2016年4月1日(金)学長所信表明

昨年(2015年)4月2日に、学長就任のご挨拶を致しましてから、1年が過ぎました。この間、「オールお茶の水体制」を構築することを目指し、本学のより良い発展のために努力して参りました。まだまだ道半ばではございますが、今年度も、皆様のご協力の下で、執行部一同、さまざまに工夫を重ねて行きたいと思って居りますので、どうぞ宜しくお願い致します。

先ず、昨年11月29日に執り行われました創立140周年記念式典と記念行事への皆さまのご協力に感謝申し上げます。お蔭さまで、とても素晴らしい記念式典及び記念行事になりました。ご参加くださった卒業生や来賓の皆さまからも、「お茶の水が女子教育の歴史の中で果たして来た役割と実績の素晴らしさを再認識した」とのお言葉を頂きました。次の140年に向けて、たゆまない努力を続けて行きたいものと、心に刻みました。

就任後直ちに、28年度から開始される「第三期中期目標・計画」の策定、27年度に終了する「第二期中期目標・計画」の評価や認証評価に向けた準備など、6~7年に一度の大きな作業が始まり、さらに、26年度の事業報告と評価、28年度の概算要求と事業計画の策定などを進めて参りました。並行して、前・執行部から引き継がれた課題への対応とそれらを解決するための各種作業に、日々を過ごして参りました。
また、この1年間に、前・執行部の方々が学内の皆様や社会に対してお約束した事柄について、現在の内外の状況に即した分析を行った上で、それら全てを達成するために努力して参りました。まだ解決までに時間が必要な案件も僅かに残っては居りますが、ほぼ、お約束は果たせたと考えて居ります。
この間、事務方や副学長の皆さま、室長・室員の皆さまには、大変ご苦労をお掛けしました。さぞ、大変でいらっしゃったことと思いますが、和やかな雰囲気の中で、ご努力くださった皆様に、心から感謝申し上げて居ります。また、様々な課題を真剣に議論し、ご協力下さった部局長の皆さまにも、御礼申し上げます。有難うございました。

私たちは、このキャンパスに集う全ての教職員の皆さまや学生達と、できるだけ、意見交換をする機会を作りたいと考えていました。
残念ながら昨年度は、休日もない忙しさで日々を過ごしていたものですから、特に教員の方々との意見交換の機会をあまり作ることができませんでした。今年度は、昨年度にお約束した複数回の財務説明会の実施は勿論ですが、様々な機会を捉えて、皆さまと意見交換をさせて頂きたいと考えて居りますので、そういった機会には、是非ご参加下さいますよう、お願い致します。

財務説明会で皆さまにご説明し、また部局長等連絡会や教育研究評議会などでご説明を重ねて参りましたので、皆さまにもご理解いただいていると思いますが、国からの運営費交付金の削減は、非常に厳しいものがあります。
昨年末に、機能強化費の文科省査定に、財務省が0.3を掛けるという信じられないことも起こって、国立大学の学長会議でも、特に地方大学等で悲鳴が挙がっている状況があります。政府は、「今後運営費交付金は減ることはあっても、増えることはない。自己資金を獲得することを考えて欲しい」との発言を繰り返しています。自己資金の獲得をし易くするために、国立大学に掛かっていた財政上の規制緩和を含んだ法律の改定も進められています。
こういったひどい状況の中で、本学が独自性を発揮して、優れた成果を挙げて行くためには、様々な工夫と努力が必須です。この難しい局面を乗り切り、希望ある学園を築くために、是非、皆さまそれぞれが、オーナーシップを持って、教育・研究と大学運営に当たって頂きたく存じます。

これから、この1年間に現・執行部が実施して参りました事柄を振り返ると共に、これからの1年間の方針をお話したいと思います。先ほどの簡単なご説明と一部重なりますが確認のためにお聞きください。


1.教員人事計画など(全執行部のお約束)

事務方にもかなりの時間と労力を掛けて頂いて、前・執行部が皆さまや社会に対してお約束したことを分析し、実行して参りました。
教員人事は、前・執行部のお約束を全て実行し、第三期中期目標期間中の方針を立て、様々な場面でご説明いたしました。ご理解いただいていることと思いますが、現在の人員180名を確保するよう、努めて参りますので、新たな教員の雇用や夫々の組織の在り方の検討と決定に関しまして、皆さまの自発的なご協力をお願い致します。
教職員の皆さまに本学の運営にご尽力頂くために、大学運営の一層の透明化を図り、先ほど申しましたように、皆さまからのご意見を伺う機会を出来るだけ多く作ります。
本学の教育・研究の質を維持し、さらに向上させるために、外部資金の導入なども図って参ります。それにつきまして、皆さまにも本学の事業にご協力いただける企業等をご紹介いただくなど、積極的なお力添えをお願い致します。


2.安全で働き易いキャンパス作り

本学の構成員が心身ともに健康で、落ち着いてそれぞれの仕事や勉学に専念し、未来への夢を語れる環境を作るためには、学内業務の整理や実績評価の見直し、ワーク・ライフバランスの推進、教職員や学生・生徒達の心と体の健康の管理などに、さらに注力して継続・改善を重ねていくことが必要だと思っています。
また、すべての構成員の命を守るために、安全な環境づくりがきわめて重要です。そのために、教職員や外部専門家のお力をお借りして、キャンパスマスタープランの見直しを進め、昨年度中に素案を作成いたしました。早速、皆さまにご覧頂いて、ご意見を頂き、6月中くらいには最終案をまとめますので、宜しくお願い致します。
なお、今後予想される首都直下型地震や東海・東南海・南海トラフ地震等の災害への防災・減災対策を、喫緊の課題として検討を進めて参りました。常設の災害対策本部の体制を整え、全学放送設備を整備しました。
災害対策分科会、災害教育分科会を立ち上げ、メンバーの皆様のご努力と外部専門家のご助言もあって、災害時のキャンパス内の安全な避難経路の検討や、児童・生徒・学生に向けた防災教育の小冊子を作成することもできました。さらに検討と改善を加えて、安全なキャンパス作りに努めます。
また、本学の学生、生徒、児童、教職員の命だけでなく、学外から避難して来られる方々の命を守るために、文京区や警察、消防、その他様々な外部機関との連携を強化して、早急に対策を進めます。
この点につきましても、皆さまのご尽力を切にお願い致します。


3.事業運営の効率化

学内の事業・運営の効率化を図り、担当者の負担を軽減するために、室、委員会等の見直しを進めて参りました。今後も、様々な組織や体制の見直しを進め、組織のスリム化、学内スペースの機能的配置、人事の透明化と選考プロセスの簡略化、会議資料等のペーパーレス化などを推進します。
学長戦略会議では、既にペーパーレス会議を実行して参りましたが、今後他の会議にも広げる計画です。


4.オールお茶の水体制による教育・研究の推進

以前から申し上げて居りますように、お茶の水独自の教育と研究を推進し、他にはない成果を挙げるためには、附属校園を含む本学の全ての知的・人的資産を分野横断的に活用し、国内外の教育・研究機関、企業、行政等との交流を一層推進することで「基礎研究から社会における智の活用まで」を包含した先見的な教育・研究のモデルを構築することが必須であろうと考えています。
本学の資源を適切に活用することで、幼児から社会人までを俯瞰する教育プログラムを策定・提供することが可能であり、「全人的な教育」を担う教育・研究機関として、これまで以上に社会からの期待と要請に応え得ると考えています。
今年度から立ち上がる「ヒューマンライフイノベーション開発研究機構」も、そのために創設されるものです。この機構を拠点として、国内外の研究・教育機関や行政との協働を強化して、本学の持続的発展のための適切な方策を実行することが必要だと考えています。
そして、本学を応援して下さる方々や団体を増やすことが重要ですので、産官学の各方面への働きかけを行って来ましたが、今後もさらに範囲を広げ、時間を掛けて、応援団を増やすことを目指します。


5.教育・研究成果の見える化

本学の構成員の教育・研究の成果を「見える化」して、積極的に社会に発信し、社会からの信頼と支援を得て、それを足がかりに、外部資金の導入に努力していく所存です。そのために、昨年度も申し上げましたが、それらを実現するための全学的組織を作りたいと考えています。財政難の中で、工夫をしながら、本学らしいより良い体制を構築していきたいと思います。
本学の歴史と知的・人的資源、ブランド力を活用して、特色ある教育・研究に取り組む環境づくりに努力していきたいと考えていますので、この点でも、皆さまのオーナーシップに基づくご尽力をお願い致します。


6.国際交流と学園のグローバル化

教職員の皆様のご努力で、この間、学生たちの国際的な交流の機会が大きく広がって来たと思います。学生たちが異なる文化や価値観に触れ、豊かな国際性を身につけ、活動範囲を広げるための努力を続けることは重要ですが、それと共に、今後は、教職員の国際交流の機会を増やしたいと考えて居ります。


7.コミュニケーション・プラザ計画

以上述べました計画や理想を実現するための方策のひとつとして、正門脇に新たな建物を建てることを検討しています。
本学の教育・研究に資すると共に、地域や他の教育機関、研究機関、産業界、行政などとの連携の場としても、活用することを考えています。
学内の教職員の方々の智恵を集めると共に、学外の専門家の方々からのご意見をお聴きし、また、文部科学省や文京区、東京都などとも相談しながら、計画を進めます。国からの予算が毎年削減されることに鑑み、新たな建物からは、本学の環境整備と教育・研究の推進のために、一定の収入が図れるような計画を検討中です。


8.未来開拓基金

外部資金の導入の新たな方策として、「未来開拓基金」を立ち上げ、同窓生や内外の多くの方々に呼びかけて、本学の様々な事業へのご寄附を募ります。本基金による取り組みの柱は、
 ① グローバルに活躍する女性リーダーの育成
 ② 女性のキャリアアップを支える学びの場の整備
 ③ 地域連携・産学官連携による共同研究・事業の推進
の3つで、これらの取り組みを実現する場としての、正門脇の建物の建設に対するご寄附も募ります。
これまでに、同窓連絡会や各同窓会の皆様との会合を10回近く開催し、ご協力をお願いして来ました。附属幼稚園から大学までの同窓生の皆様からも、かなりご理解頂けていると思います。また、同窓会だけでなく、様々な組織や個人に向けた募金活動を開始しています。


9.構成員による自主的な組織などの改革

本学が今後どんな方向を目指すべきかについては、原則として、社会状況の変化や学生達の要請などを考慮して、構成員の皆さまご自身が、検討し、判断するべきだと思っています。私たちは、その判断が学生達や社会のためになるものであれば、様々な手を尽くして応援します。これまでも、皆さまからのご提案には真摯に向き合い、協力を惜しまなかったつもりです。
是非、学生達と本学の発展のために、将来を見通した改革も自主的に進めて頂きたく存じます。


10.3学部体制の維持

今、国立大学には様々な改革が要請され、多くの大学では抜本的な構造改革が実施されています。国立大学の形は、この数年の間に大きく変わることも予想されます。
しかし本学は、皆さまのご希望でもあり、本学が特色としてきた、現在の3学部体制を維持することを決心し、大きな組織改革はしないとの方針を固めています。お茶の水が、極めて小規模ながらも女子師範学校の時代から文科と理科を持ち、その後家政科を加えて、東京女子高等師範学校、新制大学へと発展し、新制大学になった昭和24年からずっと総合大学であり続けたのは、優れた人材の育成を志向された先人達の将来を見通すお考えがあったからだと思っています。 この方針は、ある意味、政府の要請に逆行する立場をとっていることにもなります。それが、本学への財務省の有識者会議からの決して温かいとは言えない評価となっていることも予想されます。
ただ、大学は、教員たちが人間の英智の結集としての様々な学問を研究し、その成果を若い人たちに伝達する場であり、これから社会へ出て行って活躍する学生達の背中を押して、広い社会へ、そして世界へと送り出す場です。教員たちは、それぞれの専門領域で十分に活躍し、学術活動などを通して得た知識や考え方を、惜しみなく学生達に伝えなければなりません。ですから、学生たちにより高い教育を提供し、その成長を支えるために必要ならば、教員自身の中から変革の声が上がることもあるでしょう。その時は、私たちは皆さまの声にお応えして、できるだけの支援を惜しみません。


なお、文科省等からの支援期間が終了する事業もありますし、まだ道半ばの事業もあります。それらにつきまして、状況を分析して、後継事業の可能性や、より良い方策を探りながら、進めて行きたいと考えて居ります。

今後、さらに様々な課題に向かい合わなければならないと思いますが、皆さまとご一緒に、それらの課題を解決して行きたいと思っています。これからの3年間に、どれだけのことが出来るか予想できませんが、皆さまが「当事者意識」を持って、ご尽力くださることが最大の鍵になります。どうか、「大学が、ご自分たちのために何をしてくれるか」ではなく、「ご自分たちが大学のために何が出来るか」を考えて頂きたく思います。
今年度も、どうぞ宜しくお願い致します。                              

 

2016年4月1日日

お茶の水女子大学長
   室伏 きみ子

国立大学法人お茶の水女子大学 〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1

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