

令和3年(2021年)4月4日
お茶の水女子大学長 佐々木 泰子

 

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