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 卒業生の森郁恵さん、「猿橋賞」を受賞 


 猿橋賞は,1980年創立の「女性科学者に明るい未来をの会」が,自然科学の分野で顕著な研究業績をあげた女性科学者(50歳未満)におくる賞で,猿橋勝子博士によって創設されました。多くの自然科学分野の学会からそれぞれ推薦された候補者のなかから,毎年1名に与えられる名誉な賞です。

森郁恵さん


森郁恵さんのプロフィール

 森郁恵さんは,1980年に本学理学部生物学科を卒業後,理学研究科に進学し,ショウジョウバエのアルコール脱水素酵素の活性の遺伝的変異に関する研究で,理学修士の学位を取得。その間,文部省国際交流派遣制度の留学生として,英国サセックス大学に1年間留学。その後,米国ワシントン大学生物医学系大学院に進み,線虫C. elegansのトランスポゾンTc1に関する遺伝学的解析で,Ph.D.の学位を取得。
 帰国後も線虫を用いた研究を進め,九州大学理学部生物学科の助手を9年間務めた後,1998年から名古屋大学大学院理学研究科の助教授,2004年からは教授として、多くの学生とともに精力的に研究に取り組んでいらっしゃいます。1996年には日本遺伝学会奨励賞を受賞。
 今回の猿橋賞受賞の対象となったのは,米国留学以来一貫して進めてきた線虫を用いての「感覚と学習行動の遺伝学的研究」です。

過去の本学受賞者

 本学では、すでに以下の3名の理学部卒業生が猿橋賞を受賞しています。

  • 山田 晴河さん (第2回,物理学,1955年化学科卒)
  • 石田 瑞穂さん (第9回,地球科学,1966年物理学科卒)
  • 黒田 玲子さん (第13回,化学,1970年化学科卒)

森郁恵さんの本学コネクション

 本学在籍中は、石和貞男名誉教授(現日本遺伝学会会長)の研究室に所属されていました。当時助手だった松浦悦子理学部教授とは、今でも昵懇のご関係です。
 その後も本学との関係は深く、郷通子学長とは九州大学でも名古屋大学でも同じ部署に勤務されておられ、ずっと交流を続けられています。

※授賞式後にインタヴュー記事などを掲載いたします。


森郁恵さんの研究内容

 線虫は,体を構成する約1000個の細胞すべての系譜が明らかになっている有用なモデル生物です。森郁恵さんはすでに15年前に,302個の神経細胞のシナプス結合パターンが解剖学的に明らかにされていることにいち早く着目し,温度走性に関する神経回路の解析を進めてきました。温度走性は記憶と学習が関係する行動のひとつで,このしくみを明らかにすることは,脳の機能の理解に大変重要です。
 森さんは,レーザー照射によってひとつひとつの神経細胞を殺傷する実験から,温度走性のような行動の可塑性を支配する神経回路のモデルを初めて提唱しました。また,温度走性に異常を示す突然変異体を利用して,温度走性に関与するシグナル伝達経路や,神経回路のはたらきの鍵となる分子も発見しました。最近では,異なる波長の蛍光を発する遺伝子モニターを用いて,神経細胞の活動の解析にも成功しています。
 このように森さんは線虫の先駆的な研究者であるばかりでなく,感覚や行動の分子神経遺伝学的研究において第一線で活躍する研究者としても,国際的に高く評価されています。

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