2009年4月3日(金)学長所信表明

 4月1日、文部科学大臣から辞令をいただき、学長の職に就き本日で三日になります。
 一日目は雷が鳴り、二日目は強風、ようやく今日おだやかな日が訪れました。4年後はこのように終わることを期待し、そのために励んで参りたいと思います。

 大学は5年前に法人化されて以来、中期目標と中期計画に基づいて行動することを強いられています。 そして、第一期中期計画が終了する今年、また、第二期中期目標と計画を策定する今年は、大学にとって極めて重要な年にあたります。
 先月公表されました中期目標期間の達成状況報告では、お茶の水女子大学は、89ある国立大学の中で極めて高い評価を得ました。 これは、第一期の中期目標と計画を策定された本田和子元学長が、高邁な理念をもって目標をかかげ、明確で具体的な計画を立てられたからであり、 郷通子前学長が、その実現に邁進された結果だと私は理解しています。
 これから私がなすべきことは、明確な設計図に基づいて築かれた礎の上に、その確かさを確認しながら、新たな建物のための石を積むことだと思います。

 「学ぶ意欲のある全ての女性の真摯な夢の実現の場として、お茶の水女子大学は存在する」というミッションのもとに第一期中期計画は進行してきました。
 これを、この大学にとって第一義のミッションとして継承して参ります。
 これまで、「リーダー育成」、「男女共同参画」、「国際性」、「学際性」というキーワードで、この大学の特性が学外に強く発信されてきました。 私はさらに、教育および研究の「多様性への対応」と「社会への還元」を重視して行きたいと考えています。

 女子大学としての本学は、女性のキャリアが多様に築かれる教育をこれまでも遂行し、優れた女性を育てて参りました。そして、その方々が社会を導いてきた歴史があります。 この基本姿勢をこれからも貫くのはもちろんのこと、永年にわたって築き上げてきた教育をより堅固なものとし、 その上で、社会をけん引する学問領域の開拓とそれに応じた教育と研究の在り方を志向する必要があると考えています。

 また、大学が社会の中で存在意義を示すには、投資された資金に値するだけの成果を社会に還元することが重要であり、社会の期待に確かに応えていることを明示しなくてはなりません。
 しかし、そのためには、何よりも堅実な組織が必要です。組織が盤石であるために、私たちは矜持と節制を大切にし、相互の信頼を築きたいと考えています。 私自身を含めて一人一人の構成員が、自らに誇りをもち、他者を信じ、互の声に耳を傾けて尊重し、節度をわきまえ、そして充たされる日を過ごすことのできる組織づくりが、今、何よりも必要だと思います。 そのためには、各自が役割に応じてなすべき責務を果たさなければなりません。時代が流動的であり、多様な対応が求められる状況に私たちは在ります。 従って、固定した組織にとらわれることなく、協力し合って柔軟に状況に対応していただきたいと思います。また成果に対してはそれに相応した評価がされる必要があります。
 この点で、目下の重要な課題として昇任人事があります。運営費交付金の削減率が、1%か3%か、あるいは5%になるともいわれ、年間4000万円から多くは2億円が削減されるとなると、 人件費にして数人あるいは10数人を減らさなくてはなりません。 とはいえ、優れた業績があり、優秀な学生を育てた教職員に、相応の評価がなされないことは問題であり、財務状況を見据えながら対策を講じたいと考えています。

 その財務状況を考えますと、競争的資金の獲得と、寄附収益事業が重要です。
 法人化されたことから、大学が収益事業に着手することも求められていますが、これは軽率にはできません。ただし、知恵を出し合って方策を探って行きたいと考えています。
 寄附については、これまで以上に大学の知を効果的に発信して多くの方々にご協力いただけるよう務めます。その際に重要なのは、大学のイメージを損う事態があってはならないということです。 私達の日々の行動が人々から信頼されるに値するように務めたいと思います。この点でも皆様お一人お一人のご協力を是非ともお願い致します。

 また、競争的資金の獲得の占める割合が、お茶の水女子大学は著しく多く、それによって高い評価も得ています。 このことは、多くの先生方の多大なエネルギーの投与と事務の方の勤勉さとに支えられて達成されているものです。今や、時限的なプログラムの数は、その全体像の把握が困難なほど多くあります。
 そこで、一つにはプログラム担当者が一堂に会してより効果的で効率的な実施方法を検討する機会を作りたいと考えていますが、同時に、競争的資金の獲得を事務とする組織も必要です。 それは、先生方が教育と研究に専念できる静謐な環境を整えなければならないと考えるからです。

 本来、大学は普遍性(Universality)を追求すべき組織体です。それだからこそ人の育成が委ねられているのです。
 日々の糧を得るために全てのエネルギーが費やされてはならないはずです。私達は、時代の状況に対応して進まなくてはなりませんが、大学としての理念を手放すわけにも行きません。 理念を喪失することは、人間の知性を放棄することになるからです。
 お茶の水女子大学の理念は、主体性をもって新たな創造ができる人間を育成することにあります。流動化し、変化する社会にあって、本質を失うことなく未来を担うことのできる人間を育てることです。 そのために、このキャンパスに集う全ての構成員が互いに信頼し合い尊重し合って一体となって、お茶の水Universityとして活動することを私は目指したいと考えています。

 来週から、大学の入学式をはじめ、附属学校園でも入学式や入園式が行われます。
 新たなメンバーを多く迎えることになりますが、多難な人生に耐えうる強靭さと知性と品性を備えた人々を世に送り出す組織でありたいと思います。 附属学校園と大学とが一丸となって、学生、生徒、児童、園児のために、そして社会のために、ひいては人類の未来のために、このお茶の水Universityが存在し、 発展するための下支えとなるよう私自身努めて参りたいと思います。
 皆様の知性と知恵とお力をいただきますよう心からお願い致します。

 

   

お茶の水女子大学長 羽入佐和子

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