第2回 FD講演会 The Liberal Arts and Global Education in the 21st Century
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去る2008年10月7日、国際規格のFD戦略による事業の一環として、第2回FD講演会が催されました。
米国ヴァッサー大学のDavid Kennet教授を講師としてお招きし、「The Liberal Arts and Global Education in the 21st Century」と題してお話をしていただきました。
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FDセミナー "Liberal Arts Education and Globalization in the 21st Century," Professor David Kennett, Vassar Collegeについて |
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科:小林誠 |
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2008年10月77日、米国のヴァッサー大学からデヴィッド・ケネット教授を講師に迎え、「21世紀のリベラルアーツ教育とグローバリゼーション」と題するFD講演会が開かれた。ケネット教授は、9月24日から5日間にわたって、「経済システム研究への招待」("An Introduction to the Study of Economic Systems")と題する学部生向けの集中講義にゲスト講師として招かれ、17名の受講生に対し精力的で、また気配りの効いた講義をし終えたばかりであった(最終的には3名の院生の聴講のほか、学部生10名が単位履修、1名が聴講)。
ケネット教授は、集中講義の体験を踏まえながら、リベラルアーツの現代的意義について論じたが、教育についての深い洞察を感じさせる内容であった。眼目は、とりわけ専門教育との対比という構図の中でリベラルアーツの意義を論じることにあった。報告内容については、英文原稿とその抄訳を見ていただきたい。
彼が自分の学部教育のために選んだのは、「教育地図を塗り替える」ことを自称していたサセックス大学であったが、次第に伝統的な学問分野が復活し、学際性は薄れてしまう。彼はその後、コロンビア大学で修士と博士を修め、やがてリベラルアーツ大学の名門であり、「包括教育」(co-education)を掲げるヴァッサー大学に職を得、30年以上、教育と研究に勤めてきた。
リベラルアーツ大学は主に米国に見られ、一般に、専門教育ごとの学部を持たず、多彩な一般教養課程の中で専攻を習得させる小規模校である。大学院を持つことは少ないが、中にはウェレズリー大学、アマースト大学など、入学時に必要とされるスコアではIVYリーグと並ぶ難関有力校もある。ケネット教授が強調するのは、知の再編が求められているグローバリゼーションの時代にこそ、リベラルアーツの意義があるということである。「バランスの取れた世界観」が獲得できるからだ。リベラルアーツ大学卒業後、ビジネス・スクール、ロー・スクール、メディカル・スクールといった専門職大学院に進むのが理念上のコースのようだ。とはいえ、学費がかかることが難点であることは、彼自身も率直に認めていた。
2002年の日本の中央教育審議会が、大学の多様な発展を構想し、その1つにリベラルアーツ大学を例示したことがあった。日米の教育環境はかなり違うので、米国のやり方をそのまま日本で実現することを夢想するわけにはいかない。しかし、専門教育を重視する大学が広がる中で、これとひと味違う独自の理念を模索するリベラルアーツ大学の可能性について、私たちはもっと知るべきだろう。
1970年代初頭、ヴァッサー大学のイェール大学への吸収合併話が持ち上がったとき、卒業生や在校生が反対したため、存続の道を選んだ(共学化で危機をしのいだ)。確かに、母校は愛されている。その魅力はどこから来るのだろうか。
(以上) |
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