○国立大学法人お茶の水女子大学研究者等行動規範

平成18年9月14日

制定

(目的)

第1条 国立大学法人お茶の水女子大学(以下「本学」という。)は、本学の学術研究の信頼性と公正性を確保することを目的として、本学において研究者等が、主体的かつ自律的に学術研究に取り組む際に求められる基本的な行動規範をここに定める。

(定義)

第2条 「研究者等」 本学において研究活動に従事する職員(非常勤である者及び研究支援者を含む。)、学生(研究生その他本学において修学する者を含む。)、その他本学の施設及び設備を利用して研究活動を行う者をいう。

(研究者等の責務)

第3条 研究者等は、自らが生み出す専門知識や技術の質を担保する責任を有し、更に自らの専門知識、技術、経験を活かして、人類の健康及び福祉、社会の安全及び安寧、並びに地球環境の持続性に貢献するという責任を有する。

(研究者等の姿勢)

第4条 研究者等は、常に正直、誠実に判断、行動し、自らの専門知識、能力、技芸の維持向上に努め、科学研究によって生み出される知の正確さや正当性を科学的に示す最善の努力を払う。

(社会の中の研究者)

第5条 研究者等は、科学の自律性が社会からの信頼と負託の上に成り立つことを自覚し、科学・技術と社会・自然環境の関係を広い視野から理解し、適切に行動する。

(基本理念)

第6条 本学における研究者等の行動規範は、次の事項の実現をその基本理念とする。

(1) 人類の知的基盤、健康及び福祉に貢献する社会的に有益な研究の実施

(2) 生命と人間の尊厳及び人権の尊重

(3) 科学的又は社会的利益に対する個人の人権の保障の優先

(4) 個人情報の保護の徹底

(5) 研究に関わる安全の確保と適切な研究環境の保持

(6) 捏造、改ざん、盗用等の研究上の不正行為の防止による公正な研究の推進

(7) 法令、本学の諸規程及び学会等において認められた研究に関わる規範の遵守

(インフォームド・コンセント)

第7条 研究者等は、人間を対象とし、個人に関する情報の提供を受けて研究を行う場合には、「国立大学法人お茶の水女子大学研究倫理指針」に定める手続に従って、当該の対象者・個人等から明確な同意を得て、研究を行わなければならない。

(生命の尊厳への配慮)

第8条 研究者等は、生命又は遺伝発生に関係する対象に関して研究を行う場合、法令、本学の諸規程及び当該分野の学会の指針等に定める手続に従って、生命の尊厳に配慮した研究を行わなければならない。

(社会的期待に応える研究)

第9条 研究者等は、社会が抱く真理の解明や様々な課題の達成へ向けた期待に応える責務を有する。研究環境の整備や研究の実施に供される研究資金の使用に当たっては、そうした広く社会的な期待が存在することを常に自覚する。

(説明と公開)

第10条 研究者等は、自らが携わる研究の意義と役割を公開して積極的に説明し、その研究が人間、社会、環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し、その結果を中立性・客観性をもって公表すると共に、社会との建設的な対話を築くように努める。

(科学研究の利用の両義性)

第11条 研究者等は、自らの研究の成果が、自身の意図に反して、戦争及びテロ等の破壊的行為に悪用される可能性もあることを認識し、研究の実施、成果の公表に当たっては、社会に許容される適切な手段と方法を選択する。

(倫理審査委員会)

第12条 研究者等は、実施する研究が、本学の規程により本学に設置されている倫理審査委員会の審査を受けるものとされている場合には、その研究について倫理審査委員会の審査を受けなければならない。

2 前項のほか、法令又は当該分野の学会の規程等において、研究の実施に先立って倫理審査を受けるものとされている場合には、定められた手続によって倫理審査を受けなければならない。

(個人情報の適切な取扱い)

第13条 研究者等は、研究の必要上、個人情報を使用又は保管する場合には、それが漏洩することのないよう厳格に管理するとともに、研究結果の公表の際に、個人名が特定されることのないよう最大限配慮しなければならない。

(研究上の不正の防止)

第14条 研究者等は、研究の立案、計画、実施、成果の取りまとめ及び成果発表の過程において、この規範の趣旨に沿って、誠実に行動するとともに、国立大学法人お茶の水女子大学における研究活動に係る不正行為の防止及び対応に関する規程第3条に定める不正行為は、いかなる場合にもこれを行ってはならない。

2 研究者等は、前項に規定する不正行為が、自らの指導のもとにある研究者等によって行われることのないよう適切な措置を講じなければならない。

3 研究者等は、第1項に規定する不正行為を行っていないことを証明するために必要な資料、データ及び研究実施経過に関する記録(実験ノート等)を、適切な期間保管しなければならない。

(研究環境の整備及び教育啓発の徹底)

第15条 研究者等は、責任ある研究の実施と不正行為の防止を可能にする公正な環境の確立・維持も自らの重要な責務であることを自覚し、科学者コミュニティ及び自らの所属組織の研究環境の質的向上、並びに不正行為抑止の教育啓発に継続的に取り組む。また、これを達成するために社会の理解と協力が得られるよう努める。

(研究費の取扱い)

第16条 研究者等及びその他本学の業務を行う全ての者(以下「その他本学構成員」という。)は、研究費の運営・管理に当たっては、法令及び本学の諸規程に反し不正に使用してはならない。また、研究費を最も効果的かつ効率的な方法で使用するよう努めなければならない。

2 研究者等及びその他本学構成員は、研究費の源泉が、国・地方公共団体からの運営費交付金、補助金、財団や企業等からの助成金、共同研究費及び寄附金等によって賄われていることを常に留意し、研究費の適正な使用に努め、その負託に応えなければならない。

(先行研究の公正な評価)

第17条 研究者等は、先行研究を精査し、研究発表に当たっては、当該研究に対して寄与した先行研究を公正に評価し、言及しなければならない。

(公正な審査)

第18条 研究者等は、研究助成金、学会賞等の審査又は学術誌の審査にあたる場合には、審査対象者の属性や審査対象者との関係等によって不当な評価を行うことなく、学問的基準のみに基づいて公正な審査を行わなければならない。

2 前項の審査を行った研究者等は、その過程で知り得た研究上の情報を、自らの研究に不当に利用したり、他に漏らしてはならない。

(研究成果の適切な発表)

第19条 研究者等は、特許出願その他合理的理由のために公表に制約がある場合を除いて、適切な方法により発表することで、各自が果たした役割に応じて功績の認知を得るとともに、責任を負わなければならない。

2 研究成果の発表に当たっては、私的利益への配慮や不当な圧力により研究成果の客観性を歪めることがあってはならない。

(他者との関係)

第20条 研究者等は、他者の成果を適切に批判すると同時に、自らの研究に対する批判には謙虚に耳を傾け、誠実な態度で意見を交える。また、他者の知的成果等の業績を正当に評価し、名誉や知的財産権を尊重するとともに、科学者コミュニティ、特に自らの専門領域における科学者相互の評価に積極的に参加する。

(研究補助者及び学生に対する配慮)

第21条 研究者は、研究活動の遂行に当たって、研究活動に関与する研究補助者、研究協力者及び学生(以下「研究補助者等」という。)の利益に常に配慮するよう努めなければならない。また、ハラスメント行為を行うことはもとより、研究補助者等の弱い立場を利用して研究への支援や協力を強いる等の不当な行為を一切行ってはならない。

(実験等の安全管理)

第22条 研究者等は、実験等に用いる機器、装置及び薬品等が、研究に従事する者はもとより、その他本学構成員及び学外者にいかなる危険を及ぼすこともないようその安全管理に万全を尽くさなければならない。

2 研究で用いた廃液、薬品及び材料等は、法令及び本学の諸規程を遵守の上、自然環境に害を与えないよう処理しなければならない。

(社会との対話)

第23条 研究者等は、社会と科学者コミュニティとのより良い相互理解のために、市民との対話と交流に積極的に参加する。また、社会の様々な課題の解決と福祉の実現を図るために、政策立案・決定者に対して政策形成に有効な科学的助言の提供に努める。その際、科学者の合意に基づく助言を目指し、意見の相違が存在するときはこれを解り易く説明する。

(科学的助言)

第24条 研究者等は、公共の福祉に資することを目的として研究活動を行い、客観的で科学的な根拠に基づく公正な助言を行う。その際、科学者の発言が世論及び政策形成に対して与える影響の重大さと責任を自覚し、権威を濫用しない。また、科学的助言の質の確保に最大限努め、同時に科学的知見に係る不確実性及び見解の多様性について明確に説明する。

(政策立案・決定者に対する科学的助言)

第25条 研究者等は、政策立案・決定者に対して科学的助言を行う際には、科学的知見が政策形成の過程において十分に尊重されるべきものであるが、政策決定の唯一の判断根拠ではないことを認識する。科学者コミュニティの助言とは異なる政策決定が為された場合、必要に応じて政策立案・決定者に社会への説明を要請する。

(差別の排除)

第26条 研究者等は、研究・教育・学会活動等において、人権、ジェンダー、地位、思想・信条、宗教等によって個人を差別せず、科学的方法に基づき公平に対応して、個人の自由と人格を尊重する。

(利益相反)

第27条 研究者等は、自らの研究、審査、評価、判断、科学的助言等において、個人と組織、又は異なる組織間の利益の衝突に十分に注意を払い、公共性に配慮しつつ適切に対応する。

(本学の責務)

第28条 本学は、この行動規範が、本学における研究者等及びその他本学構成員に十分理解され、この規範に沿った研究活動が行われるように、以下の措置をとるものとする。

(1) 「国立大学法人お茶の水女子大学研究倫理指針」及びそれに基づく倫理審査に関する規定を整備し、必要な研究倫理審査を行うこと。

(2) 第14条に定める研究上の不正行為及び第16条に定める研究費の不正使用への対応に関する規定を定めるとともに、不正行為の防止措置をとること。

(3) その他啓発活動等、この行動規範の実効性を高めるために必要な措置をとること。

この規範は、平成18年9月14日から施行する。

(平成28年7月13日)

この規範は、平成28年7月13日から施行する。

(平成29年9月27日)

この規範は、平成29年9月27日から施行する。

(平成29年12月20日)

この規範は、平成29年12月20日から施行する。

国立大学法人お茶の水女子大学研究者等行動規範

平成18年9月14日 制定

(平成29年12月20日施行)