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2016年4月4日更新
293名の新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。お茶の水女子大学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。
ご家族やご関係の皆様にも、謹んでご入学をお祝い申し上げます。お嬢様方の晴れの日を、共にお祝いできますこと、大変嬉しく思って居ります。
また、御来賓の皆様には、お忙しい中、ご臨席を賜りまして、まことに有難うございます。これから、学問・研究を志す大学院生の将来を、温かくお見守り下さいますよう、お願い申し上げます。
今年度は、中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、ロシア、ウクライナ、ハンガリー、ポーランド、アフガニスタンの10カ国から49名の留学生の方々をお迎えしました。この講堂には、日本の国旗と共に、留学生の方々のお国の国旗も掲げてあります。
毎年、国境を越えて、本学で学問・研究の道を究めたいとの意欲を持って留学してきて下さる方々を、私たち教職員は、心から歓迎します。留学生の皆さまには、故国を遠く離れた日本で、学問・研究を追究すると共に、日本の文化と友人たちをはじめとする多くの人々との触れ合いの中で、異なった生活や考え方、価値観の違いなどを学び、さらにそれらを大いに楽しんで頂きたいと思います。
日本で生まれ育った皆さまも、留学生の方々と様々な機会を通じて親しく交流し、友情を育んで、さまざまな人々の多様で豊かな魅力に触れ、その中で大きく成長して頂きたいと願っています。
学部4年間の、あるいは学部と大学院博士前期課程の6年間の学びと研鑽を経て、皆さまは今、希望に溢れて新たな一歩を踏み出そうとしていらっしゃることと思います。お茶の水女子大学の豊かな学びと研究の環境を活かして、それぞれの分野で、学問・研究を究めて頂きたいと思っています。そのために、お茶の水女子大学の教職員は、研究環境を整えるために、種々の制度やキャンパスの設備の整備に努めています。
皆様もご存知の様に、お茶の水女子大学は、昨年11月29日に、創立140周年を迎えました。
本学の歴史は、日本初の女性のための高等教育機関として1875年に「御茶ノ水」の地に東京女子師範学校として設立されたことに始まります。その後140年にわたる歴史の中で、数多くの優れた女性教育者や研究者を輩出して来ました。1949年に新制大学としての「お茶の水女子大学」が発足してから、1963年に大学院修士課程が、1976年に博士課程が設置されました。いずれも、女子大学として日本で初めての大学院課程です。
創立以来、本学には「教養と専門性を備えた女性リーダーの育成」が期待されて来ました。そして、女性たちの社会進出が困難な時代から、本学では一貫して、指導的な教育者や科学者・技術者等を育て、数多くの優れた卒業生を世に送り出し、女性の自立と社会的活躍を支え、社会の知的基盤の充実に寄与してきました。このことは、現在でも変わることなく、お茶の水女子大学のミッションとして受け継がれています。
また、お茶の水女子大学では、国境を越えた研究と教育文化の創造と、世界中の全ての女性たちの夢の実現を支援することを目指し、『学ぶ意欲のある全ての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する』との標語を掲げて、学びたくても学ぶことのできない開発途上国の女性たちをも含めて、国籍や年齢を問わず、女性たちの成長と資質能力の開発を支援するための活動を推進しています。これは、本学が、世界中の女性たちと学びを共有し、多様な文化と異なる価値観や考え方を持った人々と深く理解しあい、互いに切磋琢磨しながら、自らを成長させていくことのできる学園でありたいとの決意の表われであり、真の意味での学園のグローバル化を目指す活動です。
大学院では、それぞれの領域において、深い専門性を持った世界に入っていくことになります。そこでは、先人が構築した概念や論理、あるいは手法を学んで使いこなすのみならず、自分自身の論理や概念、手法などを新たに創造し、独自性のある学術の発展を生み出していくことを目指します。それは心躍る「知的探究」になるはずです。是非、多様な人たちが切磋琢磨する環境で知的探究を楽しみ、それぞれの資質・能力を高めつつ、新しい活力や創造力を生み出して頂きたいと思います。
さらに、本学の大学院では、専門性を深めると同時に、分野横断的な視点に基づく教育と研究を進めることで、時代をリードする学術研究や公教育を担う人材を育成し、同時に、日本と世界の様々な課題に取り組み、課題解決に向けて貢献することの出来る人材を育てることを目標としています。そのために、教職員は、本学独自の多様な教育・研究のプログラムを構築して、新たな学術的価値の創造を目指す努力を続け、これまでにいくつもの教育プログラムを実施してきました。現在は、女性博士人材育成のための大学院博士課程教育リーディングプログラムを推進して、広い世界で、さまざまな領域のリーダーとして活躍できる女性を育てるために努力しています。
本学大学院の修了生は、大学、国・公立の研究所、企業、初等・中等学校、府省や県庁・市役所等の行政機関、裁判所などの司法機関、テレビ局や新聞社などの報道機関、独立行政法人や社会福祉法人など、多様な職場で活躍していますが、これからは、国際機関や海外の大学や研究所、企業などで活躍する人たちが益々増えることでしょう。
本日入学される皆さまの将来への想いは、さまざまであろうと思います。研究者としての道を歩もうと考えている方も、専門的な能力を身につけて社会に出て行こうと考えている方もいらっしゃるでしょう。皆さまが将来どんな道に進むとしても、失敗にめげない強い心を持って、それぞれの研究テーマに向き合って頂きたいと思います。心のたくましさがなければ、難しい課題を解決することは困難です。学問・研究における成功の喜びに到達するためには、何度も失敗を繰り返すこともあることと思います。先行研究を丹念に調べたり、何度も実験、観察、観測などを繰り返したりしながら、正確なデータを整理し、分析して、そこから、自分自身の言葉で、概念や論理・論証を積み重ねるといった、誠実な研究姿勢が、創造的な研究成果に繋がります。ただ、学問・研究の成果は、必ずしもすぐに学界や社会に受け入れられるとは限りません。例えば、学界や社会で既に支配的な通説になっているような学説に挑戦するような新しい成果は、なかなか受け入れられないことが多いものです。しかし、それこそが学問の醍醐味でしょうし、それを成功に導くのが、誠実な研究姿勢です。
皆さまが、このキャンパスで充実した学びと研究生活を過ごされ、誠実な研究姿勢から生み出される自信と誇りに基づいて、学問の発展のために貢献して下さることを願っています。
そして、今、世界に溢れている、貧困、食糧難、環境破壊、エネルギー資源の枯渇、安全と平和の危機など、様々な課題に向き合って探究を続け、周囲の人々に、未来への希望と勇気を呼び起こすような活躍をして下さることを心から願っています。
こころと身体の健康を大切になさって、学園生活を思い切り楽しんで下さい。これからの皆さまの実り多い研究生活を心からお祈りして、お祝いの言葉を結びます。ご入学、まことにおめでとうございます。
2016年4月4日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子