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平成29年度 学部入学式 学長告辞

2017年4月21日更新

平成29年度 入学式 学長告辞

513名の新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。
お茶の水女子大学の教職員を代表致しまして、心からお祝い申し上げます。
会場には、ご家族やご関係の皆さまにも多数ご出席頂いて居ります。お嬢さま方が晴れて大学生になられるまでを支えて来られた皆さまにも、謹んでお慶びと御礼を申し上げます。
また、ご来賓の皆様には、お忙しい中、ご臨席を賜りまして、まことに有難うございます。どうぞ、これからも、若い学生さんたちの将来を温かくお見守り下さいますよう、お願い申し上げます。

皆さまがご参集下さっているこの講堂は「徽音堂」と名付けられています。「徽音」とは、中国の『詩経』に見られることばで、「先人の美徳を受け継ぎ、徳行を重ねた」という周の時代の故事に由来します。「徽」は「美しい」、「音」は「声」を意味し、「徽音」すなわち「美しい声」は「美徳」をたとえたものです。本学に集う人々が、美徳ある人として育つことを願って、本学のシンボルでもあるこの講堂の竣工の折に、「徽音堂」と名付けられました。皆さまは、今日、「徽音堂」で大学生活の一歩を踏み出し、4年後には、「徽音堂」で卒業の日を迎えることになります。先人たちがそうであったように、4年間の学びを通じて、美徳ある人として育って頂きたいと願って居ります。

本日徽音堂には、国境を越えてお茶の水女子大学に学びの場を求めて来られた方々への歓迎の気持ちを込めて、日本の国旗や本学の校旗と共に、留学生の方々のお国の国旗を掲げています。今年は、これらの国旗からお分かり頂けるように、学部と大学院を合わせて、中国、韓国、台湾、ベトナム、モンゴル、タイ、ロシア、シンガポール、エジプト、アフガニスタン、英国の11カ国からの留学生をお迎えしています。
留学生の皆さまにとって、故国を遠く離れた日本での生活は、楽なものではないでしょう。言葉や習慣、文化や価値観の違い、また生活や考え方の違いに、戸惑われることもあると思います。困ったときや迷ったときには、いつでも、教職員や、先輩、同級生に声を掛けて、相談して下さい。
これからの4年間、学ぶ意欲を持ち続け、真摯に学びに向き合って、無事にこの徽音堂で、卒業の日を迎えて頂きたいと願っています。

新入生の皆さまは、これまでに様々な環境で多くの方々からの支援を受け、また いろいろなことを経験しつつ、日々成長を重ねて来られましたね。
そして、本日から始まる大学生活では、これまでとは大きく異なる世界に足を踏み出すことになります。
皆さまの多くは、高等学校までは、一定の枠の中での学びを経験して来られたのだろうと思います。でも、大学生になった皆さまには、これまでに経験して来られた学びの外側に、果てしなく広がる学問の世界があることに、一日も早く気付いて頂きたいと思います。そして、外から与えられるものを待っているのではなく、自ら進んで学び、探究する姿勢を身に付けて頂きたいと思っています。
広く豊かな学問の世界に身を置いた時、自然の中に潜む多様な営みのメカニズムの素晴らしさや法則の美しさを知ることが出来るでしょうし、人々が創造してきた文化の豊かさに感動することもあると思います。
また、学問が、常にダイナミックに変化し、発展していることを知ることも出来るでしょう。その学問のうねりの中に身を置くことで、それまでの自分自身を縛っていた枠を外して、豊かな知識と知的好奇心に裏付けられた論理の進め方を身に付けることもできると思います。そして、広く多様な視点から物事を見たり、考えたりすることによって、独創的な発見や理論が生まれるかも知れません。皆さまの前にあるのは、そんなウキウキする学問の世界です。

また、大学生活を送る中で、皆さまの世界は、社会的にも大きく広がるでしょう。多様な国や地域で生まれ育ち、異なる能力や経験をもった友人たちとの出会いや、大学の外での活動の広がりも、皆さまに豊かな成長の場を与えます。素晴らしい友人たちを得て、知的な活動や社会的な活動に、自主的、積極的に関わって頂きたいと願っています。

本学は、ご存知のように、初の女性のための官立の高等教育機関「東京女子師範学校」として、1875年(明治8年)に文京区の「御茶ノ水」の地に開設されました。その後、教育制度の変遷に伴って、東京師範学校女子部、高等師範学校女子部、女子高等師範学校、東京女子高等師範学校と組織と名称の変更を経て、1949年(昭和24年)に、新制大学へと移行しました。
新制大学に移行した際には、長く愛称として親しまれていた「お茶の水」を大学の名称とし、多くの先駆的な女子学生たちを迎えて、女性たちの社会進出が困難な時代から、一貫して「教養と専門性を備えた女性リーダーの育成」をミッションとして、優秀な女性人材を育ててきました。
本学の卒業生たちは、優れた教育者、科学者・技術者として育ち、また様々な領域で社会基盤の充実に寄与する人材として、女性の自立と社会的活躍を先導してきました。

また本学は、2002年から開始したアフガニスタンからの留学生受け入れや教員研修を端緒に、『学ぶ意欲のある全ての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する』との標語を掲げ、学びたくても学ぶことのできない開発途上国の女性たちをも含めて、世界中の全ての女性たちの夢の実現を支援することを目指して来ました。若い女性たちが、多様な文化と異なる価値観や考え方を持った人々と深く理解しあい、互いに切磋琢磨しながら自らを成長させていく環境を整えるために、現在24カ国71大学との交流協定を結んでいます。

ボーダーレス化し、予測不能な世界では、好むと好まざるとにかかわらず、これまで以上に、急速かつ大規模に進む社会の変化にさらされていくことになります。そして、次世代を担う若い方々には、国の枠組みを超えて対話と実践を重ね、多様な世界の人たちとのつながりを深めて信頼関係を築いていくことが求められます。
そういった社会に於いては、皆さまが将来どのような道を選択するにせよ、高い専門性の修得はもちろん重要ですが、それと共に、自分の専門分野に閉じこもるのではなく、深い見識に基づいて論理を組み立てていく総合的な知力が求められます。
本学では、その総合知の基礎となる「リベラルアーツ」、総合知を支える「思考力と判断力」、そして総合知の共有化を進めるための「コミュニケーション力」を習得するためのカリキュラムを用意し、学びの場を提供しています。
  
これから皆さまも、お茶の水女子大学の一員となられるわけですが、新たな場で、新たなことに取り組んでいく時には、様々な困難が伴うことも予想されます。でも、困難を乗り越えるたびに、人は磨かれて、成長します。それが、自分でも気付かなかった能力や可能性に気付く機会ともなります。
既に踏みならされた安易な道を選ぶのではなく、時には、まだ誰も踏み入ったことのない道を選択する勇気を持って頂きたいと思います。失敗を恐れず、何事にもチャレンジする勇気を持って、大学生時代という貴重で贅沢な時間を有効活用して下さい。それが、未来を切り拓き、自分自身の可能性を思い切り花開かせる事につながります。そして、社会に貢献する成果にも結びつくでしょう。
本学の校歌「みがかずば」にありますように、自分自身を磨き、それぞれの夢を実現させて頂きたいと願っています。 

皆さまの先輩たちは、学問に情熱を傾けると同時に、東日本大震災などの大規模災害で被災された方々や、保護者を失った子ども達、一人暮らしのご老人など、社会的に弱い立場にある方々を支援するためのボランティア活動に参加したり、それぞれの趣味を活かして新たな友人を作るためのサークル活動に参加するなど、様々な課外活動にも熱心に取り組んでいます。

本日入学された皆さまが、お茶の水女子大学で充実した学生生活を過ごされ、日本と世界の希望溢れる未来を創造することのできる優れた女性として成長されることを願っています。
こころとからだの健康を大切に、学園生活を思い切り楽しんで下さい。本学の教職員たちは、皆さまの健やかな成長を、心から応援しています。

本日、お茶の水女子大学に入学された513名の皆さまとそのご家族、ご関係の皆さま方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、これからの実り多い大学生活をお祈りして、お祝いの言葉を結びます。

改めまして、ご入学、まことにおめでとうございます。

2017年4月4日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子

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