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2016年8月29日更新
本日は、お茶の水女子大学理学部のオープンキャンパスにお運び下さいまして、まことに有難うございます。酷い暑さですので、熱中症が危惧されます。どうぞ、水分補給などに努めて頂きたくお願い致します。
短い時間ではございますが、本学における教育、研究、学生支援策などを、皆様により良くご理解頂きたいと、教職員たちが準備をして参りましたので、ご質問等がおありでしたら、どうぞご遠慮なくお尋ね下さい。
本学の歴史は、1875年に、日本初の女性のための国立高等教育機関・東京女子師範学校として「御茶ノ水」の地に設立されたことに始まります。その後70年余に渡って、文科、理科、家政科から成る「女性のための高等師範学校」として、優れた女性教育者の育成に当たって参りましたが、第二次世界大戦後の1949年に、文教育学部、理学部、家政学部(現在の生活科学部です)の3学部から成る新制大学としての「お茶の水女子大学」が発足し、総合大学としての歩みを開始しました。その際に、発祥の地であり、当時本学の愛称として用いられていた「御茶ノ水」が大学の名称となりました。
そして、1963年に大学院修士課程が、1976年に博士課程が設置され、学位を持った優れた女性たちを社会に送り出して参りました。いずれも、女子大学として日本で初めての大学院課程です。
昨年11月29日には、創立140周年を迎え、多数の卒業生や、各界からの皆さまをお迎えして記念式典と記念行事を開催することが出来ました。
本学の卒業生は、女性が学術研究を行うことが困難な時代から、広い視野を持って、国の内外で活躍してきました。また本日皆さまにご案内させて頂く本学・理学部は、わが国の理系分野で活躍する女性たちの源流であるとも言えます。
わが国の女性科学者として初めて米国での研究生活を送り、初めて海外の学術誌に論文を発表して、初の女性理学博士となった生物学者の保井コノさんや、女性で初の帝国大学生となり、二人目の女性理学博士となった化学者の黒田チカさん、また、第2次世界大戦前後の海外に渡航することさえも困難な時期に、フランスに渡ってジョリオ=キュリー夫妻の許で国際的な女性物理学者として活躍した湯浅年子さんなどを先駆けとして、現在に至るまでに多くの科学者・研究者が育って、国の内外で活躍しています。
本学の奨学金制度には、保井・黒田奨学基金、湯浅年子記念特別研究員奨学基金など、こういった素晴らしい先輩たちのお名前を冠したものがあり、若い人たちの励みになっています。
わが国初の女医として知られている荻野吟子さんも、本学の卒業生の一人です。
現在も、本学出身の多くの女性たちが、周囲の方々からの信頼を得て、様々な領域で活躍しています。多様な領域や機関で、「初めての」という枕詞が付く女性たちが本学の卒業生であることは、私たち教職員にとっても大きな誇りです。そして、こうした先輩たちは、嬉しいことに、後に続く若い方々の良い相談相手やロールモデルになって下さっています。
今から12年前に、全ての国立大学が国の組織から独立した「国立大学法人」となりました。その際に、本学は『学ぶ意欲のある全ての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する』とのミッションを掲げて世界に向けて大きな窓を開き、学びたくても学ぶことのできない開発途上国の女性たちをも含めて、様々な国からの留学生を受け入れ、国籍や年齢を問わず、全ての女性たちの成長と資質能力の開発を支援するための活動を開始し、今に至っています。また、日本人の学生達の様々な国への留学を後押ししています。
これまでに、世界54カ国もの国々から、学部と大学院に留学生を迎えています。今年4月現在で29カ国220名の留学生が在籍しており、学生・院生や研究者の交流協定を結んでいる大学も、現在24カ国、69大学に上っています。
本学で学ぶ学生たちの多くは、海外留学を希望し、海外の様々な国と地域に渡航して学びを深めています。そして、日本や世界の人々のために貢献できる人材となることを願って、多様な文化と異なる価値観や考え方を持った人々と理解しあい、互いに切磋琢磨しながら真摯に自己を磨いています。その成果として、多くの女性たちが、本学を卒業・修了した後に、世界に向けて羽ばたき、グローバルな舞台で活躍しています。
本学では、高度な専門教育に加えて、さらに「リベラルアーツ教育」、「リーダーシップ教育」など、特色ある教育システムを構築して、学生達が、確かな専門的知識と広い視野を持って、様々な課題を適切に判断する力を身につけることを支援しています。そして、本学で学ぶ学生たちには、本学の「学びの場」を活用して、深い知識と見識、そして寛容さを身につけ、平和で豊かな未来を創る人材となって頂きたいと切に願っています。
毎年、本学からは、学部から約500名、大学院から約260名の卒業生、修了生が社会に巣立っていきます。その就職先は、大学や国・公立の研究所、初等・中等学校、様々な企業および企業の研究所、府省や県庁・市役所等の行政機関、裁判所などの司法機関、テレビ局や新聞社などの報道機関、独立行政法人や社会福祉法人、金融機関、など様々ですが、それぞれの職場での卒業生・修了生たちは、周囲からの信頼を集め、高い評価を受けています。このことは、教職員たちにとりましても、大きな喜びであり、誇りともなっています。
理学部では、卒業生の多くが大学院に進み、博士学位を取得する人も少なくないことも、本学の大きな特色です。
また、年々、わが国の将来を担う「理系女性人材」を育てようとの機運が高まって、国としても、様々な支援体制を構築し、理系女性の活躍促進のための後押しが始まっています。今は、理系分野で活躍しようと考えている女性たちにとって、とても良い時代だと思います。理系を目指す皆さまは、是非この時代の流れを活用して、それぞれの夢を実現させていただきたいと思っています。
本学の教職員たちは、学ぶ意欲のある学生たちを心から応援しています。そして、若い方たちが自分自身の可能性を花開かせ、新しい世界を開拓して行く力を身につけることのできる、優れた教育と研究の環境を作るために、精一杯努力しています。小さな大学であることは、教職員と学生達の距離がとても近いと言う利点もあって、学生たちが途中で挫折することのないよう、教職員たちが常に心を配って、教育や研究指導、生活指導に当たっています。
今日ここにお出で下さっている皆さまが、ご自分自身の夢を実現させ、社会のために役立つ公共人となるために、本学を学びの場として選んで下さることを心から期待しています。
本日は、お暑い中、本当に有難うございました。