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お茶の水女子大学卒業生インタビュー(第2回)1984年文教育学部国文学科卒業 野村浩子さん

 卒業生インタビュー第二回目のゲストは、1984年に文教育学部国文学科を卒業された、野村浩子さんです。野村さんは現在、はじめての女性管理職(リーダー)を対象とした雑誌『日経EW』の編集長としてご活躍中です。また、「お茶の水女子大学論」で、6月13日の講義を担当されます。


「時代が動いた。そう思いましたね」。
新雑誌の立ち上げについて、ご自身のキャリアステップをまじえながらお話いただきました。

野村浩子さん
   野村さんは国文学科のご出身ですが、出版のお仕事を志されたのは
   いつごろですか?
野村さん: 初めからそんなに具体的なビジョンを持っていたわけではないんですよ。ただ、マスコミへの漠然とした憧れというのは早くからありました。活字の世界にかかわりたい、というような。私の学生時代だと、女性がずっと働こうと思ったら、教職か、公務員か、出版か、というのが選択肢でした。もちろん、あとになってから、ほかの職種もあったことがわかったんですけど。私も、教員採用試験を受けていたんですが、どうしてもチャレンジしたかった。それで、UPUという、就職情報のベンチャー企業に編集の仕事で就職しました。若い会社で、その分活気に溢れていたし、男女関係なく思いっきり働けるというのが魅力でしたね。ここでいろいろ学びましたが、いったん退職して、1989年からいまの日経ホーム出版に勤めています。




   「日経EW」のコンセプトはいつごろからお持ちだったのですか?
野村さん: 実は、10年ぐらい前からです。ずっと「日経Woman」(20代後半の女性が読者対象)の編集をしていたのですが、30代から40代の女性から、自分たちを対象にした雑誌がほしい、という声があがっていました。けれども、当時はまだ「女性管理職」「女性リーダー」をマーケットとして成立させることはできませんでした。それだけの数がいなかった。しかし、ここ数年、かつては特別な個人、突出した個人として存在した「女性管理職」が、ごく普通に存在するようになった、そんな手応えを得たのです。とくに、自動車や電気機器といった、まさに日本の男組織の最たるフィールドで、大きなプロジェクトを率いて、そして結果を出す、という女性リーダーたちが現れました。時代が動いた、と思いましたね。若い女性たちにとっても、自分たちのキャリア・ビジョンに、具体的に「女性管理職」というステップをイメージすることができるようになったし、またイメージしてほしいと思っています。
   女性リーダーを読者層とする、ということは記事の上ではどんなふうに反映されているのですか?
野村さん: かつては、キャリアを求める女性は男性と同じように働かなければならない、男性化しなければならない、という風潮がありました。仕事するんだったら女性を捨てろ、というような。しかし、ほんとうの意味での女性のキャリアの実現は男性にあわせることではない。「日経EW」の「E」は「executive」そして「elegant」です。たとえば、服装やメイクを考えるときでも、女性リーダーはより戦略的である必要があります。男性は、とりあえずダークスーツを着ていれば大丈夫、というようなドレスコードがありますが、女性にはない。その分、苦労するわけですが(時間もかかりますしね、笑)、やはり意識的でなければならない。私は、リーダーというのは変革を担う人々だと思っています。ですから、ファッションというような面でも、時代にセンシティブであるべきだと思うんですよ。

つづいて、学生時代の思い出、またお茶大生の印象などをうかがいました。

   お茶大での生活で、一番印象に残っていらっしゃるのは?
野村さん: 私、「TECTEC」っていう、山登りサークルに入っていたんですよ。東大と、東京女子大、日本女子大との合同サークル。北アルプス縦走1週間なんていうのもやったんですよ。山に行くとね、夕方5時ぐらいで日が暮れて、真っ暗でしょう? そうすると、山小屋にこもって、一晩中、いろんなことを語り明かすわけ。楽しかったですね。青春の一頁。笑。勉強はあんまりしなかったかな。笑。社会に出てみると、ほんとうにもったいないことをしたということがわかります。大学にいるときにしか、まとまった時間がとれない。それに、大学での勉強と、社会人になって仕事のためにする勉強というのは、違うんですよね。それから、私の同窓生で、いま、ビジネスシーンの第一線で活躍している人たちがいるんですけど、彼女たちは英文科の出身じゃないのに、英語がぺらぺらなのね。それで、どうして? って聞いたら、大学にいる間に、英語の授業をできるだけとって、それで身につけたんだそうです。こういう先見性っていうのかな、学生時代から時代の先を見る意識を持っていることが大切だと思います。
   お茶大生の印象というのはどうですか?
野村さん: これは今も昔も変わらないと思うのですが、学ぶことが好きだということ、これはお茶大生ならではの長所だと思います。何かをこつこつと積み重ねることの大切さというのは、社会に出て、キャリアを築いていくなかでも変わりません。一つのことを継続できる資質というのはとても素晴らしい。その反面、どうしても世界が狭い、という面がありますね。人間関係にしても、いろいろなネットワークにしても、これは女子大の短所でもあると思いますが、どうしても狭い。社会に関する情報も少ない。職業の選択にしても、あらかじめ限られたところで選んでいる傾向がありますね。実際の仕事というのは、ほんとうに多様でバラエティに富んでいるものです。まず、この多様さ、選択肢がたくさんあるということ自体を知ってほしい。そして、その多様さを自分から求め、捜そうとする積極性を持ってほしいですね。学生さんは、たかだか二十数年の経験則しか持っていないわけです。この経験則のみで、選択肢を狭めてしまうのは残念なことです。違うところに自分から出かけていこう、という気持を持ってほしいと思います。

最後に、お茶大生のみなさんへのメッセージをいただきました。

野村さん: まず、自分から多様さを求めよ、と言いたいです。時代の先を見て、学生時代を有意義に過ごしてほしい。また、リーダーシップをとる訓練を若いときからやるべきです。これはね、決して肩書きを求めなさい、と言っているのではないんです。なぜ女性の管理職が少ないか、というと、若いうちから自分が管理職になることをイメージしていない、というのも理由のひとつです。そんなビジョン自体を持っていない。女性はこれまで、肩書きがつくことを引き受けないようにしてきたし、また、そんなふうにしつけられて、自分から制限もしてきた。けれども、リーダーを引き受けるということは、より大変な仕事を引き受けるということですが、これは、その結果、より大きな達成感が得られる、ということなんですよ。いまは、それがかなえられる時代です。ぜひ、リーダーシップをとっている自分の将来像をイメージしてほしいと思います。
   お忙しいところ本当にありがとうございました。

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