プロジェクト

幼児教育分野におけるアジアの途上国の実態調査とネットワーク形成


7 セミナー参加研究者フィードバックアンケート

 

1.今回の幼児教育研修で、最も印象に残ったことは何ですか。あなたにとって、何が一番興味深く、勉強になりましたか。
【Dinh Hong Thai先生】
日本は法治国家であり近代国家である。また治安も良く人々はとても親切で素晴らしいという印象を受けた。日本社会は人間中心を考える社会であり、日本人は優しくて暖かく、日本の教育は多様化で素晴らしいシステムであると感じた。
私たちは多く学べたが、すべて書けないので幾つかのことを書くことにする:
― 仕事・生活・社会システムの合理性
― 講義は必ず実際の研究に基づいて行われること
― 出会った先生方々・スターフ方々の勤勉性・謙虚さ
― 文化・伝統を大切にすること
― 多様な教育システム
【Nguyen Thi Hoa 先生】
平和な国で、素敵なお茶の水大学の並木の正門の風景等。滞在中多くの親切な日本人に出会いと、そして、幼児教育についてお茶の水女子大学の先生方々から貴重な知識を学び、お互いの経験を分かち合えたこと。とにかく、今回の学術交流は非常に有意義なものだった。
【Hoang Thi Phuong 先生】
もっとも印象深かったのは、日本の社会は人間の最も良い発達条件で作られた社会システムであるということである。短時間ではあったが、正確かつ明確に具体的な仕事を行う方法や考え方、環境配慮、思いやり等を観察でき学ぶことが出来た。

2.講義の中で何が最も役立ちましたか。
【Dinh Hong Thai先生】
講義なさった先生は皆大変素晴らしかった。すべての講義は説得力があり、興味深かった。特に箕浦先生、大戸先生、内田先生、牧野先生などの講義は良かった。
【Nguyen Thi Hoa 先生】
すべての講義が良かったが、一番興味深かったのは「子どもについての研究」や「幼児教育についての研究」の内容だった。
【Hoang Thi Phuong 先生】
すべての講義は説得力があり、わかりやすく、具体的で正確なデータを紹介された。そして、先生方は豊かな知識、経験また鋭い理論を有していらっしゃったため、私たちは夢中に講義を聴いた。また、先生方が言及なさった内容は、ベトナムの幼児教育における緊急課題でもあり、私自身の悩みでもあったため、興味深く聞くことができた。帰国後すぐにでもいくつかの内容を自分の授業で応用し、自分の研究に取り入れようと思った。

3.日本の幼稚園・総合施設「認証子ども園」を参観した感想をお聞かせください。
【Dinh Hong Thai先生】
ゆうゆうもりの幼稚園・保育園は本当に素晴らしかった。設計者は子どもの心理をよく理解していた
【Nguyen Thi Hoa 先生】
付属幼稚園や白梅幼稚園等を見学して本当に良かった。特に「ゆうゆうのもり」を訪問した際、自分の小さい時の夢を思い出させる幼稚園だった。経営者とその学校を設計した建築家等は子どもの心理を良く理解し、入園児に素晴らしい空間を与えていた。そのような素晴らしい幼稚園がいつかベトナムでも建てられるように願っている。
【Hoang Thi Phuong 先生】
「ゆうゆうのもり」を見学した際、驚くことが多かった。たとえば、日本の教育は地域格差が全く存在していないことや、子どもに平等な教育環境が与えられることなどであった。ゆうゆうのもり幼稚園・保育所の設計は、こどもが何を求めるか良く把握していることを証明している。このような素晴らしい施設を、日本政府ができるだけ数多く建設して欲しいと私は思った。また、ベトナムでもこのような学校が早く作れるように願っている。

4.白梅学園大学での授業参加では何を学ぶことができましたか。もっとやってみたかったことは何ですか。
【Dinh Hong Thai先生】
白梅短期大学の施設はきれいだった。講師も情熱的で一所懸命に説明してくださった。「表現」のクラスはものづくりのクラスだったが、学生も先生の一所懸命だった。また、白梅幼稚園の園庭開放は本当に良かった。園児と一般の子どもとの交流も本当に興味深かった。
【Nguyen Thi Hoa 先生】
白梅短期大学での授業参観では、講師の豊かな知識と情熱が自分には伝わっていたが、ただ一方的学生に説明するのではなく、講義方法を工夫して多様な説明方法を用いた方が活発な授業になると思った。
【Hoang Thi Phuong 先生】
白梅短期大学での授業参観では、学生も講師も非常に情熱的であった。また学生は想像力にあふれていた。最初の授業は説明の時間を短くして学生の授業参加の時間を多く取り入れた方が良かったと思う。そして、学生のグループワークの機会を与えた方が良かったのではないかと思う。

5.日本の幼児教育のどういう点を自国に取り入れたいと思いますか。それを実現するためには何からはじめればいいと思いますか。
【Dinh Hong Thai先生】
日本の幼児教育は非常に多様であった。また、現場に教育を任せる政策は良いことだと思う。「子ども中心の教育」とは「遊び中心の教育」で、それによって子どもの順調な発達が可能となるものだと思う。私たちは、まず、師範大学の講義でこの保育方法を学生に教え、日本の幼児教育を紹介するセミナーを開催したいと思う。
【Nguyen Thi Hoa 先生】
日本の幼児教育を学び、ベトナムの幼児教育に次のようなことを考え導入したい:
― 遊びを通して子どもに教育する
― 子ども中心の教育、教育はすべて子どものためであり、子どもは主役であり先生の役割は子どものサポータである
― 子どもへの教育は自国の社会・文化・風習・伝統に適した教育でなければならない。
― 子どもを考える時、’A CHILD’’ではなくて’ THE CHILD’ であり、子どもの“個”を尊重する
今回日本で学んだ教育原理は私がロシアで学んだヴィゴツキーやフレーベルの幼児教育原理でもあった。理論として私たちもこれらの原理に非常に賛成しているが、実際ベトナムの状況では応用するのには難しく障害が多い。
そこで、障害を乗り越え、問題を解決するため、次の項目を行わなければならないと思う:
― まず、ベトナム教育・訓練省を始め、幼児教育局、幼児教育研究所、ハノイ師範大学の幼児教育科の幼児教育の考え方・研究・指導方法等を統一する必要がある。
― 先述の幼児教育の原理を現場の先生に指導し、研修会を行う
― 子どもの教育環境・学習環境を多様化する
― 幼児教育において、子ども一人一人‘’個’であることを忘れてはいけない
【Hoang Thi Phuong 先生】
日本の経験をベトナムで生かしたい:
― ベトナムの経済状況・文化の特徴を生かしながら日本及び先進国の幼児教育を取り入れること
― 家庭の経済状況や地域に関わらず、すべてのベトナムの子どもに平等な教育環境を作ること
― 子どもの教育に関わる関係者は子どもの立場で物事を考え行動するようにすること
― 適切な指導方法を工夫すること
これらのことを次のような方法で実現したい:まず
― ハノイ師範大学の同僚に日本の経験を共有する機会をつくる
― 日本で得た知識と経験・見たこと・感じたことなどを幼児教育雑誌で紹介する
― 授業で日本の指導方法を学生に教える

6.反対に、取り入れるのに難しいと思われる点は何ですか。その原因は何だと思いますか。
【Dinh Hong Thai先生】
日本の幼稚園・保育園で実践されている多様なシステムをベトナムでは導入できないと思う。なぜならば、ベトナムでは硬い枠組の中で全国の幼稚園・保育園の教育が行わなければならいからである。
【Nguyen Thi Hoa 先生】
日本の幼児教育の現場ではカリキュラムや教育方法や内容など自由自在に行える。これはベトナムとは大きな相違点である。私たち師範大学の教授は、政策の決定権等がなく、ベトナム教育訓練省の言う通りに行う立場でしかない。
【Hoang Thi Phuong 先生】
日本の幼児教育制度・政策等ベトナムでは取り入れることが難しいと思う:自由なカリキ
ュラムの作成・指導内容の柔軟性・地域の無格差・教育環境の平等などは、ベトナムでは
実現できないからである。日本人の勤勉な勤務態度もベトナムで見習うのも、時間がかか
る(ベトナムののんびりの習慣をなくすのには非常に時間がかかる)。


7.この研修で学んだことを活かして、将来的に自国でどのように幼児教育を展開したいと思いますか。
【Dinh Hong Thai先生】
日本で講義を受けた内容を、また紹介された研究成果を先生方々の許可をいただいてから是非幼児教育雑誌に紹介したい。日本の経験をPRしたいし、ベトナム教育訓練省の幼児教育局の関係者に日本のシステムを紹介したい。
【Nguyen Thi Hoa 先生】
帰国後、次のことを行う予定:
― 日本で学んだ経験・得た知識を師範大学の同僚と共有する
― 日本の幼児教育システム・原理・考え方などをベトナムの幼児教育雑誌に投稿して関係者にできるだけ多く知ってもらう。
― 大学院生・学部生に日本で得た幼児教育の貴重な知識・見たもの・学習できたことを伝え、教える。
【Hoang Thi Phuong 先生】
ベトナムで日本の経験を導入および応用するためには必要な条件とは:幼児教育関係者(学校・家庭・社会)はまず子どもの発達過程や心理を理解することだと思う。また、子ども中心の教育に賛同する幼児教育者を養成すること。現役の保育士・幼稚園教諭に研修機会を与えることまたは再教育すること。幼児教育の研究と養成は統一しなければならないこと(現場に役に立つ研究テーマなど)。師範学校・大学は実習場として付属幼稚園や保育園を建設することなど。

8.幼児教育分野での国際協力について、日本に期待することは何ですか。
【Dinh Hong Thai先生】
日本側がベトナムに対して協力していただきたいことは:
― 幼児教育の経験の共有
― 留学生の受け入れ、ベトナムへの専門家派遣
― 日越共同研究案件の実施・幼児教育教師の養成
― ハノイ師範大学には自然科学科・社会科学科両方あるのでお茶の水女子大学との協力関係を是非お願いしたい
― ハノイ師範大学で日越教育協力センターの設立(すでに越中教育センターや越韓教育センターが設立された)
【Nguyen Thi Hoa 先生】
幼児教育における日本の協力は次のような機会を通して実施していただきたく思う:
― 学術交流の実施
― 日越共同開催セミナーの実施
― 留学生(大学院生)の受け入れ
【Hoang Thi Phuong 先生】
ベトナムにとって必要な日本の協力:
― 幼児教育の経験・意見交換の機会
― ベトナムで役に立つ幼児教育の指導方法の共同研究

9.今後どんな幼児教育を望みますか。
【Dinh Hong Thai先生】
日本のような素晴らしい幼児教育システムをベトナムで作り上げたい
【Nguyen Thi Hoa 先生】
ベトナムの幼児教育は日本と先進国の幼児教育システムを多く取り入れて欲しいと思う。しかし、ベトナムの状況に適した項目を選択して導入すべきだと思う。
【Hoang Thi Phuong 先生】
将来、ベトナムの幼児教育は子どもの発達・能力などを最大に伸ばす幼児教育として発展・向上できるようになってほしい。また、子どもの自立性・想像力・潜在能力、そして周囲との協調性を最大限に発揮できるような幼児教育を確立していきたい。

10.最後に、お茶の水女子大学に対する感想や意見をお聞かせください。
【Dinh Hong Thai先生】
お茶の水女子大学の素晴らしいという印象を持っている。きれいな大学で、歴史のある大学である。学生も優秀で良い方々が多いと感じた。
【Nguyen Thi Hoa 先生】
名門のお茶の水女子大学で講義を受けられたことを誇りに思う。また、美しい大学のキャンパスで過ごした時間は、私にとって本当に幸せだった。素晴らしい先生方に出会え、ロシアでの留学時代の幸福感を久しぶりに味わえた。先生方の豊かな知識を敬服し、私たちを温かく迎えてくださったことを大変感謝する。お茶の水女子大学の皆様、本当にありがとうございました。架け橋の役割を果たしてくれた通訳の人にも感謝する。皆様のことをいつまでも忘れられない。今回の訪日は学ぶことがあまりにも多く、どう感謝すれば良いか言葉が中々見つからないほどですが、本当にありがとうございました。
【Hoang Thi Phuong 先生】
お茶の水女子大学の皆様に尊敬の意を表したく思う(歴史があり、知的にも人間的にも素晴らしい先生方を有し、素晴らしい教育の特徴を持ち、献身的で人柄の良いスタッフの揃っている大学である)。今後、この名門大学の独特な教育が、日本だけでなく世界的の幼児教育に対し、今まで以上のより深く・広い影響をもたらすように願っている。御茶ノ水大学の皆様、本当にありがとうございました。








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