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平成25年度A-WiLシンポジウム「女性、仕事、リーダーシップ —Make a Difference的生き方の実践—」を開催しました

2014年1月21日(火) A-WiLシンポジウム(※) 「女性、仕事、リーダーシップ -Make a Difference的生き方の実践-」(お茶の水女子大学主催)を開催しました。当日は、本学の学生、一般の方あわせて約100名の来場者を迎え、会場はほぼ満席となりました。

女性リーダー育成事業の一環として2011年度から始まったA-WiLシンポジウムでは、教育を通じた女性のリーダーシップ養成の可能性をさまざまな側面から討論しています。一昨年、第一回のテーマは、「未来を創造する大学—20歳のミッション:未来から創造する“今”」であり、昨年、第二回のテーマは「グローバル女性リーダーが未来を創る」でした。2回のシンポジウムを通じて、本学の学生や卒業生が女性リーダーとしてより積極的に活躍し得る可能性を示しました。第三回となる今年のテーマは「女性、仕事、リーダーシップ—Make a Difference的生き方の実践—」です。これは、過去2回のテーマで論じてきたことを振り返りながら、あらためて女性にとっての人生や仕事、それらを通じてのリーダーシップの発揮について議論し考えることを意図しています。

本学には「みがかずば」と呼ばれる校歌があります。歌詞は全文で「みがかずば 玉もかがみも なにかせん 学びの道も かくこそありけれ」というもので、学問の道を究めるため常に努力を怠らない姿勢を、宝石や鏡を磨くという行為になぞらえています。この精神の醸成はお茶の水女子大学の教育理念の根幹を成しており、本シンポジウムの副題にあるMake a Differenceとは、この「みがかずば」の精神を、本学のリーダー育成理念に具現化したものです。「ひとりひとりが一歩を踏み出すことで、自分自身、そして身近なところから社会までも変えていく。常に問題意識を持ち、自ら積極的に周囲に働きかけ、社会に変革をもたらす、新しい時代のリーダーとなることを目指す。」このようなリーダーシップについての考え方を表しています。

※「A-WiL」とは、お茶の水女子大学の事業「女性リーダーを創出する国際拠点の形成」(文部科学省特別経費 平成22年度〜平成27年度)の英語名「International Research Program for the Advancement of Women in Leadership」の略称です。


開催報告

【資料映像上映】
シンポジウムでは、「みがかずば」の精神に基づくリーダーシップの実践を考えるために、特に女性の意識や内面性、そしてそれらを形成する社会的通念や文化的刷り込み(社会化)に焦点を当てました。まず、女性が責任ある地位に就く際に感じる「壁」や困難について、それらを会場で共有化するため、近年注目されている米フェイスブックCOO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグ氏によるTED講演「何故女性のリーダーは少ないのか」を上映しました。


【学長の宣言・ごあいさつ】
上述の本学の教育理念とリーダーシップ発揮の方法について、具体的に議論する機会にしたいという羽入学長の宣言により、シンポジウムはスタートしました。文部科学省文部科学審議官の板東久美子氏によるご挨拶の後、主題であるパネルディスカッションが始まりました。



パネルディスカッションの様子


パネルディスカッションの様子


パネルディスカッションの様子

【パネルディスカッション】
このパネルディスカッションの登壇者は、全員本学の卒業生・修了生です。モデレーターを務められた野村浩子氏(日経BP社 日経マネー副編集長、1984年文教育学部卒業)、パネリストの中正由紀氏(八王子市役所都市戦略部自治推進課 課長補佐、1995年大学院人文科学研究科史学専攻修了)、大内まどか氏(友学園女子中学高等学校 教諭・広報部長、1991年大学院理学研究科化学専攻修了)、砂屋敷真衣氏(富士フイルム株式会社ライフサイエンス事業部マーケティンググループ マネージャー、1987年家政学部家庭経営学科卒業)、武石恵美子氏(法政大学キャリアデザイン学部 教授、2001年大学院人間文化研究科人間発達科学専攻修了、博士(社会科学))、以上5名の方々が、キャリア形成をする上での「内なる壁」や、その「内なる壁」をどう乗り越えてきたか、「壁」を乗り越える原動力となったものや、リーダーとなって見えてきたこと・次に目指すものについて、討議を深めました。

パネリストによる討論の後、冒頭に上映したTED資料映像に登場したシェリル・サンドバーグ氏から、今日のシンポジウムのために特別に寄せられたメッセージが紹介されました。そのメッセージの中で、サンドバーグ氏は、「たゆまぬ努力とサポートがあれば、女性は様々な重圧から解き放たれ、誰もが自らの可能性を十全に開花させ、職場と家庭の両方において満足を見出すことができる」と述べ、「有能な女性が職場にとどまり、リーダー的な存在となるために努力すれば、よりよい、より公正な社会が実現するでしょう」と励ましのことばを寄せられました。

その後質疑応答に移り、会場の女子学生や男性からの質問に対し、パネリスト4名がそれぞれの立場から、個性ある回答を述べ、中身の濃い対話が交わされました。

以下、これらパネルディスカッションの内容について、参加学生2名による報告文を掲載します。


参加学生による報告(田村りつ子(ライフサイエンス専攻、M1))

今回のA-WiLシンポジウムでは、女性が自分のライフスタイルを確立し、かつ職場でリーダーシップをとるためにどのように壁を乗り越え生きていくべきか、ということをパネリストの皆様の体験談なども交え、討論しました。子育てと仕事の両立に対する葛藤や不安、職場のリーダーは女性ではなく男性が担うべきであるといった先入観など、女性の「内なる壁」はどのような環境にも存在し、その壁を乗り越えるためには自分自身の努力だけではなく、職場の上司や同僚、両親などのまわりの人々のサポートが不可欠であると感じました。また、パネリストの方々から共通して感じたことは、仕事に対する熱意と強い意志です。異なる職種であっても仕事への情熱、子育てと仕事を両立していくことに対する強い意志が非常に重要であり、女性が社会で活躍していくための原動力となっていくように思います。シンポジウムの冒頭ではシェリル・サンドバーグ氏のTEDでの講演映像が上映され、女性が積極的に一歩を踏み出す重要性が強調されていましたが、今回のシンポジウムに参加して、力強く引っ張っていくだけがリーダーシップなのではなく、常にまわりを気遣い、一歩引いてサポートしていくという姿も女性ならではのリーダーシップであると感じました。

男尊女卑が当たり前のように認められていた時代とは違い、現在は国家レベルでの女性リーダーの育成や社会における女性の活躍が求められています。しかし、無意識の内に刷り込まれた女性の内なる壁が存在することは事実であり、子育て支援や様々な制度があるにもかかわらず仕事を辞めてしまう女性が多いのも確かです。私は今回のシンポジウムに参加し、その内なる壁を自ら意識的に変えていくことが重要であると感じ、自信を持って一歩を踏み出していきたいと思いました。


参加学生による報告(水戸晶子(理学専攻、M1))

4人のパネリストの方が「内なる障壁」をどのようにして乗り越えてきたかについてのお話で、「壁」を乗り越える原動力となったものとして、家族や学校など周りの環境が与える影響がとても大きかったということが印象に残りました。具体的には、「両親が働いていて、女性が子育てをしながら働くことが当たり前だった」「やりたいと思ったことを全部やらせてくれた」「女性の教員が圧倒的に多い学校だった」などです。私がこのような部分に強く引き込まれたのは、自分自身は家庭で「女性も自立すべき」「やればできる」と言われて育った一方、小学校高学年から高校時代を、女性の活躍に対して保守的な考えが残る地域で過ごしたからだと思います。私自身、女性がリーダーになろうとするときに、足を引っ張ろうとする人がいる、快く思わない人がいる、ということを経験してきました。そのような地域で育ち、かつ家族もそのような考えだった場合、子供は「女性がリーダーになることは好ましいことではない」と考えてしまうようになると思います。女性リーダーを育てるためには、まずは子供たちが「内なる障壁」を持たないようにする家庭や学校での教育、また地域の大人の意識改革が重要でしょう。冒頭に見たシェリル・サンドバーグ氏の言葉にもありましたが、「今はまだ女性のトップを50%にすることができなくても、将来の世代ではできる」ことを信じて、地域、社会に働きかけていくことが必要だと感じました。最後に、お茶大の先輩でもあるパネリストの皆さんから「違う意見を持った人にも心を開く」「自分の幅を広げ、他の人の力を理解する」「自分で決める」「周りに影響を与え、社会を変える力になる」というリーダーを目指す人へのメッセージをいただきました。女性が多く活躍できる社会を目指して一人一人が変わっていくことが重要だと感じ、自分もそのために努力していこうと思いを新たにしました。

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