グローバル力強化
プログラム
情報発信
ネットワーク
年度計画
活動告知・報告
グローバル力強化

活動告知・報告

ワークショップ リポート


第五回「女性のグローバルな活躍のためのワークショップ」(2013年10月23日)報告

講師    黒田 玲子 氏
             化学者、東京理科大学教授、東京大学名誉教授、2013年度「ロレアル‐ユネスコ女性科学賞」受賞

トークセッションゲスト
          竹原 由佳 氏
             お茶の水女子大学大学院理学専攻(物理科学領域)、2011年「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞
          工藤 まゆみ 氏
             東京農工大学博士研究員、2012年「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」受賞
             ※受賞当時、お茶の水女子大学大学院理学専攻(化学・生物化学領域)

 

ワークショップ5_1 今回の講師は東京理科大学教授の黒田玲子先生です。黒田先生はお茶の水女子大学理学部化学科を卒業後、東京大学大学院で理学博士を取得、ロンドン大学を経て東京大学教養学部で教鞭をとられました。2013年にロレアル-ユネスコ女性科学賞を受賞。また、2013年10月、新設された国連の科学者による政策助言委員に任命されました。東京大学を退官された現在でも、大学院の副専攻である科学技術インタープリター養成プログラムの講義を担当するなど、社会との関わりも重視されています。

 講演の前に、ロレアルが製作した黒田先生の紹介ビデオを視聴しました。短い時間に黒田先生の研究、哲学、教育観が詰まったビデオです。その中で、「自信は自ら作り出すものではない。友人、教官、ロールモデル、メンターから与えられるもの。情熱をもって、あきらめないで、と勇気を与え、励ますことが重要」という言葉が印象に残りました。

ワークショップ5_2 ビデオの後は、いよいよ黒田先生のご講演です。テーマは「研究の醍醐味」。「研究の内容は、専門外の方にとって、とっても難しく見えるみたいです。でも一生懸命、簡単に話そうと努力しているんです」というお言葉から始まりました。まず、背景としてキラリティーの説明からです。右手型と左手型がある物体をキラルであるといい、キラルな性質をキラリティーといいます。分子の右型、左型で、薬効や味が異なることがあるなど、身近な例を出して説明します。また、生体分子はホモキラルで、例えばDNAはD-デオキシリボースのみ、タンパク質はL-アミノ酸のみで構成されています。キラルな化合物の原理をわかりやすく説明する、先生が自分で考えたという「靴と靴下の原理」も登場しました。


ワークショップ5_3 黒田先生の研究テーマは「カイロモルフォロジー(Chiromorphology)」。実はこの単語、Chiral(キラル)とMorphology(形態)を融合させて、黒田先生が作った造語だそうです。キラリティーを切り口に、ミクロとマクロ、生物界と非生物界のリンクを探る学問で、未開拓の分野を切り拓く新しい概念、新しい分野を作ろう、と研究を始められたそうです。分子カイロモルフォロジー、生物カイロモルフォロジーの二本立てで進めています。分子カイロモルフォロジーでは、分子間相互作用の強い固体に焦点を当てています。固体状態でのキラリティーを測定する新しい装置が必要だから、と自分たちで装置まで作ってしまったというお話には驚きましたが、「世界で他に誰もできない研究をするためには、自分で装置を作るしかなかった」という言葉になるほど、と思いました。これまで左右分割が困難とされていた分子の左型のみの結晶化や、2-3種の結晶を共粉砕すると、通常の溶液からの結晶化とは異なる結晶ができることなど、多くの成果を出されています。生物カイロモルフォロジーでは、巻貝が右巻きまたは左巻きになる過程の分子レベルでの理解と、巻型決定遺伝子の同定を目指されているそうです。生物の研究はゼロからのスタートで、巻貝大量飼育システムの開発から始め、多くの苦労を経て、教科書にも記載されている通説を、覆すような発見をされたのです。この成果はScience誌で“excite and elegant”と評され、「エレガントと言ってもらえてとても嬉しい」とのことでした。研究についてとても楽しそうにお話しされる黒田先生ご自身も、エレガントで素敵です。ワークショップ5_4

 黒田先生は固体化学、分光装置開発、発生生物学となぜ幅広く研究できるのでしょうか。ご自身による分析では、「私は好奇心がいっぱいだから」「適度に恵まれていなかったから」とのことです。後者はどういう意味なのでしょうか。「たとえば、装置がなければ他に借りに行くことになり、そこで新しいことを学べる」ということですが、夜や土日に他の研究室に行って分子生物学の手法を学んだというお話を聞くと、他の人がしていない努力を積み重ねることが成果につながっていると感じました。

 黒田先生の講演後は、日本ロレアル株式会社の船津利佐さんから、ロレアル社の女性科学者支援の取り組みについて紹介がありました。


ワークショップ5_5

 さて、後半は黒田先生と若手女性研究者とのトークセッション~お茶大・先輩後輩トーク~です。パネリストはロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞を2012年に受賞した工藤まゆみさん、2011年に受賞した竹原由佳さんです。工藤さんの専門は有機化学で、2013年3月に大学院博士課程を修了し、現在は東京農工大学で博士研究員をされています。博士2年次にフランスへ留学しました。竹原さんの専門は物理で、現在大学院博士課程3年に在籍し、来年度から外資系計測機器メーカーで技術コンサルティング業務をされるそうです。フランス、アメリカへの留学経験があります。お茶の水女子大学副学長の鷹野景子先生の司会で、皆さんが外国へ行って驚いたこと、研究の仕方の違い、海外経験で役立ったこと、と留学に関する質問を中心に進められました。工藤さんは、フランスの方々はお休みをとるために一生懸命に働く、ということに驚くなど、異なる環境に身を置くことで、物事を違った視点で見ることができるようになったそうです。竹原さんは、人はそれぞれ違っていて当たり前なのだとわかり、自分の価値観が絶対だとは思わなくなったということです。3人ともロレアルの賞を受賞されていますが、「受賞がどのようにプラスになった?」という質問には、アカデミックの仕事を続けたいというモチベーションになった(工藤さん)、外から客観的に評価してもらったことで、自信がついた(竹原さん)というお答えでした。またお二人とも、一緒に受賞した仲間たちから良い刺激も受けられたそうです。黒田先生は、ワークショップ5_6いろいろな人のおかげで研究を続けてこられたので、その成果を賞という形で見せることができて、その人たちにお礼が言えたのが一番嬉しかったということです。今後、研究費がもらいやすくなるかな、とも思ったとか。また、黒田先生から聴衆へ、「何かが上手くいかなくて人に相談するときは、まずは自分で一生懸命考える。こうしたら良いかな?と考えてから相談すると、助けてもらえる。何事にも情熱をもって!」というメッセージをいただきました。最後に、グローバルに活躍す るために必要なことを伺いました。物事を先入観で見ない、自分と違うものでもウェルカムと思うこと(竹原さん)、まず自分でグローバルを体験して、その体験をどう生かしていくか考えること(工藤さん)、そして黒田先生からは、「そんなことはわからないよ、まず飛び 出してみなければ!」。

 それぞれの経験をもとにした貴重なアドバイスをいただき、第五回のワークショップは幕を閉じました。



一つ前のページに戻る

お問合せ

 お茶の水女子大学
 グローバル人材育成推進センター
 担当 石田・細谷・玉村
 TEL:03-5978-2734・2736
 E-mail:wgws■cc.ocha.ac.jp
 ※ ■ は @ に置き換えて下さい