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新型コロナウィルス関連肺炎COVID-19に関する注意喚起について(保健管理センター)(2020年3月23日情報)

2020年3月23日更新

学生ならびに教職員各位  

2020年1月27日
保健管理センター所長 本田善一郎

新型コロナウイルス感染症COVID-19世界の動向

中国湖北省武漢市に端を発した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症COVID-19は世界的に感染が拡大し、2020年3月20日現在WHOの発表では全世界の新規症例数266,073例、死亡例11,184(死亡率4.2%)といずれも急激に増加しており、図1の新規症例数の時経過(区間移動平均により平滑化してあります)に見られるように、感染の首座は完全に中国外に移行し、ことにヨーロッパ、イランなど東地中海アメリカで急速な感染拡大が生じています。図2に見られるように、全世界の新規症例数は3月17日から21日の5日間11,525から32,000と指数関数的3倍に増加しており、ことにヨーロッパでの新規感染数が70-80%を占め、ヨーロッパ各国が時期を違えて行った感染抑制策(イタリアは2月31日に最も早く緊急事態宣言を発令し、その後フランス、スペインが3月14日に発令し移動制限、レストランなどの営業停止、外出禁止など順次規制を強めています)の効果は、3月20日現在で未だに明らかではないように見えます。中国における感染拡大は、特徴的な極めて強力な封じ込めによってピーク時(2月5日)から1ヶ月程度でほぼ感染に封じ込められ、封じ込めの有効性を示す初めての例となっています。今後の封じ込め解除、社会、経済活動の再開によって、新規感染数がどのように推移するかに注目する必要があります。

0323図1,2

(2020年3月22日)

 各国の総症例数、死亡数、死亡率を表1に示しています(3月20日WHO)。3月15日レポート時と同様に死亡率には大きな格差(0.2-8.6%)が存在し、一部の国では死亡率が増加しており、ことに感染数の急増を見たスペイン(2.8%から5.0%)、イタリア(7.2%から8.6%)、イラン(4.5%から7.3%)、フランス(2.2%から3.6%)ではいずれも死亡率がさらに増加しています。イタリア、イランでは死亡率の絶対値が際立って高く、「急激な感染数増大」が死亡率上昇のリスク因子であることを改めて示しています。死亡率の急増はICU、レスピレーター台数を含む救命医療施設、スタッフの供給など、現有の救急救命体制を大幅に超える患者数が急激に生じたためと考えられており(DOI: https://doi.org/10.25561/77482)行政が強い感染抑制suppression)を行うべきなのか、あるいは感染、緩和mitigation)にとどめて良いのかを判断することのcriticalな重要性を示しています。

 3月15日時点では死亡率が低く止められていたイギリス(1.2%から4.4%)、オランダ(1.2%から3.5%)で死亡率の上昇が見られ、これらは遅れて感染が始まった国で時間とともに死亡率がキャッチアップしたためと考えられます。ドイツ、オーストリア、スイスでは感染の拡大にも関わらず死亡率は極めて低く維持されており、社会学的、生物学的観点から注目されています。日本の死亡率3.5%と高く、年齢構成、感染期間の長さ、検査数の少なさなど明示的な要因で説明できる可能性がありますが、韓国(1.2%)、中国の湖北省以外(0.9%)と比べても明らかに高く、今後の方策を考える上での懸念材料となります。

0323表1

WHO: Novel Coronavirus (2019-nCoV) situation reports
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports/
(2020年3月22日)

WHO、日本政府、各国の対応

 安倍首相は3月18日、中国、韓国に加え、イギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパ各国、イラン、エジプトからの入国者に14日間の待機を要請し、21日午前0時から適用し、4月末までを起源とすることを明らかにしました。要請されているイベント中止、休校などの強い封じ込め策をどのように段階的に緩和するのか、3月22日時点では正式な発表はありませんが、小中学校、高校の休校を4月からは解除することが報道から伝わっています。

(2020年3月22日)

感染事例からわかってきたリスク要因

  COVID-19は軽症に経過する疾患ではなく、中国の疾病予防センター(Chinese Center for Disease Control and Prevention)の報告では、致死率は80代、60代、40代、30代以下でそれぞれ14%, 3.6%, 0.45%, 0.2%と高く、入院を要するなど重症化する割合は10-20%に達することが明らかとなり、多くの人に理解されるようになりました。ことに若年者の感染は、多くの場合軽症であり感染を広げクラスター(感染小集団)形成を生じる可能性が高いこと、および一部では重症化が見られることから、今後もさらに注意が必要となります。また、感染者のボリュームゾーンは25歳から49歳(~69歳)にあることが推定されており(Lancet February 20, 2020 DOI: https://doi.org/10.1016/S2589-7500(20)30026-1)、若年者が感染しにくいという風説は誤っていることを知る必要があります。(2020年3月8日)

 日本における発症要因の分析から、ライブハウス、屋形船、スポーツジムなどの「閉鎖空間で多くの人が会話し接する」機会、「近距離での対面の会話、食事」のような行為、「院内感染」、そしてヨーロッパなど「新規の感染が進む地域からの入国、帰国」がリスク要因であること、感染経路としては「接触感染が重要」であることがわかってきました。汚染源となる共用部分(手すり、ドアノブなど)に触れた手指から、鼻、口粘膜にウイルスが移行しないように、手洗いの励行が重要であり、適切なマスクの使用が勧められます。3月14日現在では人が集まる会議、100人を超える集会は多くの場合自粛されています。(2020年3月15日)
0316写真1

日本における封じ込めの評価、世界との比較

日本におけるRT-PCR検査注1)の実施例は少なく、3月22日現在で実施数18,226、陽性者数1015、陽性率5.6%であり(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)、最も広く検査が行われている韓国では、3月17日現在で実施数286,716(報道による)、陽性者数8320(WHO)、陽性率2.9%と約1/2であることから、日本の検査対象集団がやや有所見者、重症者に偏っている可能性があります。 

上記のことを考慮しても、図1, 表1に見られるように日本の新規感染者数は極めて少ないレベルで推移しており、封じ込めは現在のところ明らかに成功していると考えられます。当初はダイアモンド・プリンセス号での感染が大きな負荷と考えられ、WHOから「最も注視しなければならないリスク」と指摘されたことを考えると、驚くべき帰結と言わざるを得ません。 

今後の方針に関して、3月22日の週に日本政府から何らかの指針が示されると考えられます。3月15日レポートの時点では、イギリスのジョンソン首相は感染者の自宅隔離を主とするいわゆる緩和(mitigation)の範囲で死亡率抑制を図り、医療崩壊を防ぎ、緩やかな感染蔓延を許容し、集団免疫を獲得する施策を進めることを明言(3月13日)しましたが、わずか3日で完全に方向転換を行い、社会的封じ込めを含む強い感染抑制(suppression)を行うことを明らかにしました。イタリア、スペイン、フランスなど急激な感染者数拡大、重症者による医療負荷が急激に進行している諸国では出禁止、地域封鎖、レストランなど日常利用施設を含めた公共施設の閉鎖、休業を指示して強い姿勢で封じ込めに臨んでいます。イギリスの方向転換は、急激な感染増加の渦中にあるヨーロッパの状況では感染者隔離、ハイリスク者の外出禁止など、主として死亡率の低下を測る緩和(mitigation)では効果はなく、確実に救命救急医長の需給バランスの破綻に至り、他国で(残念ながら)起こった非平衡的な感染爆発(オーバーシュート)が生じるので、強い感染抑制suppression)が必要であることを明らかに示しています。イギリスの方向転換には上記の報告書(DOI: https://doi.org/10.25561/77482)、Neil M Ferguson(Imperial College London)らによる数理モデル予測、のインパクトが大きいとされており(注2)、またこの1週間のイギリスにおける死亡率の急激な上昇も関連しているのかもしれません。

今後の展望

 現在、日本では強い感染抑制が行われていますが、この強い封じ込めは長期に続けられないことは明らかです。3月22日の週、あるいは4月に何らかの行動封鎖解除が、段階的に行われるものと思われます。その際に問題となる点が、少なくとも三はありそうです。一つ目は、海外からの感染者の入国であり、ことにヨーロッパからの入国が問題となり、実際にフランス、イタリアからの帰国者に感染者が見出されています。
 二つ目は、COVID-19の非平衡的な急激な感染爆発オーバーシュート)があり、我々は武漢、イタリア、スペインでその実例を経験しています。現在われわれはSARS-CoV-2新型コロナウイルスに対抗する特異的な薬剤、予防手段(ワクチン)を持たず、現有の手段は非薬剤的、公衆衛生的介入(non-pharmaceutical intervention : NPI)のみしかありません。Fergusonらは全てのNPIを組み合わせた強いsuppression(注2)を3ヶ月程度導入し一旦感染収束に至っても、解除(release)後にリバウンドを生じる可能性が高く、suppressionを繰り返す必要があり、イギリスを対象とする分析では抑制期間と解除期間の長さは2:1程度になるだろうと予測しています(図3)。ただし、社会的な態度学習によって効果が異なるであろうことを暗示しており、日本での封じ込めの成功と併せ、期待を抱かせる点です。NPIのみで長期に耐えることは困難を伴いますが、おそらく6ヶ月程度で治療薬剤、抗体製剤が使用可能となる可能性があり、さらに12-18ヶ月程度でワクチンが認可される可能性があり、suppression-mitigation (release) の期間は有限の一定の期間と考えられます。日本は今の所巧妙に時間を稼いでいます。4月から始まる可能性のある行動封鎖解除にも、個々人が抑制的な行動を行い、確実な感染数のモニターを行って、必要時に行政が強い封じ込めを再開することで、有限の期間を最小の死亡数、医療負担で乗り切ることができるのではないかと期待されます。

0323図3

 三つ目の問題点は、日本ではこの時期に、集団で行われる行事が多いことです。形式的な行事や、得られる情報よりも感染リスクの方が大きい医療行為(集団健診など)は延期すべきと考えられます。本学では入学式の中止が決断され、オリエンテーション、授業開始が延期され、保健管理センターでは学生定期健康診断を延期し(3月22日の週にアナウンスを行います)、準備期間をおいて、できるだけ安全に講義、図書館利用、体育館体育、健診、生協食堂利用などの大規模イベントを行う方針が示されています。

(注1)COVID-19(SARS-CoV-2)の確定診断は現状では上気道(鼻粘膜など)のぬぐい液を採取し、RT-PCR法でウイルスRNAを検出することで行われます。医療者の検体採取時の感染リスクが高く、RT-PCR法は多段階の検査手技であることから、簡便な検査とは言えません。RT-PCR法の評価を行った報告(Eurosurveillance:https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.3.2000045)では、近縁のコロナウイルスを含むCOVID-19以外のウイルス感染患者サンプル297例を検査したところ全例で陰性であり、特異度(COVID-19に感染していない人を正しく陰性と診断する確率)はこの範囲で100%であり、検査範囲で偽陽性はなかったとされています。ですので、検査陽性とされた症例は確かに感染があったとして良さそうです(もし特異度が95%: 5%に偽陽性が出るとすると、~150,000例を検査した韓国では7,500例の偽陽性が出てしまいます)。一方、感度は低く設定され、50-70%とする報告が多く、見落とし(偽陰性、COVID-19感染があっても陽性と判定できない)が30%程度はあることになり、検査陰性でも感染を否定できないことになり、一方、高い特異度と併せ、繰り返し検査をするという方針の根拠となっており、また、多数の症例に検査ができることを担保しています。

(注2)Fergusonらは治療薬、予防手段(ワクチン)のない段階での非薬剤的介入(non-pharmaceutical intervention : NPI)の手段として1)感染者及び家族の自宅隔離、2)高齢者の隔離、3)全国民の社会的距離維持(レストラン、公共施設の休業、外出禁止などが含まれると考えられます)、4)学校大学の休校、を挙げ、イギリス、アメリカの現在の感染状況を初期値として分析し、mitigationを構成する1)、2)では感染爆発を防ぐには不十分であり、全てのNPI手段を同時に行うsuppressionで初めて基本再生数(reproduction number:1人が感染させる数)を1未満にして、感染を(一時)収束できることを述べています。

0316写真2

個々人ができる感染制御

 以下、すでに繰り返し指摘されていることですが、個々人が日常的に行うことができる感染制御方法を再掲します。

我々の注意すべき点は、不特定他者からの感染リスクを低減し、他者に感染を広げないことにあります。すなわち、

1.  感染者との接触を避けること、
2.  手すりやつり革、キーボードなどに残存するウイルスを、自らの手から目、鼻、口の粘膜に移行させないようにすること、そして
3.  自分が発端者となり他へ感染を広げないこと

が必要となります。
ですので、

●外出、出勤退勤時など常に、目、鼻、口を触らないように、手を肩より上に上げないように習慣づけましょう。マスク着用も一定の効果があります。
●職場、自宅に帰るなど区切りの際に、石鹸、流水で20秒間手を洗ってください。アルコール含有消毒液も有効です。
不要不急の会合を中止し、個々人が人混みに行かないように、時差出勤、在宅勤務を積極的に取り入れてください。
●部屋の換気をしてください。寒い時期ですが、窓を開けて空気を入れ替えましょう。
●感染地域から帰国した際は14日間症状を観察し、できるだけ出勤登校を控え、人との接触を最小限としてください。
(2020年2月25日)

ご自身にがある、感染症を思わせる症状のある場合の指針は、  大学ホームページに示されている指針に従って行動してください。
https://www.ocha.ac.jp/news/20200317.html
 

症状がある場合は、家族を含め他者に感染を広げないこと、自身の感染リスク、重症化のリスクを正しく判定し受診し、検査を受けること、が重要であり、そのためには、

●熱がある、咳が出る、体がだるい、などの症状がある場合は、自宅待機として、家族との接触、タオルなどの共用を避け、経過を見るとともに、大学の所属機関、保健管理センターに連絡してください。
●症状が強い、数日続く、罹患者との接触が否定できない、などの場合は、下記の連絡先(保健所特設機関等)に電話相談して、受診医療機関、受診方法に関する指示を受けてください。受診の際には医療機関に連絡し、マスクをして受診するなど、他者への感染を起こさないことにご配慮ください。
●高齢、基礎疾患(呼吸器疾患、循環器疾患、糖尿病など)など重症化のリスクがある場合は、かかりつけの医療機関に連絡して指示を受けることが最も良い方法です。あるいは、下記の連絡先に早めに電話相談して指示を受けてください。

連絡先:

厚労省電話相談窓口
0120-565653 9時から21時
帰国者・接触者相談センター
文京区:03-5803-1824 9時から17時
板橋区:03-3579-2321 9時から17時

合同電話相談センター
03-5320-4592 夜間および休日

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