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お茶大アカデミック・プロダクションの郡宏特任助教が「日本物理学会若手奨励賞」を受賞

 この度、お茶大アカデミック・プロダクションの郡宏特任助教が、第3回(2009年)日本物理学会若手奨励賞を受賞されました。日本物理学会では、将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、学会をより活性化するために、2006年に本賞を設けました。選考は物理学会にある19の各領域で行われます。郡特任助教が受賞したのは領域11(統計力学,物性基礎論,応用数学,力学,流体物理)であり、この領域ではこれまで年間3人ないし4人が受賞しています。
 今回の受賞対象となった郡特任助教の研究は「位相振動子ダイナミクスの非線形フィードバックによる制御」です。これは、一定のリズムを刻みながら反応をしたり運動をしたりする集団の振る舞いを操るための制御理論で、郡特任助教が理論を構築し、その実証実験がバージニア大学のグループによってなされました。
 この研究成果は、2007年に科学雑誌「Science」で発表され、また「Science」の注目論文を選んだ「Science Express」にも掲載されました。
 実験は、希硫酸に64本のニッケル電極を入れ、そこに電圧をかけるというものです。電流が流れると同時に、電極表面でも化学反応も起きるため、流れる電流の量が2秒程度の一定周期で増減する「リズム」が出現します。最初、各電極のリズムはバラバラですが、郡特任助教が構築した新しい理論に基づいて電極の電圧にフィードバックをかけると、全ての電極のリズムを一緒にしたり、再びバラバラにするなど自由に制御できることが立証されました。また、小さな集団ごとにリズムを刻ませることもできました。
 こうしたリズム現象は、我々の24時間の生活リズムを作り出す脳の中枢時計組織、ホタルの集団発光現象(数万匹のホタルの発光リズムが完全に同期することもある)や、パーキンソン病の症状である「ふるえ」の原因となる脳神経細胞集団の異常同期にもみられ、この理論がリズム制御に有効であることが示されたことは、メカニズムの解明や将来の治療法の開発に役立つ可能性もあります。

(若手奨励賞に関する情報)
  第3回(2009年) 日本物理学会若手奨励賞 受賞者一覧
  日本物理学会若手奨励賞について
  日本物理学会 領域11

(受賞対象の論文)
Hiroshi Kori, Craig G. Rusin, Istvan Z. Kiss, and John L. Hudson:"Synchronization Engineering: Theoretical Framework and Application to Dynamical Clustering", Chaos 18, 026111 (2008)
Istvan Z. Kiss, Craig G. Rusin, Hiroshi Kori, John L. Hudson:"Engineering Complex Dynamical Structures: Sequential Patterns and Desynchronization", Science 316, 1886-1889 (2007)

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