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2020年度「第8回 湯浅年子賞」選考結果報告

2021年2月19日更新

湯浅年子賞選考委員会委員長
お茶の水女子大学 理学部長 小林哲幸

第8回湯浅年子賞選考委員会は慎重に審議を行った結果、下記の者を湯浅年子賞「銀賞」候補者として本学学長に推薦し了承を得ました。
「湯浅年子賞」設立趣旨についてはこちらをご覧ください
お茶の水女子大学賞「湯浅年子賞」

湯浅年子賞 銀賞

菅野 優美
(九州大学理学研究院 准教授

業績「宇宙論研究の新領域の開拓」

 菅野氏は、大学院生時代より超弦理論的観点からブレーン宇宙論にアプローチした研究を行い、新しい近似法の開発に成功して余剰次元の観測的予言に重要な貢献しました。宇宙背景放射の当時の理論では説明できない統計的非等方性が観測された際には、超重力理論の枠組みで非等方インフレーションが起こることを世界に先駆けて発見し、宇宙背景放射や重力波の観測によるインフレーション研究におけるマイルストーン的業績として日本物理学会第21回論文賞を受賞しました。最近も、量子情報理論と宇宙論の関係の研究が評価され、世界的学術雑誌の論文賞を複数受賞しています。女性研究者の極めて少ない宇宙理論分野において国際的認知度は極めて高く、長年にわたる海外での研究経験もあり、今後さらに活躍することが期待されます。
 以上のことから、本選考委員会は、菅野氏の顕著な業績は湯浅年子賞「銀賞」を授賞するに相応しいものであると判断しました。

中浜 優 氏
(名古屋大学素粒子宇宙起源研究所 准教授)

業績「大型加速器実験における新粒子の探索」

 中浜氏は、スイスのCERN研究所での世界最高エネルギーの陽子・陽子衝突加速器(LHC)におけるATLAS国際共同実験を推進し、超対称性粒子など、素粒子の標準理論を超える新粒子の探索研究を主導的に推進しています。LHCを用いた新粒子探索では、いかに紛らわしい事象を排除して新粒子の信号を探すかが鍵となり、それをデータ収集時点で行うのがトリガー(実験の遂行)であり、収集後に行うのが物理解析(超対称性粒子探索)です。中浜氏はその両面でATLAS実験において中核を担って活躍しており、約3000人の研究者が関わる大規模実験組織の中での同氏の存在感は大きく、貢献は高く評価されています。また、大学院生の指導も積極的に行い、女性大学院生の博士後期課程への進学率向上にも貢献しており、今後、国際的な素粒子実験のリーダー的存在になり、さらに活躍することが期待されます。
 以上のことから、本選考委員会は、中浜氏の顕著な業績は湯浅年子賞「銀賞」を授賞するに相応しいものであると判断しました。

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