News & Info

湯浅年子記念奨学基金特別研究員候補者募集

 第二次大戦をはさんだ世界情勢の極めて厳しい時期に、フランスにおいて、イレーヌ&フレデリック・ジョリオ=キュリー夫妻を師とし、原子核物理研究と日仏学術文化交流に生涯を傾けられた湯浅年子先生を記念し、「湯浅年子記念特別研究員奨学基金」が設けられています。フランスとの交流をはかりつつ、自然科学における研究を奨励することを目的として毎年1名の特別研究員候補者を選びます。特に、在学者をはじめとし、将来の自然科学の諸分野を担う若手の応募を期待しています。(この奨学基金は、「湯浅年子先生の碑を建てる会」からの寄附等を基金としています。)

内容: A)研究奨励金:フランス滞在中の研究費として30万円を授与する。
B) フランス大使館へ、フランス政府給費留学生として推薦する。
(渡航費(往復)と6ヶ月分の滞在費が支給される)。
対象者: お茶の水女子大学出身者・在学者又は附属高等学校出身者で、自然科学関係の研究に従事し、その成績顕著な者
応募資格: フランス政府給費留学生の出願資格を満たす者
応募書類: 履歴書、業績リスト、代表的な論文別刷、応募理由書、応募者の研究業績を知る方による推薦書
*選考に残った場合には、仏留学先の承諾書が必要になります。
 また、選考の際、面接を行うことがあります。
応募〆切: 2009年6月5日(金)
湯浅年子:  湯浅年子は1909年(明治42年)東京に生まれた。少女時代から、自然現象に美や不思議を鋭く感じとって、やがて自然の窮極の姿を探る道を選ぶに到った。東京女子高等師範学校理科から東京文理科大学物理学科に進み、1934年卒業して物理学研究の道に踏み出したが、男女差別はなお著しく、望むような研究の場を得ることは難しかった。1938年 東京女子高等師範学校助教授となるが、留学生として1940年早春渡仏。コレジ・ド・フランス原子核化学研究所で、キュリー夫人の女婿ジョリオ=キュリー教授に師事してβ崩壊の研究を始める。ドイツ占領下の厳しい状況と闘いながら、ジョリオ=キュリー夫妻と科学する心を通わせ、β線スペクトルの解析に必死に取り組んで、1943年、論文[人工放射性核から放出されたβ線連続スペクトルの研究]によって、フランス国家学位(理学博士)を取得した。
 戦争のため1945年帰国し、東京女高師教授に復帰したが、3年半後の1949年、ジョリオ教授の招聘によって再渡仏。原子核の放射性崩壊の精密な実験によって、核内エネルギーの殻構造や、崩壊をもたらす相互作用の研究に取り組む。1955年にお茶の水女子大学を退職、以後フランス国立中央科学研究所所属の研究員として、フランスでゆるぎない地歩を築いて行く。1959年、パリ近郊オルセーのパリ大学原子核研究所に移り、シンクロサイクロトロンによる中エネルギー核反応の研究に移行。世界各地で開かれる原子核国際会議に招待講演を要請されるなど、多くの注目すべき成果を挙げた。1970年頃から少数核子系の問題に取り組み、1978年、それを日仏共同研究として遂行することを計画。病を押してその実現に力を尽くし、1980年2月、臨終の床でその実施決定を聞いた。
 湯浅の活動は研究室の中に留まらなかった。文化人の交流、フランス文化の紹介、渡仏邦人の世話等、多岐にわたってなされた独自の日仏文化交流は、多くの人に忘れられない印象と感謝を遺した。また真摯に人生に向き合い、思索に、心情に溢れた『パリ随想』などの著作や寄稿によって、多くの人に感動を与えた。戦後の学制改革に際しては、保井コノ、阿武喜美子らの理科系教官と共に、女性科学者の研究環境の改善、地位の向上に積極的に取り組み、フランスに移っても、理学を志す日本女性たちにエールを送り続けた。
(『湯浅年子公開資料目録』2009参照)
お問い合わせ: お茶の水女子大学 教育支援チーム教育支援係 理学部担当
TEL:03-5978-5723
FAX:03-5978-5896
E-mail:

国立大学法人お茶の水女子大学 〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1

責任者:お茶の水女子大学ホームページ運営委員会委員長 

E-mail: