News&Info

第1回 国際フォーラム in Bangkok「日本−アジアの『知』の融和」を開催

 本学は本年2月に初の海外拠点であるバンコク・オフィスの開設と4月に国際本部を発足させたことを記念した国際フォーラムを11月21日(金)、22日(土)にタイ・バンコクにおいて「日本−アジアの『知』の融和」をテーマに、JSPS及び国際交流基金の現地オフィス、日系企業関係者、タイ及び周辺国の高等教育機関で教育研究に従事している卒業生等が一堂に会し開催した。
 フォーラムは、郷 通子学長による基調講演では、105年前の本学に受け入れたタイからの最初の留学生の話題から始まり現在の留学生受け入れの現状、本学の特徴ある教育・研究・女性支援のミッション及び大学院の先端融合研究並びに各種事業について紹介があった。
 引き続き、パネルディスカッション「アジアの知と日本の知の融合〜アジアは日本に何を期待するか・日本はアジアから何を学ぶか〜」では内田伸子理事がファシリテーターを務め、第1部「学術研究の視点から」第2部「産業界における人材育成の視点から」第3部「日本語・日本文化の視点から」の3部構成で進められた。
 第1部では、池島耕JSPSバンコク研究連絡センター長から「日本とタイの協力・交流活動を通じて得た事柄を紹介。タイでは応用科学への期待が高く、その重要課題としてタイの豊かな生物資源の利用があり、タイに本当に必要な知識や技術を知るためには、日本人研究者がタイに来て、共に学ぶ姿勢が重要である」と指摘された。
 また、Kim TP Oanh研究員(Vietnamese Academy of Science and Technology)は、奈良女子大学における日本留学の経験やその後の日本でのポスドクの研究生活を振り返り「日本での研究活動を通じて、バイオテクノロジー、特に、バイオインフォマティックスに関わることができたことは貴重な経験である」と述べ、また、「日常の生活における日本人とのふれあいを通じて、日本人の人柄や日本の文化を知ることできた」ことを紹介された。
 第2部では、Toray International Thailand Ltd.のNarong Lertkitsiri会長から、
 「タイ・チュラロンコン大学を卒業後、日本の大学への留学し、外国人採用数が若干枠である時期に関わらず、日本企業に就職するも、日本企業文化の中で悩むこともあった。しかし、『一生懸命』の気持ちを大切にし、日本人と仕事をすること、自分の仕事を作り出すことを考え、仕事の成功も手に入れた。今、日系企業トップとなり、タイの若手社員にも『一生懸命』の気持ちを期待したい。」と述べられた。
 また、本学の帰国留学生で日系企業に現在勤務しているSiriporn Iamphongsaiさんは(Takahashi Plastics Ltd.)、「タイには約6000社の日系企業があり、タイ国内の日本語学習者の数は増加傾向にあるが、仕事上でのタイ人と日本人のコミュニケーションは容易ではない。お茶大に留学することにより、言語、文化、専門知識を得ることにより、日本人との良好なコミュニケーションができるようになり、日本人との仕事をスムースにすることができる。」と述べられた。
 さらに、帰国した留学生が設立し日本型の工学教育を進めている泰日工業大学のPorn-anong Niyomka Horikawa副学長は、「タイの産業界、特に、自動車、電気・電子産業の人材育成において、タイに『ものづくり型』大学を作り、日本語が使える、日本文化を理解できる技術者を育成することは重要であり、大学のカリキュラム作成や現場研修実施において日系企業の協力を得ている。さらに、日本への研修または日本人家庭での滞在を通じて、日本文化の理解をさらに深めることを期待する。」と述べられた。
 第3部では、国際交流基金吉川竹二東南アジア総局長から、タイから見た日本の魅力を紹介された。「タイにおいて日本語は文化的憧憬の対象としての側面がある。日本文化としてマンガ・アニメ、ファッション、食などに人気があり、日本語学習欲へと繋がっている一つの要因となる。そのことが、日本留学や訪日研究の動機となった時に、タイは日本に何を求め、日本に何を提供できるのか。まちづくり、経済や教育機会の格差克服、環境問題対策、高齢社会への対応、アート、地域協力などのテーマにおいて共に学びあえる可能性がある」ことを指摘された。
 また、本学の卒業生で翻訳家であるBhusdee Navavichitさんは、「窓際のトットちゃん」タイ語翻訳の経緯を紹介された。「当初、英語版からの翻訳を計画したが、日本語からの翻訳をすることなり、かつてのお茶大留学、帰国後のラジオの日本語放送担当をしたことが役に立った。特に、ただ日本語を使えるだけでなく、日本留学による日本文化体験は、日本語の背景にある文化をタイ語へ翻訳するときに重要である。」と述べられた。
 日本留学後タマサート大学で、日本語を教えているWarintorn Wuwongseさんは、日本とタイの関係を「日本、資源乏しい国、ものつくりの国。タイ、資源豊かな国、ものを消費する国。タイが日本に期待することして、先端技術、組織に対する自覚の手本、社会規範を守る手本など。その一方で、日本人が日本以外に住んでみたい国として1位はタイ。物価の安さとタイ人の人柄などが理由。日本とタイは相互に期待している。」と述べられた。
 チュラロンコン大学の石橋玲子教授は、「タイの人材育成のひとつとして、日本語教師養成があり、その養成を日本ではなくタイ国内で行って行くことを目標とする。加えて、日本語研究者も育成する。さらに、タイだけではなく周辺諸国と連携して進めて行くことが必要。人材育成への企業からの支援、日本人研究者との交流・連携を期待する。最後に、日本の大学にはさらに世界に向けて情報を発信することを期待する。」と述べられた。
 佐々木泰子教授(お茶の水女子大学)から、「タイからの留学生の数は中国、韓国、台湾についで4番目である。これらも増えて行くことを期待する。」と述べられた後、タイからの留学生のビデオメッセージを会場に紹介した。
 最後に、ファシリテーターの内田理事から、「第1に、[学術研究]、第2に、[産業界における人材育成]、第3に、[日本語・日本文化]という3つの柱のもとに各パネリストから提供された話題を通して、今や、日本とアジア諸国がネットワークを密にして人的・物的交流を密に連携協働をする時期にきていることを実感した。今や、世界は、経済格差や環境問題、地球高温化問題など解決すべき課題に直面している。持続性世界の構築にむけて、アジア諸国のネットワークを密に、学術交流や人材の育成に取り組んで参りたい。ここに参集された皆様のおかげで、お茶の水女子大学国際フォーラムはスタートを切ることができた。今後、参加国や参加対象者を拡大して、第二回、第三回と回を重ね、『日本の知』と『アジアの知』の調和と融合を一層推進して参りたい。」と総括して、1日目が終了した。
 2日目は、分科会1として「Education and Researches in Interdisciplinary Areas: Life Science, Information Science and Nanotechnology」というタイトルで、相互に研究紹介を行い、本学とタイの同分野の研究者の間で、優秀な大学院生を定常的に交換できる確固としたパイプを作る等、日タイ間の同分野における国際連携の構築を議論した。
 また、分科会2では「新たな日本語・日本文化・日本事情教育の方向性」というテーマで、本学及びタイ及び周辺国の研究者とアジアと日本の連携・協力による、「今」そして「これから」必要とされる新たな日本語・日本文化・日本事情教育の方向性を探る議論が行われた。

基調講演をする郷学長 パネルディスカッション
基調講演をする郷学長 パネルディスカッション
フォーラム参加者 フォーラム参加者
フォーラム参加者

国立大学法人お茶の水女子大学 〒112-8610 東京都文京区大塚2-1-1

責任者:お茶の水女子大学ホームページ運営委員会委員長 

E-mail: