スピーチ等

2015年オープンキャンパス(文教育学部) 7月20日 学長挨拶

2015年オープンキャンパス(理学部) 7月18日 学長挨拶<

 本日は猛暑の中、お茶の水女子大学文教育学部のオープンキャンパスにお運び頂き、まことに有難うございます。大層酷い暑さですので、熱中症が危惧されます。どうぞ十分に水分補給などに気をつけて頂きたく、お願い申し上げます。
 短い時間ではありますが、今日のこの機会を、本学の教育と研究、学生支援策などについて、より良く知って頂くために役立てていただければ幸いです。また、今年140周年を迎える本学キャンパスの雰囲気と歴史の一端を、感じ取っていただければ嬉しく思います。

 お茶の水女子大学の歴史は、日本初の女性のための高等教育機関として1875年に東京「御茶ノ水」の地に東京女子師範学校として設立されたことに始まります。それから70年余、女性のための高等師範学校として、優れた女性教育者の育成に当たってきましたが、第二次世界大戦後の1949年に新制大学としての「お茶の水女子大学」が発足し、小さいながらも文教育学部、理学部、家政学部(現在の生活科学部)の3学部からなる総合大学としての歩みを開始しました。新制大学に移行する際に、発祥の地である「御茶ノ水」の名が、大学の名称になりました。
 その後、1963年に大学院修士課程が、1976年に博士課程が設置され、修士学位や博士学位を取得する道が開かれました。その歴史の中で、本学からは、数多くの優れた女性教育者や研究者、実務家が輩出されています。

 2004年に、全ての国立大学が国の組織から独立した「国立大学法人」となりました。その際に、お茶の水女子大学は、『学ぶ意欲のある全ての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在する』との標語を掲げ、学びたくても学ぶことのできない開発途上国の女性たちをも含めて、世界中の全ての女性たちの夢の実現を支援することを目指し、また、国境を越えた研究と教育文化を創造することを目指して活動を開始しました。
 それ以降、本学は「グローバル女性リーダーの育成」をミッションとして、世界に向けて大きな窓を開き、様々な国からの留学生を受け入れ、また、日本人の学生達の様々な国への留学を後押ししています。

 本学の「グローバル女性リーダーの育成」は、決して最近始まったことではありません。女性が海外に出ることさえ困難な時代から、本学の卒業生は広い視野を持って、国際的に活躍してきました。  例えば、わが国の女性科学者として初めて米国に留学し、初めて海外の学術誌に論文を発表して、初の女性理学博士となった保井コノさんや、第2次世界大戦前後の困難な時期にフランスに渡って、ジョリオ=キュリー夫妻の許で国際的な女性物理学者として活躍した湯浅年子さんなどを先駆けとして、現在に至るまでに多くの学者・研究者が育って、国境を越えて活躍しています。

 今日は文教育学部の受験をお考え下さっている皆さまに、文系分野の卒業生の中で、グローバル女性リーダーの先駆けとして活躍された「安井てつさん」について、ご紹介させて頂きます。安井てつさんは、本学がまだ東京女子師範学校だった1890年の卒業生で、卒業後に、本学の附属小学校、岩手県の師範学校、女子高等師範学校で訓導として教鞭をとりました。1896年からの4年間、文部省から派遣される留学生として海外の家政学・教育学を研究するために英国に渡り、ケンブリッジ大学とオクスフォード大学で教育学と心理学を学びました。1900年に帰国してから女子高等師範学校に勤務後、1904年から当時シャム国と呼ばれていたタイ王国において、3年間に渡って女子教育の推進のために尽力しました。100年以上も前の日本人女性の、特筆すべき国際貢献です。
 その後さらにウェールズ大学で学んだ後に日本へ帰国し、1912年から母校である本学で幼児教育などの教鞭をとり、附属幼稚園の主事も勤めました。その間に、女子高等教育の重要性や、女子教育の中での自然科学教育の重要性を訴える様々な活動を行いました。1918年に私立の女子専門学校としての東京女子大学の創立に当たって、初代学長の新渡戸稲造に要請されて学監(学長の補佐)に就任し、その後、1923年に新渡戸稲造の後を継いで第2代の学長になりました。高い理想を持って、学生一人ひとりの人格を尊重した教育を行い、誠実で愛情ある人柄は、学生や教職員の尊敬を集めたそうです。第2次世界大戦中の困難な時期に、将来を見据えて英語教育を続けたことでも、知られています。1945年12月に76歳の生涯を終えましたが、激動の時代の中で、女子の高等教育に力を尽くした一生でした。こういった素晴らしい先輩の存在は、後に続く私たちにとって、大きな希望です。

 現在も、様々な領域で活躍している女性たちの出身大学や大学院を見てみますと、本学出身の方が多いことに驚かされます。こうした先輩たちの活躍は、後に続く若い方々にとって、とても力強い後押しとなってくれるでしょう。

 本学の教職員たちは、学ぶ意欲のある学生たちを心から応援し、優れた教育と研究の環境を作るために、精一杯努力しています。小さな大学であることは、教職員と学生達の距離がとても近いと言う利点もあって、若い方たちが途中で挫折することのないよう、教職員たちが常に心を配って、教育や研究指導、生活指導に当たっています。

 今日ここにお出で下さっている皆さまの多くが、自分自身を輝かせ、社会のために役立つ人となるために、本学を学びの場として選んで下さることを心から期待しています。
 お暑い中でのオープンキャンパスへのご参加、まことに有難うございました。

  平成27年7月20日

お茶の水女子大学長
   室伏 きみ子

国立大学法人お茶の水女子大学 〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1

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