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ワークショップ リポート


第一回「女性のグローバルな活躍のためのワークショップ」(2013年5月22日)報告

講師    伊藤 久美 氏
          株式会社日本アイ・ビー・エム 理事、
          グローバル・プロセス・サービス部門 ソリューション・エグゼクティブ


 「こんばんは~ 今日はいろいろと忙しい中、来てくれてありがとうございます!」と、講師の日本アイ・ビー・エム理事の伊藤さんが元気よく登場すると、今日が第一回のワークショップということで、主催者側である私たちはもちろん、来場してくださった方々も少々緊張な面持ちでいたのが、自然と笑顔に変わっていきました。まさに、伊藤さんの「グローバルで働く7つのコツ」のひとつ、『元気のよいあいさつ・反応』という言葉がぴったりでした。

 「みなさん、どんどん質問してくださいね! 質問しては悪いだなんて思わないことです。私は、質問してくださったほうが嬉しいですから」伊藤さんのその一言で、会場全体が見事に一体となり、ワークショップはスタートしました。


 伊藤さんの経歴は、ちょっと変わっていると言えるでしょう。大学在学中は、セミプロのシンガーとしても活躍しており、卒業後はプロの世界に行くことも考えていて、企業に就職することはそれほど重要視していなかったとい言います。(現在も伊藤さんは、本職のかたわら、セミプロのジャズシンガーを続けています)。「でも、新卒カードを切れるのは、今だけだし」と軽い気持ちで志望を出して、大手メーカーのソニーに就職できてしまったというから驚きです。入社後数年を経て、バンド仲間と結婚。ところが夫に、予期しなかった九州への転勤の話が起きてしまいます。こうなったら、産休を利用して休み、夫についていくかと出産し、そのまま専業主婦に。専業主婦生活も満喫していたもののだんだんつまらなくなって、ちょうど声がかかった前職の関連会社に契約社員として復帰、久しぶりの会社員生活をスタートしました。1年後東京に家族で戻ってから転職活動を始めたところ、日本企業からはまったくオファーはこなかったけれど、外資系からは山のように募集が来たことに驚いたそうです。その一つが現職のIBM(日本アイ・ビー・エム)でした。コンサルティング部門担当役員のスタッフとして入社した伊藤さんは、2年後にコンサルタントに職種を変更し、前職で経験があったマーケティング関係のコンサルティングのソリューションを仲間と立ち上げ、数年後には50名のコンサルタントを擁する部門のリーダーになりました。

 ここで聴衆に、象徴的なキーワードが紹介されました。プランド・ハプンスタンス(Planned Happenstance)理論です。「キャリアの成功は偶然による」という、1999年に米スタンフォード大学のクランボルツ教授により発表されたこの考え方に、伊藤さんは「私と同じだ」と思ったと言います。伊藤さん自らのキャリア人生も、まさに「偶然起きていることは、実はいろんなチャンスにつながっている」という、この理論そのものでした。伊藤さんは現在でも、どんなチャンスにも前向きに取り組む姿勢を大事にしています。専業主婦や派遣社員など、さまざまな立場を経験しながら現在の地位に至った伊藤さんの「わらしべ長者ライフ」を実現させた背景には、普段からのこのような心の持ち方があったに違いありません。

 170か国43万人の人が働く多国籍企業IBMは、経営戦略として「多様性を認め、活かすこと」を掲げています。そうでなくては、さまざまな世界中の人たちと仕事をすることはできません。しかし伊藤さんは、相手のことも理解すると同時に、自分も相手に分かってもらう努力をする必要があると言います。自己主張が苦手と言われる日本人は、なおさら努力が必要。そのために普段から心がけるコツを、伊藤さんは伝授してくれました。「なんでも『へー!』と驚いてみよう」「話し合いの時は、一度でいいから、質問と意見を言ってみて」「会話を弾ませるために、いつもちょっとした小ネタを仕込んでいるといい」など、すぐにもできそうな小さなことばかりですが、それがグローバルの舞台で圧倒されず、活躍するための秘訣なのです。同時に、物事がうまくいかないときは、素直に落ち込むことも大事です。それが次のステップにつながるのだと、伊藤さんは言います。「一度しゃがまないと、飛べないでしょう」という、失敗に対してもポジティブにとらえる伊藤さんの考え方には、目からウロコが落ちるような気分にさせられます。 

 伊藤さんの話は、聞く人に勇気を与えてくれます。「グローバルな女性の活躍のためのワークショップ」は、「学生がキャリア形成のためのロールモデルを見つける」ことを目的に掲げていますが、伊藤さんは、「いわゆる自分の数年後のコピーである『ロールモデル』になるような人など、存在しない」ときっぱりと否定します。「Aさんのコミュニケーション力、Bさんの時間管理のやりかたなど、多くの人の「パーツ」を組み合わせた、その人ならではの『パーツモデル』を作りあげていくほうがよほど現実的です」という、貴重な教えをいただきました。

 講演のあとに続いた質問タイムでは、たくさんの方から手が上がり、中には「自分を変えたいとずっと悩んでいたのですが、どのようにしたらよいのかが今日の話で分かりました! ありがとうございました」と胸につかえていたものがとれたように、想いを伝えてくださった方もありました。皆さん、伊藤さんの言葉一つひとつを噛みしめるように聞いてくださったようです。

 終了後に提出いただいたアンケートでは、「毎日どんなことがあっても、今日の講演のことを思い出せば乗り切れる」「お茶大に入ったら、自分の能力が低いような気がして、なにもできなくなっていたが、行動を起こすことで失うものなんかないじゃないかと、前向きに考えられるようになった」「いくつもの言葉が心に刺さり、お話を聞いているだけで元気になれました」「他大学から遠路来ましたが、キャリアをもっと楽観的に考えていいんだと気づくことができ、とても満足しています」「お茶大に入ってから聞いた話の中で、一番面白く、興味深く、ためになった」「途中で感動して、泣きそうでした」など、多くの皆さんからの熱い気持ちが寄せられました。去りがたい余韻を残しながら、記念すべき第一回目のワークショップは幕を閉じました。



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