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2022年度「第7回 辻村みちよ賞」選考結果報告

2023年2月21日更新

辻村みちよ賞選考委員会委員長
お茶の水女子大学 生活科学部長 小谷 眞男

第7回辻村みちよ賞選考委員会は慎重に審議を行った結果、下記の方を辻村みちよ賞候補者として学長に推薦し、了承を得ました。
「辻村みちよ賞」設立趣旨についてはこちらをご覧ください

辻村みちよ賞

池田 まさみ 氏
(十文字学園女子大学教育人文学部 教授)

業績「子ども向け心理学教育の実践と開発 」

 池田氏の学術上の中心的研究テーマは、視覚認知を中心とした人間の情報処理メカニズムに関する基礎研究です。実際この分野において極めて多数の研究業績があり、日本心理学会の優秀論文賞も受賞されています。しかし今回の推薦にあたって特筆すべきと考えられることは、かかる高水準の基礎研究を展開する一方で、「科学としての心理学」の面白さを小学生から高校生までの児童・生徒らに伝えることを目的として、2005年 (科学研究費補助金「萌芽研究」に研究分担者として参加)から現在まで約17年にわたり、子ども向けの認知体験型「心理学」の実験教材、教授法、ワークショップ等の開発・研究に極めて精力的に取り組んでこられた点です。
 この池田氏の取り組みなどによって、心理学の啓発に関わる活動は少しずつ社会一般に広がりを見せ始めました。2011年に開催された第21期日本学術会議心理学・教育学委員会主催の公開シンポジウム「いま、何故、心理学教育を高校に導入する必要があるのか?」において、池田氏は上記のような取り組みとその成果についての招待講演(「中高の心理学出前授業から見た中高生の心理学理解の在り方」)をおこなっています。また2011年から18年まで日本心理学会教育研究委員会「講演・出版等企画小委員会」の委員を務めるなかで、『高校生のための心理学講座』の立ち上げ・実施に尽力されました。この講座は現在、シリーズ化されるに至り、 全国の大学・心理学者によって引き継がれています。さらに、日本基礎心理学会における「心の実験パッケージ」開発委員会の2012-18年度委員長として、主に体験型ワークショップの心理学実験教材開発と学術研究とをリエゾンする活動等にも従事されました。
 このような活動等の展開も一因となって、2022年度より高校公民科(公共・倫理)のなかに心理学が本格的に導入されることになりました。池田氏は、現在、日本心理学会「高校心理学教育小委員会」の委員として、高校生および高校教員向けの教材や教授法等の開発に携わっておられます。また、これに関連して、心理学の教育現場におけるデータサイエンスの研究(科学研究費補助金基盤研究(B)「公共・倫理の学びを拓く心理学教育:「高大連携型クラウドサイエンス」の構築」の代表研究者)にも取り組んでおられます。
 このように池田氏は、長年にわたり日本における子ども向け心理学教育に関わる実践と開発の活動に取り組まれ、その普及にあたり主導的な役割を果たしてこられました。大学では心理学の専門的教育が広く行われていますが、高校までの児童生徒らに対する心理学教育に関しては、その重要性が夙に指摘されながらも、この課題に本格的・系統的に取り組む研究・実践は希少でした。そのことを考えると、池田氏の活動は誠に貴重であり、辻村みちよ賞受賞者の要件のひとつである「家政学・生活科学の社会的普及活動において顕著な業績を挙げた者」に該当するものと考えます。
 以上のことから、本選考委員会は、池田まさみ氏を、辻村みちよ賞受賞候補者に相応しい方と判断しました。

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