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お茶の水女子大学卒業生インタビュー(第1回)
1995年大学院博士課程修了 
根本香絵さん(物理学専攻:現在、「情報・システム研究機構 国立情報学研究所」助教授)
「女性科学者として」

 物理学と情報学の融合分野「量子情報学・量子コンピューティング」の世界で、現在大変注目を浴びていらっしゃる本学大学院修了生の根本香絵さん(現在、情報・システム研究機構 国立情報学研究所助教授)にインタビューをさせていただきました。
 まだまだ研究者の世界は男社会と言われています。そのなかでも特に女性研究者が少ないと言われる物理学の世界で活躍されている気鋭の女性科学者のおひとりです。
 このインタビュー記事をとおして、理系・文系に限らず、多くの後輩学生のみなさんへ力強いメッセージをお届けできればと思います。


根本香絵さんのプロフィール
根本香絵さん 根本 香絵(ねもと かえ)
1993年修士課程修了 お茶の水女子大学理学研究科物理学専攻
1995年博士課程修了 お茶の水女子大学人間文化研究科人間環境科学専攻、理学博士

クィーンズランド大学(オーストラリア)研究員、ウエールズ大学(英国)研究員を経て、2003年6月から現職

関連サイト:「ようこそ量子LAB」

女子は理系に向いている?

   先生が最初に物理学に興味を持たれたのはいつごろでしょうか?
根本さん: 物心ついた頃から、物理とか化学といった区別もつかない頃から、とにかく物理系が好きでしたね。他のことにはあまり関心がなかったし、自然と物理をやっていたという感じでしょうか。
   東海大学の理学部に進まれ、その後大学院はお茶大に進学されました。お茶大を選ばれた大きな理由は何でした?
根本さん: その当時、量子物理と統計物理の方向に興味がありました。そういう事をやっている大学は都内に何校もなく、さらにお茶大には柴田先生がいらしたので、いいのではないかと思い進学しました。
   郷学長は、女性は理系に向いていると、よくおっしゃっていますが、根本さんはこれについて何か思われることはありますか?
根本さん: 女性だから理系に向いていないということは、まったくないと思います。どちらかというと向いているのではないのでしょうか。ともかく、男子だから・女子だから、向いている・向いていない、文系・理系ということはまったくないと思います。
   一般的には、「物理学」と聞くとまず難しそう、特殊な世界だと怯むこともあると思いますが……。
根本さん: 研究者として女性がキャリアを持つことが当たり前であれば、選択肢の一つとして、女性が物理の研究者としてやっていくことも見えてくると思います。が、現状では、非常に特殊に映るかもしれません。
確かに非常に競争が激しい世界なので、そのなかで女性が研究者として生き残って、かつ家庭を持つことは非常に大変なことだと思います。ある程度、(結婚・出産・育児後の)復帰支援などが整っていて、自分のペースで家庭も・研究も維持していくことが可能になれば、郷学長のような女性の理系研究者も続々と増えてくるのではないでしょうか。

興味深い……研究者の日常と私生活

   これから研究者を目指す学生が一番興味深いのは、研究者ってどのような日常生活を送っているのかしら? というところだと思うのですが。
根本さん: 私も学生時代は全然その辺は分からなかったですね。学生には、なかなか研究生活というのは想像できないと思います。研究者になったら自分はどのような日常生活を送るのだろうかと思いをめぐらすよりも、研究者になったら何をやるのかを考えてほしいですね。大切なのは何をやるかです。やりたいっていう情熱がなくなってしまうと研究は長続きしません。
   今後、研究者を目指したいと思っている後輩に、元気の出るアドバイスなどありましたらお願いします。
根本さん: 女性は誰でも結婚・出産といったテーマについて悩む時があると思います。特に研究者になろうとすると、(自らの成長のために)大切な時期と(いわゆる適齢期が)重なることもあり、周りの人が変わっていくと、「自分はこのままでいいのか」と迷ったり、周りからプレッシャーを受けることも多いのではないでしょうか。そんな時、うまくやろうと思うよりも、自分のなかにある情熱を大切にしようよ、というのが私のアドバイスですね。何年か後の自分の可能性なんて、とても見えません。でも自分が育つことによって、その先に、可能性が広がってくるのですから。

現在のご研究内容について

   根本さんのご研究内容を簡単にご紹介いただけますか? 量子物理情報科学が人々の生活に関わってくるのは、まだ先の話になるのでしょうか?
根本さん: 量子的な性質を活かした技術は、実用化へ向けた研究が進められています。しかしその一方で、量子コンピュータのように大規模な量子情報処理などは、だいたい20年先ぐらいになると考えられています。現在の私の研究は、そのような将来へ向けて、より拡張性の高いものを開発していこうという取り組みになります。
   最後に、今後のことをお聞かせください。
根本さん: 今後は、エキサイティングな理論研究をどんどんやっていきたいと思います。またディスカッションを主体とした、オープンな発言ができる研究の場を広げていけたらと思います。その一環として、ウェブでそういう人達が集まって情報交換をしたり、セミナー開いたりできるような取り組みを進めています。
また、私たちの最新の成果を一般の人に上手にお伝えできるような体制を確立していければと思っています。たとえば2006年2月に国立情報学研究所の市民講座で話をさせていただきましたが、それをまとめた『ようこそ量子』という新書(丸善ライブラリー刊)も出版することになりました。量子という概念を、広く一般の方々に、楽しく理解していただけたらと思っています。
   お忙しいところ本当にありがとうございました。

2006年9月19日(火) 国立情報学研究所にて
インタビュアー:お茶の水女子大学図書・情報課長 茂出木理子

第2回 野村浩子さんインタビューはこちらから

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