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2つのピアノコンサート

  •  去る7月30日、文教育学部2号館にある音楽表現コースのレッスン室で、本田学長をはじめ本学教職員、大学・附属校園の同窓会関係者が出席し、ささやかなピアノコンサートが開催されました。これは大学資料委員会が進める貴重資料修復事業報告の一環として企画されたもので、昨年秋に修復が完了したベヒシュタイン社製サロン用グランドピアノ(Bechstein L型)のお披露目を兼ねたものでした。ピアノ演奏を担当したのは同コースの小坂圭太助教授で、この日はドビュッシーとJ.S.バッハの小品が紹介されました。今回使用されたピアノは、関東大震災の翌年(1924年)に保護者から附属女学校(現附属高等学校)に寄贈されたもので、1920年代にドイツで製造されたものであることがわかっています。本学が現キャンパスに移転した昭和7(1932)年以降も、半世紀以上にわたって生徒たちの音楽教育に使用されていましたが、経年的な劣化により廃棄寸前の状態に陥っていました。しかし、附属高等学校の校内紙に掲載された窮状を訴える生徒たちの記事が契機となり、今回の修復事業が決定されました。修理にはおよそ9ヶ月がかかりましたが、すべての弦を張り替え、鍵盤も新しくし、制作当時の形に復元した譜面台も取り付けられました。外装も天然顔料で塗り直して磨きをかけ、すっかり元通りの姿に生まれ変わりました。

     今回の演奏曲目にも選ばれたドビュッシーは、「ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」という言葉を残していますが、自らもこの楽器を愛用しながら曲を作っていたのです。今回のコンサートは、作曲家の抱いていた音のイメージを、作曲家と同じ時代の楽器で再現するという、大変貴重な演奏会でもあったわけなのです。

     また、11月6日には附属小学校の音楽教室(アッセンブリー・ホール)を会場に、小学校同窓会(茗鏡会)の有志による募金によって修復されたもう1台の同型グランドピアノを使用した記念ミニ・コンサートが開催されました。このピアノもまた、関東大震災直後に寄贈されたものと伝えられており、昭和60年頃までは小学校の音楽教育に使用されていたものです。昨年末から始まったこのピアノの修復募金の呼びかけに、半年足らずの短期間に1000名以上から賛同の申し出があり、寄せられた募金をもとに高等学校のピアノと同じような全面修理が施されたのです。コンサート当日には、第2次世界大戦以前からこのピアノを使って児童の音楽指導にあたっていた小学校の旧教員をはじめ、70代から中学生に至る3世代に及ぶ卒業生たちや小学校の関係者およそ50名ほどが集まりました。事前に演奏申し込みのあったあらゆる年代の卒業生9名による演奏が次々と披露され、「昔と変わらない音だった」と満面の笑みを浮かべた70代の卒業生の言葉が印象的でした。この会の模様は、12月4に付けの『朝日新聞』投書欄に紹介され、「(素晴らしいピアノの音が)、末永く母校に響き続けることを望んでやまない」という言葉で結ばれています。

     今後、この2台のピアノを使った記念演奏会も予定されていますが、名器の奏でる繊細な音色はこのキャンパスに集う児童生徒や学生たちの耳に、どのように響くのでしょうか。



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