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ワークショップ リポート


第三回「女性のグローバルな活躍のためのワークショップ」(2013年6月25日)報告

講師    上野 きより 氏
          国連世界食糧計画(WFP)エチオピア国事務所 Donor Relations Officer

  

 今回の講師は、国連世界食糧計画(WFP)エチオピア事務所Donor Relations Officerの上野きよりさんです。任地から一時帰国されている機会を利用して、ご講演いただけることになりました。現役で海外で働いていらっしゃる方からの、貴重なお話がうかがえたワークショップでした。

 ご同行いただいた、国際機関人事センターの神谷直子さんとの息の合った二人三脚で、ワークショップは進んでいきます。冒頭に神谷さんから、国際機関での就職を考える学生たちのために簡単な情報提供があった後、いよいよ上野さんの講演へ。まずは、上野さんの学生時代のお話です。将来は国際的な仕事をしたいと熱心に英語の勉強を続け、一年間の海外ホームステイも経験した高校時代、彼氏に夢中で少し英語はお留守になってしまったけれど、新聞記者になりたいという夢を見つけて突き進んだ大学時代・・・そして望み通り新聞社に就職。しかし、それならば英語で記事が書けるようなグローバルな記者になろうとさらに上を目指し、退職してアメリカに留学した大学院時代。時には悩んだり、脇道に逸れたりしながらも、強い意志をもって前へ進んでいった学生時代の上野さんの姿が描き出され、その学生時代まっただなかの聴衆の皆さんは、大きく感銘を受けたようです。「転職は繰り返してもいい。ただし、自分が最終的に目指すものを見極め、それに合ったスキルを身につけていくことが大事」「グローバルなキャリアに必要なスキルとは? 1にも英語、2にも英語!」「やりたいこと、やりたくないことをクリアにすること」などと、重要なアドバイスも多く提示されました。転職はOKだけど、一つの職場で3年は我慢した方が、信頼度を築いたうえで次の職場に移れる、そして辞職は、ボーナスが出た後にすべし!という現実的なご教示もありました。アメリカの大学院へ行こうと仕事はやめたが、お父さんが不治の病となってしまい、辛い看病をしながら、それでも病床の脇でTOEFLの勉強を続けた時期の話には、上野さんご自身も涙があふれ、聞く者の胸も痛みました。

 ここで神谷さんの名司会による、中間の質疑応答タイムとなりました。アメリカの大学院での専攻は? 授業料は高くないの? といった、実際に留学を考えている皆さんらしい、実際的な質問が相次ぎました。アメリカの大学院は、日本のように入試があるわけではなく、TOEFLなどのスコアで基準以上を取ることと、なぜその大学院に留学したいのかという意思を表明したレターの提出のみで合否が決められる、という情報が上野さんから提出され、上野さんが書いたレターはどんな内容だったの? という点に興味が集まりました。お答えは、自分は記者だから、英語で記事が書ける国際的な記者になりたい、という明瞭で一貫性のあるレターを書いたけれど、それだけでは足りないとのこと。ほかでもない、その特定の大学院へ行きたいという意思を強く表現するために、上野さんは入学願書を出す前に実際にアメリカへわたって、お目当ての大学院の授業を聴講したり、学生部長と話をしたりして、直接のアピールをしたそうです。海外へ飛び出すには、まず行動力!という上野さんのモットーを、体現したエピソードです。

 講演の後半は、いよいよ就職してから、現在に至るお話です。アメリカの大学院を卒業する直前に、首尾よくAFPへの就職が決まったはいいが、たった4週間で、いきなり理由もわからず解雇されたショッキングな経験をへて、AFPの通信社の一つに拾ってもらい、その後、アメリカの通信社ブルーバーグに就職できて、英語で記事を書く記者になりたいという夢はついに達成。しかし、常に向上心を忘れない上野さんは、もっと社会的な貢献に関わりたい、と考え始め、激務で体を壊して病気療養休暇をとった時間を無駄にせず、ユニセフのボランティアで、東ティモールの人道支援の状況を見に行きます。そしてその経験を基盤に、WFPに転職に至りました。

     

 現在上野さんは、WFPで一番大きなエチオピア事務所にいらっしゃいます。700人のスタッフのうち、日本人は上野さん一人。活動資金を調達してくれている米、英、EU諸国などから来る、難民の数についてなどの多くの質問に回答する事務的な仕事のほか、通称「フィールド」と呼ばれる各地域拠点へ実際に出向いて、食糧を配布する仕事を行っています。現地で撮影した写真のスライドショーを見ながら、給食によって児童の就学率を挙げる貢献をしたり、特に女の子には学校皆勤賞として油などをプラスアルファで提供することによって、現地では軽視されている女子の教育率を高める、また医療関係者に移動手段を提供したりもする、といった、単に食糧提供にとどまらず多方面の社会貢献を行っている、WFPの活動内容を紹介いただきました。


 ここでご講演は終わり、再び神谷さんの名司会による質疑応答時間です。我先にと質問の手が上がりました。今回は男性の聴衆も数名いらっしゃり、WFPの活動について硬派な質問もありました。国連は、女性が働く職場環境としてはどうですか? という質問には、キャリアと女性としての生活の両立が、最もやりやすい職場のひとつ、というお答えが返ってきました。子どもの病気で欠勤、などというケースも、理解をもって受け入れられるそうです。ただし異動が多いので、国連職員同士の結婚か、夫の方が異動についてきてくれる「ポータブル・ハズバンド」でないと、なかなか結婚生活の維持は難しいかも、とのこと。しかし職員は皆、離婚も晩婚もそんなに気にしてはおらず、日本に帰って「その年まで独身ということは、もう結婚せずにキャリア一筋の人生ですね」などと言われると、逆カルチャーショックを受けるそうです。WFPの活動内容について、発展途上国の人々が食糧支援を受けることによって、逆にそれに依存してしまい、自らの生産活動を放棄してしまう恐れはないのか、という質問には、現在のエチオピア始めとした地域は、食糧支援なしには生存があやういというギリギリのレベルなので、支援は必須。しかし、それである程度国の力がついてきたら、取り組み方を変えるというビジョンはある。また、人々が自ら農地整備をすることと引き換えに食糧を提供する、といったやり方も実施している、ということでした。最後に、高校時代から非常に英語の勉強に力を入れられていた、そのモチベーションは何? という質問には、「英語ができれば、日本語だけでは知りえないことを知ることができるから」という、好奇心・向上心にあふれた上野さんならではのお返事が返ってきました。

 ワークショップ終了後も、このワークショップ恒例となった、聴衆の方々が講師のもとに押し寄せての「第二」セッションが、いつ果てるともなく盛り上がり、充実のワークショップとなりました。


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