大学院課程カリキュラム・ポリシー

Ⅰ 大学院の教育課程編成・実施方針

  1. 博士前期課程では、学士課程の教育によって得た成果を発展させて、本学の多様かつ学際的な学術研究を背景とした広い視野に立つ精深な学識を授け、専門分野における研究能力または高度な専門性を有する職業を担うために必要な能力を有する人材を養成する。
  2. 博士後期課程では、高度な専門教育および専門諸分野の基礎に立つ学際的総合研究を行うために必要な創造的能力を有し、研究者として自立して研究活動を行い、あるいはその他の高度に専門的な業務に従事するために必要な研究能力とその基礎となる豊かな学識を有する人材を養成する。
  3. 幅広い視野から自己の研究を位置づけることができるように、既成の専門分野にとらわれない文理融合と学際性を特色とするカリキュラムを編成・実施する。さらに、複数教員による指導体制を確立し、また、副専攻と大学間交流協定を整備することにより、高い専門性に立ちながら豊かな広がりを持つ知の創造に挑戦する研究を実践させる。
  4. 国際性を重視し、海外の研究機関と積極的に連携したカリキュラムを編成することにより、最先端の研究成果に触れる機会を提供すると同時に、多文化の相互理解に立脚した学際的な研究を推進する国際社会で活躍できる能力を養成する。
  5. 社会と連携し、社会的ニーズを視野に入れた教育と研究を行うことにより、社会の変化に敏感でありつつも一貫して真理を探究する姿勢を身につけさせ、社会との間で望ましい知の循環を実現しうる研究者ならびに高度な職業人を養成する。

II 博士前期課程の教育課程編成・実施方針

比較社会文化学専攻の教育課程編成・実施方針

言語文化分野の4コース(日本語日本文学、アジア言語文化学、英語圏・仏語圏言語文化学、日本語教育)と人文学分野の5コース(思想文化学、歴史文化学、生活文化学、舞踊・表現行動学、音楽表現学)において、言語、思想、歴史、芸術を軸とする人文諸科学に関する高度な専門性を構築し、幅広い教養に基づいた学際的で豊かな研究能力を備えた人材を養成するため、専門的であると同時に学際的な視点から、人間の文化活動を通時的かつ共時的に幅広くとりあげ、総合的に探究することを目指す。

(1) 日本語日本文学コース
上代から現代に至る各時代の日本文学、また日本語の歴史と体系について、学士課程教育で得られた知識を踏まえ、より本格的な研究方法を身につけることを目指す。

(2) アジア言語文化学コース
中国大陸、台湾、香港、東アジアなど、中国語圏における言語と文学を対象とする研究方法の習得を踏まえ、幅広いアジア研究を行いうる人材を養成する。

(3) 英語圏・仏語圏言語文化学コース
英語とフランス語、英語圏および仏語圏の文学・文化の理論と実践に関する専門知識と、研究方法論を習得することを目指す。学士課程で身につけた英語およびフランス語の技能をさらに向上させ、高度な運用能力を習得するとともに、学術的な思想を正確に理解し、また発信できる能力を身につける。

(4) 日本語教育コース
講義と演習を通じて、多様な言語及び文化背景を持つ学習者を理解し、彼らのコミュニケーション能力を向上させるための基盤となる言語習得理論や方法、専門性と実践力を持ったグローバル社会の日本語教育専門家を育成する。

(5) 思想文化学コース
哲学、倫理学について専門的かつ体系的知識を習得し、考え方の多様性を知り、考える可能性を拡大するとともに、現代社会の具体的な諸課題をふまえつつ、理論的にまた柔軟に考察する力を養成する。

(6) 歴史文化学コース
多様な史料の読解を基礎とする歴史学の手法を身につけることで、日本、ヨーロッパ、アジアにおける政治経済や社会文化の諸問題を、論理的かつ独創的に解明していく能力を養う。また美術史学の研究方法を高いレベルで体得することにより、視覚文化の批判的な読解を可能にする能力の涵養を目指す。歴史学・美術史学のいずれの分野においても、深い専門性とそれを支える幅広い教養・知識の習得が必須である。

(7) 生活文化学コース
服飾、住居、工芸、デザインなどの生活造形をとりまく文化・歴史を、比較文化論、民俗学、歴史学などの手法によって多角的に探究することにより、生活と文化に関する幅広い教養と視野、および専門的知識と独創的な分析力を備え、生活文化論を人間理解の途として日本の内外に発信できる能力を養う。

(8) 舞踊・表現行動学コース
講義及び演習を通じて舞踊やスポーツなどの表現行動を理論的に分析するための高度な専門的能力を養成し、幅広い教養と表現行動の実践に基づいた学際的で豊かな研究能力の養成を目指す。

(9) 音楽表現学コース
講義及び演習を通じて音楽を理論的に分析し実践するための能力の涵養とともに現場的な感覚の習得を目指し、幅広い音楽の教養を持った人材を育成する。

人間発達科学専攻の教育課程編成・実施方針

  1. 教育科学コース、心理学コース、発達臨床心理学コース、応用社会学コース、保育・児童学コースの5つのコースで構成されている。これらのコースのもとで、経験科学的方法論の基礎を習得するとともに、社会的・心理的諸病理の解決を目指した実践的課題意識に基づいて、社会−人間−発達を総合的・有機的に結びつける理論を身につける人材を育成する。
  2. 人間発達分野での社会的必要性の高い諸問題の解決を図る研究能力と、指導的な高度専門的職業人としての能力を身につけた女性研究者の育成をめざす。
  3. 本専攻では、研究領域の結集のみならず、本専攻の理念である学際性を身につけた女性研究者・人材の養成を目指す。博士後期課程への進学を主眼とした、人間発達科学と社会科学との相互理解を備えた女性人材のほか、教育科学、心理学、社会学等を専門とし、実践力を身につけた公務員や研究員、臨床心理士や社会調査士等の資格を備えた人材、保育・児童学の知識と方法論を身につけた児童相談所等の育児・教育アドバイザー、および政策能力・実践能力を高めた教職員や教職員指導者などである。
  4.  

(1) 教育科学コース
人間の生涯にわたる発達と教育の過程を、教育思想、教育史、教育社会学、教育方法学・教育課程論、教育開発論、生涯学習論等の多様な研究方法論により科学的に探究する博士後期課程進学者を育てるとともに、諸教育問題の解決に資する高度な専門職業人を養成する。

(2) 心理学コース
心理学における専門的な研究能力とともに、人間の心の問題を多次元的、総合的に分析できる能力を身につけさせ、心理学の高度な専門性を要する職業を担える人材を養成する。

(3) 発達臨床心理学コース
臨床心理学を柱として、発達臨床心理学の研究を行う基礎的な研究能力を養うとともに、家庭、教育,医療,福祉,司法,産業等の様々な場における人々の心理臨床,発達的問題について専門的に対処する力を養成するのに必要なカリキュラムを設置する。なお、本コースは、(財)日本臨床心理士認定協会の第1種指定校であり、資格認定のために必要なカリキュラムを設置する。

(4) 応用社会学コース
社会学の基礎的な研究能力とともに、社会の諸問題(家族、コミュニティ、格差と排除、法、コミュニケーション、福祉等)を学際的視点をふまえつつ社会学の方法を用いて解明し、研究活動もしくは高度な専門性を有する職業活動を通して、それらの諸問題の解決に寄与し得る能力を有する人材を養成する。

(5) 保育・児童学コース
保育・児童学領域の研究者、もしくは研究者的な視点を有する実践者として、家庭、保育・教育現場へ有効な支援を行える人材、そのような支援のあり方を研究する人材を育成する。

ジェンダー社会科学専攻の教育課程編成・実施方針

  1. 社会学、法学、政治学、経済学、開発学、地理学、環境学、文化人類学等の社会科学諸分野の研究方法論とジェンダー視点に立つ分析とを結びつけることにより、新たな問題領域を解明する研究を行うことを特色としている。
  2. 家族、労働、経済、法政策、社会運動、国際関係、開発、地域研究、自然及び社会環境、テクノロジー、福祉、医療 空間、国際移動などの領域に関わる研究力を培うことにより、男女共同参画社会の構築やグローバル社会のもとで国際的な活動に貢献できる人材を養成することに主眼を置いている。
  3. 学生が研究テーマを多元的・複眼的に考察する上で有効であるように、3コースにまたがって演習等を履修することも可能であり、かつテーマによっては副指導教員を他コースに求めることもできる。
  4. 修士論文に関しては、当該分野の研究の前進に寄与しうる高度な研究成果を生み出すことができるよう、主指導教員を中心としながら、コース所属教員全員、また必要に応じてこれに他コース教員も加わった指導体制のもとで、段階的・系統的に研究指導を行う。

(1) 生活政策学コース

  • ①市民生活や家族生活、消費、労働、女性や男性の生き方をめぐる諸課題を、社会科学の理論と方法論をもって解明し、問題解決に向けて提案しうる力量の涵養を目指す。法学・政治学・経済学・社会学の基礎から応用にわたる分析手法を身につけるとともに、ジェンダー視点を織り込んだ課題設定を行うセンスを養うことを重視している。
  • ② 学生が自ら選択した研究テーマにつき、幅広い視野を養うとともに先端的な研究成果を吸収することが可能となるよう、専攻共通科目とコース必修科目を基軸として、法学・政治学・経済学・社会学の多様な授業科目を設けている。

(2) 地理環境学コース

  • ① グローバル化にともない変容する空間・地域・環境をめぐる諸問題を、人間・環境関係、社会経済の空間性、人間の移動とコミュニティ、健康・福祉、日常生活における場所の感覚やアイデンティティなどの視点から研究する力を養成する。
  • ② 学生が自ら選択した研究テーマにつき、教員の指導の下に作成した研究計画に基づき主体的に研究活動を進めることを基本とし、フィールドワーク、観測、GIS、統計分析などの研究方法を習得するため、専攻共通科目とコース必修科目を基軸として、地理学、環境学、国際政治学、開発学などの多様な講義・演習・実習科目を設けている。
  •  

    (3) 開発・ジェンダー論コース

    • ① 従来の学問研究にジェンダーの視点を導入し、新たな学際的研究の可能性を追求するカリキュラム内容となっている。理論的分析に加え開発や国際協力など応用分野を含めた、多様な関心と能力を持った学生を育成することを目指す。
    • ② 学生が自ら選択した研究テーマを中心に、ジェンダー研究と開発研究の幅広い視野を養うとともに先端的な研究成果を吸収することができるよう、専攻共通科目、コース必修科目に加えて、ジェンダー概念の成立やジェンダー研究の基礎となる科目群、開発研究や国際研究とリンクする科目群、ジェンダー政策やグローバル経済研究に関わる科目群、研究方法論/実践論の科目群などで構成されている。
    • ③ 行政、NPOなど男女共同参画社会づくりや「ジェンダーと開発」分野で国際協力に将来携わること、より理論的、方法論的な知識を深めジェンダー視点からの社会分析を将来継続することなど、修了後の社会実践や研究活動とのリンクを常に意識してカリキュラムが設定されている。

ライフサイエンス専攻の教育課程編成・実施方針

理学、工学、生活科学の学問領域の有機的な統合をはかるため、理学部学士課程、および生活科学部学士課程の教育成果を統合、発展させ、ライフサイエンス全般の広い視野に立って人間を生命、生活の両面から捉える能力を培う。このために、下記の方針に基づいて教育課程を編成し実施する。

  1. ライフサイエンスの基礎から応用までを幅広く理解し、ライフサイエンスの諸分野における研究、または高度な専門性を必要とする職業を担いうる人材を養成する。
  2. ライフサイエンスに関する研究計画を遂行するため、研究実施能力、研究の妥当性に対する判断力、文献調査能力等を育成する。
  3. 連携機関との教育研究交流を図り、より先端的な研究、社会との密接なつながりを意識させるとともに、さらに幅広い視野を養う機会とする。
  4. コース横断的講義であるライフサイエンス論を必修とする。また、主指導教員と副指導教員による複数指導体制のもとで、修士論文、または遺伝カウンセリングコースにあっては修士論文に代わる特定の課題についての研究報告を作成する。
  5. (1) 生命科学コース
    今や生命科学を理解し応用することは、人間社会のあらゆる局面において必須の教養かつ技法であるとみなされている。生命科学コースでは、それに応えるための研究と開発を担う高度専門職業人を養成する。そのために本コースでは、生きているもの全てを対象に、生きているということはどういうことなのかを明らかにするための基礎的な研究を行いつつ、バイオテクノロジーに至るまでの広い領域の科学と技術を修める。また本コースでは、初等中等の理科教育や科学コミュニケーションの領域で活躍する人材養成も目指している。以上の観点に基づき、選択科目と修士論文作成のためのコース科目群を編成し実施する。

    (2) 人間・環境科学コース
    人間生活を中心に環境に関する諸問題を扱うとともに、生物としての人間の特性・生命生理メカニズム、あるいは、人間の身体と環境との相互作用について研究を行うことを目的とする。そして、人間と環境の境界領域(インタフェース)の本質を、人間および環境の視点から科学的・工学的に捉えることができ、かつ、我々の生活を向上させるためのインタフェースの改良方策を具体的に提案する能力を有する人材を養成することを目指す。以上の観点に基づき、修士論文指導を中心としたコース科目群を編成し実施する。

    (3) 食品栄養科学コース
    食と栄養に関する基礎研究から応用開発にいたる領域を対象とし、健全な食生活を構築するとともに、食に関する疾病や、食の安全性などの問題を解析・解決することを目的とする。そして、食や栄養に関する基礎的研究から応用開発や臨床対応までを担うことができる、食品企業の研究者や開発者、管理栄養士のリーダーなどの「食のスペシャリスト」を育成する。以上の観点に基づき、修士論文指導を中心としたコース科目群を編成し実施する。

    (4) 遺伝カウンセリングコース
    医療保健の場において疾患の遺伝学的関与の医学的影響、心理学的影響および家族への影響を理解し、かつ、適応していくことを支援する遺伝カウンセリングを実践できる、高度な専門性を有する職業人を養成する。さらに、その実践に必要な「エビデンスを明らかにするための遺伝カウンセリング研究」をおこなうための基礎を学ぶ。カリキュラムは、専門職としての認定遺伝カウンセラーの資格取得の要件に従うよう編成される。遺伝医学の基礎となる最新の生命科学、人類遺伝学、ゲノム医科学、専門職として必要な医学についての基礎知識、医療面接、臨床遺伝学、遺伝カウンセリングの基礎と演習を必修として学び、連携している医療機関における遺伝カウンセリング陪席実習を行い、コミュニケーション能力とチーム医療の概念の理解できる能力を養成する。また修士論文に代わる特定の課題研究によって、論理的科学的思考、遺伝カウンセリング研究の基礎を習得する。

理学専攻の教育課程編成・実施方針

学士課程での基礎的科学体系の習得に基づき、数学、物理科学、化学・生物化学、情報科学の分野における研究者・技術者・高度職業人に必要とされる専門的知識、研究手法を身につけることを目標としている。その実現に向け、それぞれの分野の特徴に合わせて、特別研究を中心に、講義、演習、実験などからなるカリキュラムを用意している。

(1) 数学コース
大学院生各自が、大学において習得した基礎的素養の上に、解析学・幾何学・代数学それぞれの分野における専門性を高めるための講義・演習(セミナー)が用意されている他、同時に他分野への多様な理解も養うための科目も必修科目として設けられている。論理的問題解決力を育てることに加え、問題を研究し本質を見極め整理する能力を養うことが目的となる。

(2) 物理科学コース
学士課程で身につけた基礎的な物理科学的方法論を発展させ、最先端な専門的知識と理論的な研究手法を身につけることにより、物理科学的な専門分野に柔軟に対応できる研究者ないしは高度職業人・教育者を養成することを目的とする。その実現に向け、宇宙・素粒子・物性理論・物性実験の広範な範囲をカバーする専門的な研究・教育環境での特別研究を中心に、学内外の専門家による講義、演習などからなるカリキュラムを用意している。

(3) 化学・生物化学コース
化学・生物化学の分野は、原子・分子をなかだちとして自然科学のあらゆる分野と密接に協力して発展する学問領域であることを鑑み、学士課程での基礎的科学体系の習得に基づき、化学・生物化学分野における研究に従事するための専門的知識、研究手法を身につけることのみならず、関連する分野への展開力を身につけることを目標としている。その実現に向け、それぞれの分野の特徴に合わせて、特別研究を中心に、講義、演習、実験などからなるカリキュラムを用意している。

(4) 情報科学コース
学士課程での基礎的科学体系の習得に基づき、情報科学分野における自立した研究者あるいは高度職業人として成長することを目指す。その実現に向け、情報科学としての基礎理論および技術をさらに深化させる充実した講義、演習などからなる充実したカリキュラムを用意し、習得した知識に基づいて特別研究を遂行する。

III 博士後期課程の教育課程編成・実施方針

比較社会文化学専攻の教育課程編成・実施方針

人間・社会・文化のありように対応した人間理解・社会把握・文化構造の再考と、それに伴う領域横断的な視野を備え、多文化の相互理解に立脚した学際的・国際的な研究を推進する高度な研究者、専門職業人を養成する。このため、前期課程の9コースを再編成した4領域(国際日本学、言語文化論、比較社会論、表象芸術論)において、前期課程からの一貫した教育指導を受け、専門知識の深化を図るとともに、領域横断的な創造的能力を涵養することを実践する。さらに、海外の協定校と共同で開催する国際学会のほか、学生の海外派遣プログラムもあり、海外での調査研究や研究発表の機会が与えられる。とりわけ平成22年度より開始したロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)とのダブル・ディグリープログラムを特筆しておく。  

(1) 国際日本学領域
国際的視野のなかで日本研究を進め、文学・言語学・歴史学・考古学・思想・文化・身体論の総合学としての日本学を、世界に発信する人材を養成する。それぞれの専門分野において高度な研究を進めるとともに、専門性を踏まえての学際的な関心のもとに総合的な知識を習得し、積極的な研究交流を行う能力を涵養する。

(2) 言語文化論領域
講義と演習を通じて、中国語圏・英語圏・仏語圏・独語圏の文学/文化表象及び批評理論の追求と、言語学及び日本語教育を含めた言語教育論の研究・教育を推し進め、各国文学・言語の専門的知識を深めつつ、それらを横断する研究視点を育成し、言語を介した現代の文化・批評の機能を、国際協力の面からも積極的に開発・提言する人材を育成する。

(3) 比較社会論領域
哲学思想・歴史からスポーツまでを対象に、日本・アジア・欧米・イスラムの諸地域を相互に比較横断する研究を推し進め、過去の思想・歴史を踏まえつつ、現代社会が要請する新しい人文科学の創成に寄与し、平等と自由の理念の実現を希求する人材の育成につとめる。それぞれの専門分野において高度な研究を進めるとともに、専門性を踏まえての学際的な関心のもとに総合的な知識を習得し、積極的な研究交流を行う能力を涵養する。

(4) 表象芸術論領域
美術・工芸・服飾・舞踊・音楽、および博物館学を主な対象とし、文化表象・表現を多方面から、舞踊・音楽においては実践と理論の融合を図りつつ、専門的かつ横断的に批判的分析・追究する能力を養う。表象芸術に関する幅広い知見と専門知識、独創的な分析力をもち、表象芸術論を人間理解・国際協力の媒介として社会に提言することに意欲をもった人材を養成する。

人間発達科学専攻の教育課程編成・実施方針

  1. 教育科学領域、心理学領域、発達臨床心理学領域、社会学・社会政策領域、保育・児童学領域の5つの領域で構成されている。これら5領域のもと、人間の心の発達と社会環境の発達に関わる幅広い学問領域を結集して、広い視野から学際的・総合的に教育研究を行うことを目指す。
  2. 人間発達分野での社会的必要性の高い諸問題の解決を図る研究能力と、指導的な高度専門的職業人としての能力を身につけた女性研究者・人材の育成を目指す。
  3. 以上を実現するために、博士論文指導を中心とした科目群を編成し実施する。

(1) 教育科学領域
人間の生涯にわたる発達と教育の過程を、教育思想、教育史、教育社会学、教育方法学・教育課程論、教育開発論、生涯学習論等の多様な方法論により科学的に探究するとともに、専門的研究者として自立できる研究能力と、指導的な高度専門職業人としての能力を身につけることのできる女性研究者を育成する。

(2) 心理学領域
心理学における高度な研究能力や、人間の心の問題に関する優れて多次元的、総合的な分析力を身につけさせ、自立した研究者として創造的な研究を推進できる人材を養成する。

(3) 発達臨床心理学領域
発達臨床心理学の教育および研究を行うのに必要なカリキュラムを設置する。臨床心理学を柱として、家庭,教育,医療,福祉,司法,産業等の様々な場における心理臨床的,発達的問題について専門的に対処する力を養成するとともに、発達臨床心理学の研究を行う高度な研究能力を養うのに必要なカリキュラムを設置する。

(4) 社会学・社会政策領域
社会学を中心に、経済学、法学などを含む社会科学を基礎学問として、グローバルな視野をもって公共政策上の課題を含む社会の諸問題を解明し得る専門的研究能力を身につけ、研究者としての自立的・創造的な研究活動、もしくは高度な専門性を有する職業活動を通して、社会の諸問題の解決において主導的な役割を果たす人材を養成する。

(5) 保育・児童学領域
保育・子育て等の現場で生じている多様な問題を、個々人の発達や心理、現場における相互作用のあり方、それを取り巻く社会や歴史的経緯と関わらせて多角的に分析・理解し、問題解決を図ることのできる、高度な専門知識と実践能力を備えた研究者、実践者を育成する。

ジェンダー学際研究専攻の教育課程編成・実施方針

(1) ジェンダー論領域

  • ① 家族、労働、人権、教育、開発援助、経済、法政策、国際関係、地域計画、環境、科学技術、福祉、医療など、幅広い研究対象についてジェンダー視点を中心とした研究を行う。指導教員のもと研究を深化させるとともに、学問領域を超えてジェンダー課題を中心に取り組む。
  • ② 博士論文の完成に向けて、年次ごとに定められた研究計画書、研究報告書を提出する。また、主指導、副指導教員による段階的指導を行う。学生は、学会発表、学会誌への投稿、学内外の研究活動への参加などを通じて、計画的に成果をあげることが求められる。

ライフサイエンス専攻の教育課程編成・実施方針

  1. 理学、工学、生活科学の学問領域の有機的な統合をはかり、ライフサイエンス全般の広い視野に立って人間を生命、生活の両面から捉える能力をさらに発展させる。
  2. ライフサイエンスの基礎から応用までを幅広く理解し、ライフサイエンスの諸分野において研究者として自立でき、また指導的役割を担いうる人材を養成する。
  3. ライフサイエンスに関する研究課題を設定し、研究計画を遂行し、研究成果を発表することを必要とする。そのため、独創性と先端性に優れた高度な研究実施能力、研究の妥当性に対する判断力、文献調査能力、発表能力等を育成する。
  4. 連携機関との教育研究交流を図り、より先端的な研究、社会との密接なつながりを意識させるとともに、さらに幅広い視野を養う機会とする。
  5. 主指導教員と副指導教員による複数指導体制のもとで、学位論文を作成する。

(1) 生命科学領域
人類の将来に大きな影響を与える生命科学領域を、先導して切り拓ける研究者および開発者を養成する。目指すべき人材像は、先端領域において自立的に研究と開発ができ、かつチームのリーダーとして、そのミッションを具現化できる指導者である。そのような資質を育成するために、指導教員と日常的に議論を行いつつ、周辺関連領域の教員にも指導を仰ぎ、学外における研究会などにも積極的に参加できるカリキュラムを編成する。また、研究だけでなく教育分野においても先導的な立場で活躍できる人材を養成することが、本領域の目的である。以上を実現するために、博士論文指導を中心とした科目群を編成し実施する。

(2) 人間・環境科学領域
生活している人間とその環境との関係を明らかにした上で、その環境が人間にとって合理的、快適なものとなるよう、設計・制御を行うことを目的とする。人間と環境の境界領域(インタフェース)の本質を人間及び環境の視点から科学的・工学的に捉えた上で、我々の生活を向上させるためのインタフェースの改良方策を具体的に提案できる人材を育成する。本領域における学際的総合研究を行うために必要な創造的能力を養うとともに、自立した研究者を育成する。以上の観点に基づき、博士論文指導を中心とした科目群を編成し実施する。

(3) 食品栄養科学領域
食に関する基礎研究から応用開発にいたる領域を対象とし、健全な食生活を構築するとともに、食に関する疾病や、食の安全性などの問題を解析・解決することを目的とする。食や栄養に関する基礎的研究から応用開発や臨床対応までを担うことができる、大学や公的研究機関の研究者、管理栄養士のリーダー、栄養士や管理栄養士養成校の教員などの高度な「食のスペシャリスト」を育成する。以上の観点に基づき、博士論文指導を中心とした科目群を編成し実施する。

(4) 遺伝カウンセリング領域
遺伝の課題を有する人々に、遺伝カウンセリングをより良く還元するためのエビデンスを明らかにする研究者、および遺伝カウンセリングの指導者を養成する。博士前期課程までに修めた成果をもとに博士後期課程での医療機関での実習から、あるいは認定遺伝カウンセラーとしての実務経験から、遺伝カウンセリングにおける未解決の課題を探求する能力を養成する。自身の研究の発展に加えて、遺伝カウンセリング関連の研究会、研修会において継続的にファシリテーターなどの指導的役割を担う。さらに遺伝カウンセリングの広く社会への啓発のための活動、認定遺伝カウンセラーのプロフェッショナリズムの発展に尽くす。

(5) 疾患予防科学領域
疾患予防分野における幅広い教育を実践することで鳥瞰的な視点を授けるとともに、個々の遺伝情報と疾患予防関連情報の解析手法と利用方法、倫理的な対処方法、産業への活用方法を念頭に置いた教育を行う。医学、歯学、薬学、食品学、情報学、統計学の概略を把握する能力を育成する。個々の遺伝情報と医療機器・各種デバイスから生み出される大量の情報を解析する能力を育成する。個人情報の取り扱いに関する社会的な課題と対処する能力を育成する。マネジメント概論・コミュニケーション論を学び研究開発を牽引できる能力を育成する。

理学専攻の教育課程編成・実施方針

博士前期課程で習得した科学的研究手法に基づき、数学、物理科学、化学・生物化学、情報科学の分野におけるより高度な研究に従事し、学位を取得し、自立した研究者・技術者・高度職業人として成長することを目標としている。その実現に向け、それぞれの分野の特徴に合わせて、特別研究、論文指導、研究指導などからなるカリキュラムを用意している。

(1) 数学領域
博士前期課程までに養われた知識と能力を土台として、純粋数学あるいは数学の応用として学際性を有する横断的な分野の発展的研究を目指したより高度な指導を行うために、各講義に付随する演習を設けることにより、問題の立案、研究解決、その結果を整理し論文にまとめるという一連の作業が連続的に行えるようなカリキュラム構成を採用している。最終目的は博士論文の提出と学位の取得である。  

(2) 物理科学領域
博士前期課程で習得した物理科学的研究手法に基に、最先端の研究を行うことにより、物理科学およびその関連分野において、自ら問題を設定し解決する能力を身につけ、これからの物理科学・物理工学分野を牽引する若手研究者を育成する事を目的とする。このために、グローバルかつ最先端の研究設備を駆使した研究環境を提供し、その成果を内外に公表するための、特別研究、論文指導、研究指導などからなるカリキュラムを用意している。

(3) 化学・生物化学領域
化学・生物化学の分野は、原子・分子をなかだちとして自然科学のあらゆる分野と密接に協力して発展する学問領域であることを鑑み、博士前期課程で習得した化学・生物化学的研究手法に基づき、化学・生物化学分野におけるより高度な研究に従事し、学位を取得し、自立した研究者として成長することのみならず、当該分野が関わる多様な分野を主導する人材として足る能力を習得することを目標としている。その実現に向け、それぞれの分野の特徴に合わせて、特別研究、論文指導、研究指導などからなるカリキュラムを用意している。

(4) 情報科学領域
博士前期課程で習得した情報科学的研究手法に基づき、情報科学分野におけるより高度な研究に従事し、学位を取得し、自立した研究者あるいは高度職業人を養成する。情報科学分野に新しい知見を提供するための研究課題を遂行するために、充実した研究指導、論文指導からなり特別研究を遂行するカリキュラムを用意している。

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