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幻のピアノ 80年ぶりに復活
ベヒシュタイン社製小型グランドピアノを復元保存

Lang. : Japanese

復元されたピアノ

 このピアノは、1920年代にドイツで製作されたベヒシュタイン社製のもので、本学が関東大震災によって消失したお茶の水キャンパスから現キャンパスに移転した際(昭和7年)、附属女学校(現附属高校)の生徒の親から寄贈され、音楽教室で近年まで使用されていたものである。残念ながら寄贈者は明らかでないが、同タイプのピアノは当時の価格で約3千円(新築の住宅とほぼ同価格!)であったとの記録もあり、きわめて高価な機材であったことには間違いない。しかも本学には、同時期に寄贈された同型のベヒシュタイン社製小型グランドピアノがもう1台、附属小学校にも現存している。
 大学資料委員会では、本学に残る歴史的文物を保存するという目的から、70年以上にわたって本学附属学校で音楽教育を支えてきたこの楽器を次の世代にも受け継ぐために、演奏可能な状態に復元保存することを決定し、2003年7月現状に戻したのである。

 ところでベヒシュタイン社は、1853年にカール・ベヒシュタインによって創業されたドイツ、ベルリンのピアノメーカーで、19世紀後期からヨーロッパ屈指の銘器を世に送り出したことで知られている。リストがこよなく愛したピアノでもあり、ドビュッシーが愛用したことでも知られているが、当時の音楽家たちからは「ベヒシュタインは、ピアニストにとってバイオリン奏者のストラディバリウスやアマティに値する」(ハンス・フォン・ビューロー)という評価を得ていたほか、かつては世界の64カ国の王室(我が国の皇室を含め)にも納入された。近年ではフルトヴェングラー、ケンプ、バックハウス、ボレット、フジ子・ヘミングらが演奏会で使用している。同社は創業以来「響板での音作り」という一貫した設計コンセプトのもとに楽器を作り続け、透明感のある音色とはっきりとした音像で音の立ち上がりがはやく、演奏者のタッチに敏感に反応することで知られている。
 ベヒシュタイン社と日本との関係も深く、日本楽器(現ヤマハ)は20世紀初頭に、ドイツの本社からシュレーゲルという技術者を招聘し、国産ピアノ製造のために技術顧問を依頼していた。さらに、ディアパソンを作った大橋幡岩や、カワイをつくった河合小市なども当時、日本楽器に所属し彼の指導を受けている。つまり、戦前の日本ではベヒシュタインをモデルにしたピアノ造りがされていたということになる。
 ベヒシュタイン社のピアノは第2次世界大戦前に、本学のほか東京音楽学校(現東京藝術大学音楽学部)、東京帝国大学、東京商科大学(現一橋大学)などにも納入されたといわれるが、現在でも使用可能状態として保存されているのは、本学のほか一橋大学校友会(如水会館)の所有するもののみであるという。

大学資料委員会 文教育学部教授 秋山 光文



 


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